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4章

このたび風邪をひきました③

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うっすら目を開けると白い天井に消毒の臭い…

左腕を固定されているのか、身体を動かすとピリリと痛みがはしる。慌てて腕を見れば透明のチューブが刺さっていた。どんどん意識が覚醒し、点滴されているのがわかるボドルバック入った薬液が半分ぐらい落ちているから約30分前からこの場所で治療を受けていたみたいだ。

朧気に周りを見渡せば、私の横で椅子に腰をかけて本を読まれている方が…



「起きたか…大丈夫か…?」



慈悲深く優しい微笑みでこんな腐ったモブ娘を暖かく包みこんでくれる、マリア・青柳様がそこに居た。掌と掌を合わせクロスし祈りを捧げる



「マリア青柳先輩…なんで…ここに…?」


「カインはお前の治療費を払いに行っている。その間の代打だ…ところでなぜ俺が外人みたいな名前になっている…?」


「……慈悲深き貴方は…人類全て等しく愛し微笑む。自らの心を押し殺しこんなモブ娘にも優しくして頂き…聖母マリアとは貴方の事だ!!」


「………あまり病人にキツイ事を言いたくないので、ここは堪えるが誰が聖母マリアだ…それにお前のせいで可笑しな噂までたって非常に不愉快極まりない…元気になった後は覚えておけよ…」



こめかみに青筋をたてて青柳先輩が怒ってらっしゃる、プルプル怒りで震えているが、寝込んでる私の為に堪えてるのがよくわかる。いつもなら怒鳴られ顔面叩かれているはず、この人はなんだかんだ優しい先輩だ。



「色々ご迷惑おかけしてすみません…」


「おっい…いきなり起き上がるな危ないだろ!」



身体を起こし軽く頭を下げればふらついて、青柳先輩に突進するように上半身が倒れる。慌てて青柳先輩が支えてくれたから、ベッドから堕ちることはなかったが自分が思っているより身体は怠くいう事をきいてくれない。

青柳先輩は私の両肩を優しく押してくれて再度寝かせてくれようとしたが、なぜだかピタリと押す力が止まり制止した。


青柳先輩の視線が一点集中でジーと私の胸元を見てらっしゃる?

あっ…私はまだジャージ姿だったんだ、ジャージ姿に不信感でも持たれたのかしら、ヨロヨロと自ら寝転びふっと自ら胸元をみてみればジャージのチャックがなぜだが中央部分まで下がっていた。先っぽはギリギリジャージに隠れていたが確実に胸の谷間を青柳先輩に晒してしまった。


慌てて上までチャックをあげて掛け布団をかける。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい私ってばノーブラだった事を忘れていた。たぶん診察の際に少し下げたのが寝返りとかで下まで下がってしまったのかな…



「…白い…白い…メロン…メロン…」



口元に手を当てて壊れたロボットみたいにわけわからない事を呟いている



「すっ…すみません…お見苦しい物を…」


「あれは割れ目…?いや谷間だった…メロン2つの谷間…あのメロンの体積と重量はなんだ…なんなんだ…人間なのか?人間とは別の生物…?」



私の謝罪を聞かずわけわからない事を呟く青柳先輩。えっ…そんな頭が可笑しくなるぐらい見苦し物みせちゃったのかしら…



「あ…青柳先輩…大丈夫ですか?」


「 …… 」


「ごめんなさい…」


「…いや…なんでもない!!」


「それならいいんですが…顔が真っ赤ですよ?私の風邪うつしちゃいましたか?」


「いやいや…大丈夫だ…気にするな、そう…そうだな…お前は今俺の父親が経営する病院で治療を受けてただの風邪らしい。解熱効果のある点滴をしているから、それが終わったら帰宅して大丈夫だ…」


「そうですか…点滴のお蔭か確かに少し身体が楽になった気がします…」


「ふらついていたじゃないか…無理するな…」


「それは寝起きで頭下げたせいで…」


「ならいいんだがな…お前は馬鹿だが何か我慢する癖があるみたいだな…あの夜祭りだってカインに激昂して怒鳴ると思えば、ただその場で堪えて逃げ出したしな。」


「あうあう…あの時もお世話になりました。」


「なにやら事情があったみたいだが、今度は全校生徒に見せ付ける様に登校ときたもんだ。お前…カインに振り回されてないか…?」


「……もしかして…青柳先輩…私を心配してる?」


「なっ!?違う…いや違うこともないか…兎に角お前は昼間みたいに馬鹿なままで居ればいいのに…」


「馬鹿は余計ですよ…でも青柳先輩…」


「なんだ…?」


「…たぶん…心配してくれてありがとうございます?」


「だから疑問系でお礼を述べるなと前にも言っただろ」


「確かに言われましたね以前」



なんだか今日の青柳先輩は優しくて、おもわずニヤリと笑ってしまえば青柳先輩も口端を右上に上げて微笑んだ。

その優しい微笑みはやはり聖母マリアみたいで青柳先輩にキュッンとしたのは、ピヨ男さんには内緒にしとかなければ。


べっ…べっ…別に浮気心が沸いたわけじゃないからね…





「青柳わるかったな…」


「カイン終わったか?別に治療費払わなくともよかったんだぞ…」


「そういうわけにいかないだろ…あかりん目が覚めた?少し顔色良くなかったみたいだね。あかりんママが迎えに来るって言ってたけど僕が送るから点滴終わったら帰ろ」



ピヨたんが戻ってきて嬉しくて慌てて飛び起き様としたが、なぜだか顔面を押さえつけられて起き上がらせて貰えない。



「お前はさっきふらついたばっかりだろ寝てろ!」


「顔面押さなくても…顔がつぶれちゃうぅぅ」



やっぱり鬼畜眼鏡だった!!

病人の顔面を押さえつけるなんて、なんたる鬼畜っぷり一瞬キュッンとした私の恋心を返せ!



「青柳…離してあげて…」


「この鬼畜眼鏡め!!私とピヨたんのラブラブ逢瀬を邪魔しましたね。キィィィー…ゴッホゴッホ…」


「ほらみろ…」


「あかりん安静にして良い子だから、あと少しで帰れるよ」



ピヨたんは私のベッド端に腰かけて優しく頭を撫でてくれた。嬉しくてピヨたんの手に頬擦りすれば頬も優しく撫でくれる



「ハァ~胸焼け起こしそうだから俺は帰るぞ!早く元気になるように小野 亜香里!!」



だからフルネームで私を呼ばないで欲しいのですが、青柳先輩はその場をスタスタと退場して行った。

その後ろ姿に感謝を込めてお祈りすれば、ピヨたんが不思議そうに私を見ていた。


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