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3枚の姿絵
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トワイス国国王の前には、3枚の少女の姿絵と2枚の手紙が置いてある。
真ん中の子は、よく見知った女の子だ。
この城で、いや、この城下で、彼女を知らぬものはいないだろう。
『アンナリーゼ・トロン・フレイゼン』
うちの息子が想いを寄せている子であり、右隣の席についている宰相の息子も同じくだと報告を受けている。
集まった者たちからは、自然と溜め息が、自然と漏れる。
姿絵を1枚ずつ見ていこう。
ローズディア公国の第二公女シルキー、トワイス国公爵家のイリア、そして、侯爵家のアンナリーゼ。
この3人から、王太子妃候補を選ぼうとしているところだった。
左隣には、正妃が同じく溜め息を、向かい合わせには当の本人がアンナリーゼの絵姿を見入っている。
「やはり、王妃の器はアンナリーゼかのぉ…」
王の呟きに無言の異を反するのは、右隣にいる宰相である。
宰相もまた、アンナリーゼを息子の嫁に欲しいらしい。
王妃候補として、フレイゼンが嫌がるのよそにアンナリーゼを推薦したにも関わらずにだ。
あの、肝の座り方は、そこら辺の令嬢ではなかなかいない。
デビュタントで宰相の息子と出てきたときは、完璧な淑女としてエスコートされていた。
そればかりか、正妃の嫌味にまで応えることができたのだ。
息子の幼馴染として話を聞いていたから、相当のお転婆だと報告を受けていたのだが、まったくの別人ではないのかと疑う程の出来であった。
それが、いくら令嬢教育されているとはいえ、その公私の切替を13歳の娘ができるものではない。
余は毎年何人ものデビューする子供たちに祝辞を送っているが、あんな令嬢は初めてだった。
別の意味では、息子とデビューを迎えたイリアも見所はある。
派手好きで目立つうえに、人の上に立つことが当たり前のような傲慢な娘であった。
ただ、王太子妃となると……違うのだ。
そして、まだ見たことのないローズディア公国第二公女シルキー。
父親同士が溜め息を漏らす。
ただ、アンナリーゼには、王太子妃としても、公爵夫人としても致命的なことがあった。
先日の卒業式でのことだ。
「アンバーの倅めっ!」
思わずアンナリーゼの姿絵を睨み握り潰し、声に出てしまった。
そう、学園での卒業式でのエスコートの件だ。
ローズディア公国アンバー公爵の息子に、アンナリーゼのエスコートだけでなく、『赤薔薇の称号』までも見事出し抜かれたのだ。
おまけに……き……キスまで……忌々しいことこの上ない。
息子達は、一体何をしていたのか……!
目の前にいる息子を睨むが、こちらを見てすらいない。
確か、断られたと……しょぼくれながら言ってたが、どうせ、誠意のかけらもない申し出をしたのではないだろうか……?
あの令嬢なら、そんな礼をかくようなことをすれば、バッサリ切り伏せてしまいそうだ。
自分が申し込んだら……と想像しながら、首を振り、息子の愚行を叱りたくなった。
もし、アンナリーゼを王太子妃にするのであれば、この婚約は、なかなか難航するだろう。
王と宰相は、アンナリーゼの姿絵を見つめ3度、溜め息を吐く。
王と宰相では、この嫁取の分は宰相にあったはずだ。
何せ社交界デビューは、宰相の息子がパートナーとなったのだから。
今も、二人でお茶会名目で個別に会っているとヘンリーから宰相は聞いていると言っていた。
一方、宰相の息子からの話では、殿下は、現在、少し距離を置き避けられているとも聞いていたのだ……
「やられたな……アンバー公爵夫妻も相当、気に入っていると噂で聞いたぞ……」
「何にしてもだ……我らの敵はアンバーぞ!」
「父上、さすがに他国へは嫁がないでしょう?」
「甘いぞ!甘いのだ!アンナリーゼなら、やりかねん!」
ため息を吐くほど、深い呼吸もできなくなってきたため、姿絵をただ見つめている。
「陛下、大変申し上げ難いのですが、アンナリーゼの想い人は、やはりあの方なのじゃないですか?
祝賀会のこともありますし、赤薔薇の称号のことも……
それに、フレイゼン家は、どの縁談も断り続けていると聞き及んでいますよ?」
正妃の話を食い入るように男三人が聞いている。
「何度か打診は、私のほうから夫人へとしましたが……色よい返事は返ってきていません。
一度、正攻法としてきちんと婚約の申し込みをしてみましょう。
陛下、くれぐれも圧力をかけないでくださいね?」
「うむ。しかしな……国としては、確かなものを国母にしたいと思うのだ……
多少、お転婆がすぎるようであるが、それも含めて適任だと思っておる。
せめて王妃にならないのであれば、王妃を補佐する立場としてこちらの公爵家に……
コホン。とにかく、我が国に必要な人材なのだよ!!」
分かっているのか……我が息子よ……余は、甘い考えを持つ息子のせいでこの国の行く末が傾いてしうのではないかとものすごく心配になった。
「しかし、参りましたな。ローズディアの申し出には。
伯爵位以上の未婚の娘を集団政略結婚させたいと……なんの思惑があるのか……」
「第二公女を我が国の王妃にしたいのであろう」
「あとは、これもやはりアンナリーゼか……ローズディアからも婚約を打診されているはずだ」
そう、ローズディアから、トワイス国へ夏に集団政略結婚をしないかと打診があった。
国同士の強固な結びつきを付けるためにということだ。
その手紙が姿絵の横に置いてある。
自国の王太子妃すら決めあぐねているのに厄介な話である。
でも、あぶれている独身貴族はこちらでもいるので、まとまればよいと思って「是非に」という内容で返事をしておくことになったのだ。
しかし、どこにでも名前が上がるかの者は、どんな業を持って生まれたのだろう……
三国から次期王妃にと望まれる侯爵家令嬢など今まで聞いたこともない。
ましてや深窓の令嬢ならともかく、とんでもなくじゃじゃ馬なのだ……
剣技も見事だとかで、近衛でも蹴散らしてしまうと聞いたことがある。
馬を駆り、領地周遊もしていると報告書が上がってきたときは、さすがに報告書を疑ったものだ。
フレイゼンに直接聞いて、本当だったと知ったときは愕然としてしまったもんだ。
フレイゼンも娘の奇行を平然としていたことに驚いた。
そして、公にはなっていないが、我が国のワイズ伯爵の失墜には、アンナリーゼが深く関わっている。
かなり巧妙に隠されていたが、突き止められたのは幸いか……
ただ、公にする必要もないので、放置してあるが……公になれば、また、婚約者候補が増えるであろう。
しかし、そのワイズ伯爵失墜劇の動機にも驚かされた。
アンナリーゼの兄に嫁を迎え入れるためだけに、入念に計を労していたらしいワイズ伯爵を没落させてしまったのだ。
あろうことか嫁の実家である罠にはまったバクラー侯爵家および領地を立て直してしまった。
もちろん、ワイズ領の領民への被害も最小限に留めていたと報告にはあった。
公になっていない情報でも、他の二国の王族公族でもつかんでいるのだろう。
その知謀だけでも、自国にいれば他国への牽制となる。
それが、隣国へ喜んで参りますなど言われたら、我が国は……一体どうなるのだ!!
王として、それだけは許されない。
「息子よ、3ヶ月の猶予を与える。3ヶ月以内にアンナリーゼの心を手に入れてこい!
父としてではない。国王として、命令する!」
「陛下、息子への無謀な命令はお取り消しください!アンナリーゼにも心というものがあるのですよ!」
「アンナリーゼの心など二の次だ!他国へ移動される方が面倒なのだぞ!?」
正妃に向かって、言い放つ!
「息子がダメなら、そなたの息子が娶れ!」
今度は、宰相に命令をした。
「それは、山々ですが、相手があのアンナリーゼですからな……一筋縄ではいかないでしょう。
とても、命令通り行くとは思えません……」
「では、まず、父親から攻めるとしよう。財務大臣を部屋へ!」
一言従者に声をかけると呼びに行ったようだ。
フレイゼンが来るまでの間、四人でさらに話し合う。
しかし、明るい未来は、一向に開きそうになかった。
真ん中の子は、よく見知った女の子だ。
この城で、いや、この城下で、彼女を知らぬものはいないだろう。
『アンナリーゼ・トロン・フレイゼン』
うちの息子が想いを寄せている子であり、右隣の席についている宰相の息子も同じくだと報告を受けている。
集まった者たちからは、自然と溜め息が、自然と漏れる。
姿絵を1枚ずつ見ていこう。
ローズディア公国の第二公女シルキー、トワイス国公爵家のイリア、そして、侯爵家のアンナリーゼ。
この3人から、王太子妃候補を選ぼうとしているところだった。
左隣には、正妃が同じく溜め息を、向かい合わせには当の本人がアンナリーゼの絵姿を見入っている。
「やはり、王妃の器はアンナリーゼかのぉ…」
王の呟きに無言の異を反するのは、右隣にいる宰相である。
宰相もまた、アンナリーゼを息子の嫁に欲しいらしい。
王妃候補として、フレイゼンが嫌がるのよそにアンナリーゼを推薦したにも関わらずにだ。
あの、肝の座り方は、そこら辺の令嬢ではなかなかいない。
デビュタントで宰相の息子と出てきたときは、完璧な淑女としてエスコートされていた。
そればかりか、正妃の嫌味にまで応えることができたのだ。
息子の幼馴染として話を聞いていたから、相当のお転婆だと報告を受けていたのだが、まったくの別人ではないのかと疑う程の出来であった。
それが、いくら令嬢教育されているとはいえ、その公私の切替を13歳の娘ができるものではない。
余は毎年何人ものデビューする子供たちに祝辞を送っているが、あんな令嬢は初めてだった。
別の意味では、息子とデビューを迎えたイリアも見所はある。
派手好きで目立つうえに、人の上に立つことが当たり前のような傲慢な娘であった。
ただ、王太子妃となると……違うのだ。
そして、まだ見たことのないローズディア公国第二公女シルキー。
父親同士が溜め息を漏らす。
ただ、アンナリーゼには、王太子妃としても、公爵夫人としても致命的なことがあった。
先日の卒業式でのことだ。
「アンバーの倅めっ!」
思わずアンナリーゼの姿絵を睨み握り潰し、声に出てしまった。
そう、学園での卒業式でのエスコートの件だ。
ローズディア公国アンバー公爵の息子に、アンナリーゼのエスコートだけでなく、『赤薔薇の称号』までも見事出し抜かれたのだ。
おまけに……き……キスまで……忌々しいことこの上ない。
息子達は、一体何をしていたのか……!
目の前にいる息子を睨むが、こちらを見てすらいない。
確か、断られたと……しょぼくれながら言ってたが、どうせ、誠意のかけらもない申し出をしたのではないだろうか……?
あの令嬢なら、そんな礼をかくようなことをすれば、バッサリ切り伏せてしまいそうだ。
自分が申し込んだら……と想像しながら、首を振り、息子の愚行を叱りたくなった。
もし、アンナリーゼを王太子妃にするのであれば、この婚約は、なかなか難航するだろう。
王と宰相は、アンナリーゼの姿絵を見つめ3度、溜め息を吐く。
王と宰相では、この嫁取の分は宰相にあったはずだ。
何せ社交界デビューは、宰相の息子がパートナーとなったのだから。
今も、二人でお茶会名目で個別に会っているとヘンリーから宰相は聞いていると言っていた。
一方、宰相の息子からの話では、殿下は、現在、少し距離を置き避けられているとも聞いていたのだ……
「やられたな……アンバー公爵夫妻も相当、気に入っていると噂で聞いたぞ……」
「何にしてもだ……我らの敵はアンバーぞ!」
「父上、さすがに他国へは嫁がないでしょう?」
「甘いぞ!甘いのだ!アンナリーゼなら、やりかねん!」
ため息を吐くほど、深い呼吸もできなくなってきたため、姿絵をただ見つめている。
「陛下、大変申し上げ難いのですが、アンナリーゼの想い人は、やはりあの方なのじゃないですか?
祝賀会のこともありますし、赤薔薇の称号のことも……
それに、フレイゼン家は、どの縁談も断り続けていると聞き及んでいますよ?」
正妃の話を食い入るように男三人が聞いている。
「何度か打診は、私のほうから夫人へとしましたが……色よい返事は返ってきていません。
一度、正攻法としてきちんと婚約の申し込みをしてみましょう。
陛下、くれぐれも圧力をかけないでくださいね?」
「うむ。しかしな……国としては、確かなものを国母にしたいと思うのだ……
多少、お転婆がすぎるようであるが、それも含めて適任だと思っておる。
せめて王妃にならないのであれば、王妃を補佐する立場としてこちらの公爵家に……
コホン。とにかく、我が国に必要な人材なのだよ!!」
分かっているのか……我が息子よ……余は、甘い考えを持つ息子のせいでこの国の行く末が傾いてしうのではないかとものすごく心配になった。
「しかし、参りましたな。ローズディアの申し出には。
伯爵位以上の未婚の娘を集団政略結婚させたいと……なんの思惑があるのか……」
「第二公女を我が国の王妃にしたいのであろう」
「あとは、これもやはりアンナリーゼか……ローズディアからも婚約を打診されているはずだ」
そう、ローズディアから、トワイス国へ夏に集団政略結婚をしないかと打診があった。
国同士の強固な結びつきを付けるためにということだ。
その手紙が姿絵の横に置いてある。
自国の王太子妃すら決めあぐねているのに厄介な話である。
でも、あぶれている独身貴族はこちらでもいるので、まとまればよいと思って「是非に」という内容で返事をしておくことになったのだ。
しかし、どこにでも名前が上がるかの者は、どんな業を持って生まれたのだろう……
三国から次期王妃にと望まれる侯爵家令嬢など今まで聞いたこともない。
ましてや深窓の令嬢ならともかく、とんでもなくじゃじゃ馬なのだ……
剣技も見事だとかで、近衛でも蹴散らしてしまうと聞いたことがある。
馬を駆り、領地周遊もしていると報告書が上がってきたときは、さすがに報告書を疑ったものだ。
フレイゼンに直接聞いて、本当だったと知ったときは愕然としてしまったもんだ。
フレイゼンも娘の奇行を平然としていたことに驚いた。
そして、公にはなっていないが、我が国のワイズ伯爵の失墜には、アンナリーゼが深く関わっている。
かなり巧妙に隠されていたが、突き止められたのは幸いか……
ただ、公にする必要もないので、放置してあるが……公になれば、また、婚約者候補が増えるであろう。
しかし、そのワイズ伯爵失墜劇の動機にも驚かされた。
アンナリーゼの兄に嫁を迎え入れるためだけに、入念に計を労していたらしいワイズ伯爵を没落させてしまったのだ。
あろうことか嫁の実家である罠にはまったバクラー侯爵家および領地を立て直してしまった。
もちろん、ワイズ領の領民への被害も最小限に留めていたと報告にはあった。
公になっていない情報でも、他の二国の王族公族でもつかんでいるのだろう。
その知謀だけでも、自国にいれば他国への牽制となる。
それが、隣国へ喜んで参りますなど言われたら、我が国は……一体どうなるのだ!!
王として、それだけは許されない。
「息子よ、3ヶ月の猶予を与える。3ヶ月以内にアンナリーゼの心を手に入れてこい!
父としてではない。国王として、命令する!」
「陛下、息子への無謀な命令はお取り消しください!アンナリーゼにも心というものがあるのですよ!」
「アンナリーゼの心など二の次だ!他国へ移動される方が面倒なのだぞ!?」
正妃に向かって、言い放つ!
「息子がダメなら、そなたの息子が娶れ!」
今度は、宰相に命令をした。
「それは、山々ですが、相手があのアンナリーゼですからな……一筋縄ではいかないでしょう。
とても、命令通り行くとは思えません……」
「では、まず、父親から攻めるとしよう。財務大臣を部屋へ!」
一言従者に声をかけると呼びに行ったようだ。
フレイゼンが来るまでの間、四人でさらに話し合う。
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