37 / 55
セプトがいないセプトの部屋で
しおりを挟む
朝食の最中に、セプトは兄からの呼び出しがあり、渋々向かうことになった。
今日は、執務を免除されていると言っても、そういうわけにもいかないらしい。
「はぁ……せっかくのビアンカとの時間が……」
「ほら、お兄様方に呼ばれているのでしょ?早く行ってきなさいよ?」
「俺が帰ってくるまで、絶対鳥籠には帰らないでくれ。わかった?」
「カインが迎えに来てくれたら、帰ろうと思っていたんだけど……仕方ないですね。鳥籠まで、送らせてあげますよ?」
ちょっと上から物言ってみたが、明らかにセプトの顔が変わった。
私とそんなに一緒にいたいのだろうか?嬉しいような恥ずかしいような、ソワソワしてしまう。
「すぐに終わらせてくる!」
そう言って、セプトはぼやきながら部屋を出ていき、代わりにカインが部屋に入ってきた。
部屋に残ったのは、私とニーアとカイン。それと、数名のメイドだけである。
「おはようございます。昨夜は、よく寝られましたか?」
含みのある質問に、えぇとってもと笑顔付きで挨拶を返した。
セプトとの昨夜は、月を眺め、少し話して、同じベッドに眠っただけだが、すでに、ここには勘違いしたニーアとアリエルが話しているだろうから、メイドたちもその勘違いを聞いているだろう。あっという間に、今朝の話は城中に広がるに違いない。
「今日は、鳥籠にお戻りになるのですか?」
「もちろんよ!私の住まいは、あの場所ですもの。セプトがお呼び出しから帰り次第、向かうわ!」
「もう、ここで住んでもいいんじゃないですか?」
「まだ、私は婚約者ですもの。ここには住めないわ」
「そのわりに、今朝はやたら機嫌がいい。昨夜は何かあったんでしょうね?」
カインのその一言で、皆が聞き耳をたてた。
何もなかったっていうと、また、いろいろあるので、質問には何も答えず微笑むだけに留めた。
「みんな、そんなに、セプトと私に興味があるの?」
逆に問うと、カインは苦笑いしニーアは慌てて食器を片付けて始める。
「まぁ、気にはなりますよね。王子の婚約者ってだけで、ビアンカ様は注目されるし、まだ、王太子の決まっていないこの国で、王妃の子じゃないセプトに、ある意味大きな後ろ盾ができたわけで?これから、三つ巴の椅子取りゲームが始まるわけですし」
「三つ巴って……私は、セプトの後ろ盾にはなれないわ。爵位もなければ、何にもないただの素性の知れない女ですもの。セプトの婚約者になったことすら、驚きの話よ!」
「そうは、言っても……これの件があるから、陛下はビアンカ様にそれなりの地位を与えてくださると思いますけど?」
「返上したいわね、そんな地位。何も無い方が気楽でいいわ!いつでも、ほっぽり出して……逃げ……られない…………」
逃げるの言葉にガクンと肩を落としてため息をついた。
もう、セプトの婚約者から逃げるつもりは無い。そう、誓ったのだ。セプトがカインやニーアに誓ってくれたのと同じように、私もこのエメラルドに。
少しずつ、温めていく恋や愛情があってもいいのではないかと思ったから、何も考えず、セプトに寄り添っていこうと決めたのだ。
それに、私が逃げたら、まず、カインとニーアに影響を及ぼす。カインは貴族の子息だからいいだろうが、ニーアは平民だ。罰を受けない……そういうわけにはいかないだろう。
こんなに尽くしてくれるニーアにそんな仕打ちをしたいわけではない。むしろ大切にしたい。
「逃げても、どこにもいく場所は無いですよ?なんなら、囲ってあげますけど……」
「セプトがダメなら、カインのお嫁さん?」
クスクス笑うとあぁ、それも悪くないですね!とカインも笑った。
私たちは冗談だと笑い飛ばせるが、中にはそうは取らないものもいる。
「でも、遠慮しておくわ!セプトがちゃんと私に縛られてくれると言っているし、昨日、贈ってもらったブレスレットは、やっぱり、手錠のようなのよね?」
シャラとなるブレスレットを見せた。
セプトとお揃いのエメラルドのブレスレットは、存在感をあらわにした。
「なるほど。余程二人の縁を繋げておきたいらしい」
エメラルドの輝きを見て笑いあっていると、疲れた顔をしてセプトが戻ってきた。
「おかえりなさい。どうしたの?ひどい顔をしていてよ?」
「あぁ、兄上たちが……ビアンカに会わせろとやたらしつこくて……」
「セプトのお兄様たちなら、会っても構わないわよ?」
「俺が構う!」
どうして?と小首を傾げると、カインが、やきもちやきだなと呟いた。
「セプト様のお兄様たちは、まぁ、いわゆる残念なイケメンというか、色好きで有名なんだ。ここで言う話ではないけど……」
「そうなんだ。ビアンカの噂を聞いて、二人とも躍起になって、落とそうとしている。しつこくて……もう誰にも渡さないって言っているのに」
「ふふっ、セプト、嬉しいわ!でも、お兄様方は、確か、私に触れられなかったのよね?」
「あぁ、そうだ。第一王子の側妃となるよう、最初話していたんだけど……触れれなかった。同じく、第二王子も。半ば諦めに近い形で、俺が触ったら、触れたんだけど……」
「私が選んだわけではないんだけど……相手がセプトで、よかったのかしらね?」
そうだと思うと言いつつも、大きなため息をついている。
「儀式にも参列できなかったこともネチネチ言われるし……もう、いい加減にしてくれって言ったら、聖女のお披露目会のときに、挨拶させろときたもんだ。よっぽど、兄上たちはビアンカに好かれる自信がおありのようだな」
なんだか可哀想になってきたので、セプトに手招きする。立ったままぶつくさ言っていたセプトは素直に私の側にやってきた。頭を引き寄せ、優しく撫でる。
イライラとしていた雰囲気が、和らいでいく。
「何というか、目のやり場に困りますね?」
ニーアが呟き、カインが苦笑いする。それと同時に甘えるセプトは腰に腕を回してきた。
みなは、視線を逸らすが、チラチラと様子を伺っていることは、視線からわかった。
「そんなにカリカリしないで。私はセプトの側にいるから」
「あぁ……でも、兄上たちにかかれば……」
「大丈夫よ。自分でなんとかするわ!」
「そこは、俺の出番で……守らせてくれ!」
「わかったわ。お願いするわね!頼もしい婚約者様」
あぁと嬉しそうにするセプト。
「それより、そろそろ鳥籠へ帰りましょ?もっと、ゆっくりしたいの」
セプトは私のお願いにわかったと言い、馬車の用意をしてもらう。
途中、この前、二人で散策する予定だった中庭へ連れて行ってもらうことになった。
今日は、執務を免除されていると言っても、そういうわけにもいかないらしい。
「はぁ……せっかくのビアンカとの時間が……」
「ほら、お兄様方に呼ばれているのでしょ?早く行ってきなさいよ?」
「俺が帰ってくるまで、絶対鳥籠には帰らないでくれ。わかった?」
「カインが迎えに来てくれたら、帰ろうと思っていたんだけど……仕方ないですね。鳥籠まで、送らせてあげますよ?」
ちょっと上から物言ってみたが、明らかにセプトの顔が変わった。
私とそんなに一緒にいたいのだろうか?嬉しいような恥ずかしいような、ソワソワしてしまう。
「すぐに終わらせてくる!」
そう言って、セプトはぼやきながら部屋を出ていき、代わりにカインが部屋に入ってきた。
部屋に残ったのは、私とニーアとカイン。それと、数名のメイドだけである。
「おはようございます。昨夜は、よく寝られましたか?」
含みのある質問に、えぇとってもと笑顔付きで挨拶を返した。
セプトとの昨夜は、月を眺め、少し話して、同じベッドに眠っただけだが、すでに、ここには勘違いしたニーアとアリエルが話しているだろうから、メイドたちもその勘違いを聞いているだろう。あっという間に、今朝の話は城中に広がるに違いない。
「今日は、鳥籠にお戻りになるのですか?」
「もちろんよ!私の住まいは、あの場所ですもの。セプトがお呼び出しから帰り次第、向かうわ!」
「もう、ここで住んでもいいんじゃないですか?」
「まだ、私は婚約者ですもの。ここには住めないわ」
「そのわりに、今朝はやたら機嫌がいい。昨夜は何かあったんでしょうね?」
カインのその一言で、皆が聞き耳をたてた。
何もなかったっていうと、また、いろいろあるので、質問には何も答えず微笑むだけに留めた。
「みんな、そんなに、セプトと私に興味があるの?」
逆に問うと、カインは苦笑いしニーアは慌てて食器を片付けて始める。
「まぁ、気にはなりますよね。王子の婚約者ってだけで、ビアンカ様は注目されるし、まだ、王太子の決まっていないこの国で、王妃の子じゃないセプトに、ある意味大きな後ろ盾ができたわけで?これから、三つ巴の椅子取りゲームが始まるわけですし」
「三つ巴って……私は、セプトの後ろ盾にはなれないわ。爵位もなければ、何にもないただの素性の知れない女ですもの。セプトの婚約者になったことすら、驚きの話よ!」
「そうは、言っても……これの件があるから、陛下はビアンカ様にそれなりの地位を与えてくださると思いますけど?」
「返上したいわね、そんな地位。何も無い方が気楽でいいわ!いつでも、ほっぽり出して……逃げ……られない…………」
逃げるの言葉にガクンと肩を落としてため息をついた。
もう、セプトの婚約者から逃げるつもりは無い。そう、誓ったのだ。セプトがカインやニーアに誓ってくれたのと同じように、私もこのエメラルドに。
少しずつ、温めていく恋や愛情があってもいいのではないかと思ったから、何も考えず、セプトに寄り添っていこうと決めたのだ。
それに、私が逃げたら、まず、カインとニーアに影響を及ぼす。カインは貴族の子息だからいいだろうが、ニーアは平民だ。罰を受けない……そういうわけにはいかないだろう。
こんなに尽くしてくれるニーアにそんな仕打ちをしたいわけではない。むしろ大切にしたい。
「逃げても、どこにもいく場所は無いですよ?なんなら、囲ってあげますけど……」
「セプトがダメなら、カインのお嫁さん?」
クスクス笑うとあぁ、それも悪くないですね!とカインも笑った。
私たちは冗談だと笑い飛ばせるが、中にはそうは取らないものもいる。
「でも、遠慮しておくわ!セプトがちゃんと私に縛られてくれると言っているし、昨日、贈ってもらったブレスレットは、やっぱり、手錠のようなのよね?」
シャラとなるブレスレットを見せた。
セプトとお揃いのエメラルドのブレスレットは、存在感をあらわにした。
「なるほど。余程二人の縁を繋げておきたいらしい」
エメラルドの輝きを見て笑いあっていると、疲れた顔をしてセプトが戻ってきた。
「おかえりなさい。どうしたの?ひどい顔をしていてよ?」
「あぁ、兄上たちが……ビアンカに会わせろとやたらしつこくて……」
「セプトのお兄様たちなら、会っても構わないわよ?」
「俺が構う!」
どうして?と小首を傾げると、カインが、やきもちやきだなと呟いた。
「セプト様のお兄様たちは、まぁ、いわゆる残念なイケメンというか、色好きで有名なんだ。ここで言う話ではないけど……」
「そうなんだ。ビアンカの噂を聞いて、二人とも躍起になって、落とそうとしている。しつこくて……もう誰にも渡さないって言っているのに」
「ふふっ、セプト、嬉しいわ!でも、お兄様方は、確か、私に触れられなかったのよね?」
「あぁ、そうだ。第一王子の側妃となるよう、最初話していたんだけど……触れれなかった。同じく、第二王子も。半ば諦めに近い形で、俺が触ったら、触れたんだけど……」
「私が選んだわけではないんだけど……相手がセプトで、よかったのかしらね?」
そうだと思うと言いつつも、大きなため息をついている。
「儀式にも参列できなかったこともネチネチ言われるし……もう、いい加減にしてくれって言ったら、聖女のお披露目会のときに、挨拶させろときたもんだ。よっぽど、兄上たちはビアンカに好かれる自信がおありのようだな」
なんだか可哀想になってきたので、セプトに手招きする。立ったままぶつくさ言っていたセプトは素直に私の側にやってきた。頭を引き寄せ、優しく撫でる。
イライラとしていた雰囲気が、和らいでいく。
「何というか、目のやり場に困りますね?」
ニーアが呟き、カインが苦笑いする。それと同時に甘えるセプトは腰に腕を回してきた。
みなは、視線を逸らすが、チラチラと様子を伺っていることは、視線からわかった。
「そんなにカリカリしないで。私はセプトの側にいるから」
「あぁ……でも、兄上たちにかかれば……」
「大丈夫よ。自分でなんとかするわ!」
「そこは、俺の出番で……守らせてくれ!」
「わかったわ。お願いするわね!頼もしい婚約者様」
あぁと嬉しそうにするセプト。
「それより、そろそろ鳥籠へ帰りましょ?もっと、ゆっくりしたいの」
セプトは私のお願いにわかったと言い、馬車の用意をしてもらう。
途中、この前、二人で散策する予定だった中庭へ連れて行ってもらうことになった。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる