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セプトと共の夜
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「今晩は、同じ寝室なんだが……」
「他に用意はないの?」
「ないっ!」
「普通、客間とか……」
「用意しなかった。……から、隣で寝てくれ」
キッパリ?いや、ボソボソと言われてしまう。
セプトの部屋に戻って、一息入れているところだった。
「今日は、立て続けにいろいろあったから、さすがに疲れたな」
「そうね。両陛下と側妃様にお目にかかったのは、緊張したわ!」
「そういえば、また、一つ、ビアンカに言ってないことがあったな」
「側妃様のこと?」
私は何故か隣に座っているセプトに聞いた。
「あぁ、そうだ。言おうと思っていたんだが……側妃は、俺の母親だ。伯爵家出身であるため、ビアンカより身分は下になるな」
「今は、陛下の側妃様でしょ?」
「まあ、見かけは。第三王子さえ産まなければ、もっと、妃でも慎ましやかに暮らしていたはずだった」
そうだったのねと頷くと、興味がないととられたようだ。
そういうわけではないが、聞いていいものか迷う話題ではあった。
話題が途切れてしまったこと、きっと話したいのではないか……そう感じたので、私から口を開いた。
「……聞いてもいいの?」
「あぁ、いい。なんでも聞いてくれ」
「セプトは、この王宮は、生きづらい?」
「……生きづらかったかな。王子と呼ばれても、結局、側妃の子どもだったから、相手にされなかったし、母上も俺さえいなければ、もっと穏やかに暮らせただろうと思うと」
「そうかしら?私は、セプトがいてくれたから、側様は生きてこれたのじゃなくて?セプトのお母様をとやかくいうつもりはないのだけど……この王宮に長くいられるほど、心の強そうな方には見えなかったわ」
「確かに。言われてみればそうかもしれない。子どもから見たら、見えないことだな」
「それに、親子で想い合っていることが分かったわ。側妃様もセプトもお互いを大事に想っているのね!ステキだわ!」
そんなところまで見ていたのか?と驚くセプト。
微笑みかける側妃の表情を見れば、親子関係を知らないものでもわかるだろう。セプトへの並々ならぬ愛情は。
「そろそろ、寝ないか?」
妙にソワソワしているなと思っていたが、そうか、同じベッドで眠らないといけないのかと、隣を見た。
「まだ、寝るには早くない?」
「いや、結構夜も更けてきたし……」
「じゃあ、先に寝てくれて構わないわ!おやすみ、セプト!」
私は立ち上がって、バルコニーへと出た。
鳥籠と違って、セプトの部屋は高い場所にある。久しぶりに鳥籠から解放され、外の空気が吸いたくなり、夜風が気持ちいい。
「ビアンカが寝ないなら、もう少し起きている」
バルコニーの柵にもたれかかる私の隣に並んだ。
月夜が綺麗で輝いている。
「ビアンカは、どんな家族だったんだ?」
「私?」
「話したくないなら……いいけど」
「別にいいわよ?私は、レート侯爵家の嫡子で……」
「兄がいるって言ってなかったか?」
「お兄様は、遠縁の子どもなの」
「そうだったのか……」
「えぇ、私の旦那様となるように、養子になったのよ!」
「!!」
「どうしたの?」
「本当は王子との結婚じゃなかったのか?」
「そうだけど……驚くほどのことじゃないよね?」
貴族ではよくある話だ。親戚の子で、よくできた子を本家筋の養子にして、本家筋の子と結婚させる。
私のお兄様は、とにかく頭がよくてかっこよくて魔法もたくさん使えて魔力量も国一番ではないかと思わせるほど、完璧な男性であった。
もっと早くに紹介してくれていれば……と、父を今更ながら恨みたい気もするが、あの頃は好きな人がいたのだから……仕方がない。
「……だから、ビアンカへの愛は永遠にと綴ってあったのか?兄妹愛かと思って……」
「何をブツブツ言っているの?」
「いや、そのお兄様はどんな人だったんだ?」
「一言でいえば……完全無欠。どこから見てもかっこよくて、頭もいい。難しい魔法もたくさん使えたし、魔力量も国で1番だった!大好きで自慢のお兄様よ!」
「何故、結婚しなかったんだ?」
「……殿下に恋をした後だったの。出会ったのが、もし、その前なら……私はお兄様と添い遂げたでしょうね!お兄様も私のことを愛してくださっていましたから!」
「……妹として?」
「いいえ、一人の女の子として」
「知っていたのか?その、お兄様の気持ちを」
「えぇ、知っていましたよ!結婚をしないかと言われましたもの。でも、当時は殿下のことしか頭に無かったですし、アマリリスの刻印が示すように、私は殿下の婚約者でしたから」
ふぅ……とため息をつけば、隣からもため息が聞こえてきた。
疲れているのだろうか?と覗き見ると、何か考えているようだった。
「冷えてきましたし、中に戻りますか?」
「あぁ、ビアンカがいいのなら」
「儀式の準備に疲れているのでしょ?お酒も飲まれましたし……そろそろ、ベッドに入られては?」
そういうと、手を握られる。
「一緒に……」
「……」
「何もしないから……」
本当に?と疑う気持ちはあるが、私は頷いた。手をひかれ、寝室へと向かう。
「このブレスレット……」
「えぇ、お邪魔ですか?強化魔法もしてあるので、切れたりしませんから、そのままつけてもらっても大丈夫ですよ?」
「じゃあ、そのままにしておく」
ゴロンとベッドに転がると、手がぶつかった。そちらを見やると、視線があう。
「このベッドは、広いんですね?」
「それは、そうだろう?王子のベッドだから……」
「このベッドは……」
「言いたいことはわかるが、俺だけしか寝たことがないぞ!」
「そっか。そういえば……」
「アリエルのことなら、」
「まだ、何のことか言ってないですよ?もしかして、アリエルのことを気にしていたのですか?」
「……違ったのか?」
「それは、今じゃなくていいのかなって思ったんだけど……そっちが、振ってきたのなら、話します?」
「……アリエルは、その……かえてもらうことにした」
「いいの?そんな、思いつめたような顔をしていうことではないと思うけど……」
「いや、その……いつまでも、近くにいてもらうのは、ビアンカに失礼かと思って」
「別にいいけど?」
「そういうわけには、行かない。一つのけじめとしてだな……」
「アリエルの気持ちはどうするの?」
私の顔を見て、驚いていた。アリエルにだって、侍女とはいえ、感情はある。
どこからどう見ても、セプトのことを想っていることは、明白だ。
わざわざ、セプトの専属にまでなっているのだから。
「……そこまでは、考えていなかった」
視線を合わせていたのに、仰向けになって、天井を見ていた。
いつも支えてくれていただろうアリエルを手放していいのだろうか?
でも、セプトの側にいつづけて、幸せになることは、アリエルにはたぶんないのだろう。
「ただ、俺の側にいたとして、幸せになれる確率は、もうない。アリエルの今後を思えばこそ、この機会に手を離すべきなんだと……」
「寂しくない?」
「そりゃ……いつも、側でいてくれたから。これからは、ビアンカがいてくれる。そうだろ?」
「えぇ、そのつもりでいるけど……側妃として迎えてもいいんだよ?」
首を振るセプト。何か思ったのか、ベッドから起き上がって、座った。
私を見下ろし、手を取った。
「儀式、儀式とそればかりしか言ってこなかったけど……儀式も終わったんだ。ビアンカの答えは、俺と一緒に生きてくれるってことでいいのか?」
「えぇ、私はセプトとこれから先、一緒にいるわ!昨日、ちゃんと考えて出した答えですもの」
「……ありがとう」
「どうして、セプトがお礼を言うの?私の後ろ盾になってくれるのは、セプト以外いないのだけど?」
クスクス笑うと、俺なんてという。
あいている手で、セプトの口に手を添える。
「なんてって言わないで。私は、ここ数ヶ月のセプトを見てきて、あなたの側で支えようと決めたのよ?その人が、自分を貶めるようなことは言ったらダメ。少しの期間しか、あなたのことを知らないの。これから、どんな風になっていくのか、ずっと側で見させてね!私たちの関係は、これから始まるのですから」
「あぁ……ろくでもない……いや、これからビアンカが胸を張って隣に立ってもらえるよう、誠心誠意頑張るよ」
私もベッドから起き上がって、座るとセプトと向き合った。
左手を取り、シャラッとなるブレスレットのかかるセプトの手首にキスをする。
遊び歩いていたセプトなら……あるいは意味を知っているのかも……と、見上げるとまさしくそのようだ。
目を見開き驚いていたので、微笑んだ。
いたずらで、キスをしたわけではない。一つの私なりの決心だった。
このブレスレットと共に、あなたに枷をつけるけど、セプトのことが好きだという意味も含まれる。
意味を受け取ってくれたのか、抱きしめられた。
「キス、してもいい?」
「えぇ……」
瞼を閉じれば、唇が重なる。
初めてしたキスは、少しだけお酒の香りがした。
「他に用意はないの?」
「ないっ!」
「普通、客間とか……」
「用意しなかった。……から、隣で寝てくれ」
キッパリ?いや、ボソボソと言われてしまう。
セプトの部屋に戻って、一息入れているところだった。
「今日は、立て続けにいろいろあったから、さすがに疲れたな」
「そうね。両陛下と側妃様にお目にかかったのは、緊張したわ!」
「そういえば、また、一つ、ビアンカに言ってないことがあったな」
「側妃様のこと?」
私は何故か隣に座っているセプトに聞いた。
「あぁ、そうだ。言おうと思っていたんだが……側妃は、俺の母親だ。伯爵家出身であるため、ビアンカより身分は下になるな」
「今は、陛下の側妃様でしょ?」
「まあ、見かけは。第三王子さえ産まなければ、もっと、妃でも慎ましやかに暮らしていたはずだった」
そうだったのねと頷くと、興味がないととられたようだ。
そういうわけではないが、聞いていいものか迷う話題ではあった。
話題が途切れてしまったこと、きっと話したいのではないか……そう感じたので、私から口を開いた。
「……聞いてもいいの?」
「あぁ、いい。なんでも聞いてくれ」
「セプトは、この王宮は、生きづらい?」
「……生きづらかったかな。王子と呼ばれても、結局、側妃の子どもだったから、相手にされなかったし、母上も俺さえいなければ、もっと穏やかに暮らせただろうと思うと」
「そうかしら?私は、セプトがいてくれたから、側様は生きてこれたのじゃなくて?セプトのお母様をとやかくいうつもりはないのだけど……この王宮に長くいられるほど、心の強そうな方には見えなかったわ」
「確かに。言われてみればそうかもしれない。子どもから見たら、見えないことだな」
「それに、親子で想い合っていることが分かったわ。側妃様もセプトもお互いを大事に想っているのね!ステキだわ!」
そんなところまで見ていたのか?と驚くセプト。
微笑みかける側妃の表情を見れば、親子関係を知らないものでもわかるだろう。セプトへの並々ならぬ愛情は。
「そろそろ、寝ないか?」
妙にソワソワしているなと思っていたが、そうか、同じベッドで眠らないといけないのかと、隣を見た。
「まだ、寝るには早くない?」
「いや、結構夜も更けてきたし……」
「じゃあ、先に寝てくれて構わないわ!おやすみ、セプト!」
私は立ち上がって、バルコニーへと出た。
鳥籠と違って、セプトの部屋は高い場所にある。久しぶりに鳥籠から解放され、外の空気が吸いたくなり、夜風が気持ちいい。
「ビアンカが寝ないなら、もう少し起きている」
バルコニーの柵にもたれかかる私の隣に並んだ。
月夜が綺麗で輝いている。
「ビアンカは、どんな家族だったんだ?」
「私?」
「話したくないなら……いいけど」
「別にいいわよ?私は、レート侯爵家の嫡子で……」
「兄がいるって言ってなかったか?」
「お兄様は、遠縁の子どもなの」
「そうだったのか……」
「えぇ、私の旦那様となるように、養子になったのよ!」
「!!」
「どうしたの?」
「本当は王子との結婚じゃなかったのか?」
「そうだけど……驚くほどのことじゃないよね?」
貴族ではよくある話だ。親戚の子で、よくできた子を本家筋の養子にして、本家筋の子と結婚させる。
私のお兄様は、とにかく頭がよくてかっこよくて魔法もたくさん使えて魔力量も国一番ではないかと思わせるほど、完璧な男性であった。
もっと早くに紹介してくれていれば……と、父を今更ながら恨みたい気もするが、あの頃は好きな人がいたのだから……仕方がない。
「……だから、ビアンカへの愛は永遠にと綴ってあったのか?兄妹愛かと思って……」
「何をブツブツ言っているの?」
「いや、そのお兄様はどんな人だったんだ?」
「一言でいえば……完全無欠。どこから見てもかっこよくて、頭もいい。難しい魔法もたくさん使えたし、魔力量も国で1番だった!大好きで自慢のお兄様よ!」
「何故、結婚しなかったんだ?」
「……殿下に恋をした後だったの。出会ったのが、もし、その前なら……私はお兄様と添い遂げたでしょうね!お兄様も私のことを愛してくださっていましたから!」
「……妹として?」
「いいえ、一人の女の子として」
「知っていたのか?その、お兄様の気持ちを」
「えぇ、知っていましたよ!結婚をしないかと言われましたもの。でも、当時は殿下のことしか頭に無かったですし、アマリリスの刻印が示すように、私は殿下の婚約者でしたから」
ふぅ……とため息をつけば、隣からもため息が聞こえてきた。
疲れているのだろうか?と覗き見ると、何か考えているようだった。
「冷えてきましたし、中に戻りますか?」
「あぁ、ビアンカがいいのなら」
「儀式の準備に疲れているのでしょ?お酒も飲まれましたし……そろそろ、ベッドに入られては?」
そういうと、手を握られる。
「一緒に……」
「……」
「何もしないから……」
本当に?と疑う気持ちはあるが、私は頷いた。手をひかれ、寝室へと向かう。
「このブレスレット……」
「えぇ、お邪魔ですか?強化魔法もしてあるので、切れたりしませんから、そのままつけてもらっても大丈夫ですよ?」
「じゃあ、そのままにしておく」
ゴロンとベッドに転がると、手がぶつかった。そちらを見やると、視線があう。
「このベッドは、広いんですね?」
「それは、そうだろう?王子のベッドだから……」
「このベッドは……」
「言いたいことはわかるが、俺だけしか寝たことがないぞ!」
「そっか。そういえば……」
「アリエルのことなら、」
「まだ、何のことか言ってないですよ?もしかして、アリエルのことを気にしていたのですか?」
「……違ったのか?」
「それは、今じゃなくていいのかなって思ったんだけど……そっちが、振ってきたのなら、話します?」
「……アリエルは、その……かえてもらうことにした」
「いいの?そんな、思いつめたような顔をしていうことではないと思うけど……」
「いや、その……いつまでも、近くにいてもらうのは、ビアンカに失礼かと思って」
「別にいいけど?」
「そういうわけには、行かない。一つのけじめとしてだな……」
「アリエルの気持ちはどうするの?」
私の顔を見て、驚いていた。アリエルにだって、侍女とはいえ、感情はある。
どこからどう見ても、セプトのことを想っていることは、明白だ。
わざわざ、セプトの専属にまでなっているのだから。
「……そこまでは、考えていなかった」
視線を合わせていたのに、仰向けになって、天井を見ていた。
いつも支えてくれていただろうアリエルを手放していいのだろうか?
でも、セプトの側にいつづけて、幸せになることは、アリエルにはたぶんないのだろう。
「ただ、俺の側にいたとして、幸せになれる確率は、もうない。アリエルの今後を思えばこそ、この機会に手を離すべきなんだと……」
「寂しくない?」
「そりゃ……いつも、側でいてくれたから。これからは、ビアンカがいてくれる。そうだろ?」
「えぇ、そのつもりでいるけど……側妃として迎えてもいいんだよ?」
首を振るセプト。何か思ったのか、ベッドから起き上がって、座った。
私を見下ろし、手を取った。
「儀式、儀式とそればかりしか言ってこなかったけど……儀式も終わったんだ。ビアンカの答えは、俺と一緒に生きてくれるってことでいいのか?」
「えぇ、私はセプトとこれから先、一緒にいるわ!昨日、ちゃんと考えて出した答えですもの」
「……ありがとう」
「どうして、セプトがお礼を言うの?私の後ろ盾になってくれるのは、セプト以外いないのだけど?」
クスクス笑うと、俺なんてという。
あいている手で、セプトの口に手を添える。
「なんてって言わないで。私は、ここ数ヶ月のセプトを見てきて、あなたの側で支えようと決めたのよ?その人が、自分を貶めるようなことは言ったらダメ。少しの期間しか、あなたのことを知らないの。これから、どんな風になっていくのか、ずっと側で見させてね!私たちの関係は、これから始まるのですから」
「あぁ……ろくでもない……いや、これからビアンカが胸を張って隣に立ってもらえるよう、誠心誠意頑張るよ」
私もベッドから起き上がって、座るとセプトと向き合った。
左手を取り、シャラッとなるブレスレットのかかるセプトの手首にキスをする。
遊び歩いていたセプトなら……あるいは意味を知っているのかも……と、見上げるとまさしくそのようだ。
目を見開き驚いていたので、微笑んだ。
いたずらで、キスをしたわけではない。一つの私なりの決心だった。
このブレスレットと共に、あなたに枷をつけるけど、セプトのことが好きだという意味も含まれる。
意味を受け取ってくれたのか、抱きしめられた。
「キス、してもいい?」
「えぇ……」
瞼を閉じれば、唇が重なる。
初めてしたキスは、少しだけお酒の香りがした。
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