人外の旦那様に食べられたいの

おんちゃん

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二人の生活が開始されました

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透明さんとの婚姻生活は、思っていたより穏やかで暖かな日々だった。

透明さんはどうやら以前から私を知っていたらしく、私の好む家具や衣服を全て取り揃えて準備万端状態で出迎えられ驚いたがその後の生活は穏やかだった。

優しく家事なども手伝ってくれ、お風呂掃除など自分の担当だと率先してやってくれる。夫婦になったのだから夜のお勤めもあるのかと思えば私の心が追い付くまでは無体を強いたくないと寝室は別になっており、お互いのプライベートを大切にするという事でお互いの部屋が用意されていた。透明さんの部屋は自分で掃除するので立ち入り禁止だったり不思議な人なのだがそれ以外は特に不満もなく、食事やテレビなどは共同部屋のリビングで行い、お互いの好む本を読んだりDVDを共に見たり話したりした。



姿は見えないが彼の着る衣服で大体の居る場所はわかるしスマホを使えば会話も出来るので意思の疎通ははかれた。

最初の1ヶ月は同棲生活に慣れることからスタートし、今はお互いの好みや趣味を知っていきなんとなく彼の事をわかってきた所。

透明さんは紳士で真面目な人の様で、毎日お仕事に行って私が待つ家に残業がなければすぐ帰ってきてくれて手料理を美味しいと食べてくれる、たまに頭を優しく撫でくれ誉めてくれる。頭を撫でられるなんていつぶりだろう、まだお父さんが生きてる時だったかな…ふっと暖かい気持ちになり目頭が熱くなると優しくハグしてくれるがそれ以上の手は出してこない。


透明さんの姿は見えないが、抱き締められた時に少し透明さんの香りがする、その香りに不快感は無く最近では少しその香りに包まれると心地良く安心する様になった。



「透明さん…いつも優しくして頂いてありがとうございます…」


《おや聡子さん…貴方も今や透明さんなんですから私の事は悟と呼んでください》



ふぁぁ…確かに問答無用で入籍させられて、今や私は人妻なのだそして透明 聡子となっている。



《ねぇ…奥さん…》



AIボイスで感情などわからない声色なはずなのに、なぜだか甘い雰囲気が漂っているのは気のせいですかね?この人は私の旦那様で私の事を好いて頂いてるのはこの数ヶ月でわかっている…そろそろ聞いてもいいかな?



「さ…さと…悟さんはなぜ私をお嫁さんに選ばれのですか…?」


《やっと聞いてくれましたね。貴方を見かけたのは三年前のお通夜の日でした。私は仕事でその近くで張り込みをしていまして…》


「あぁ…旦那様は刑事さんですものね…三年前のお通夜ですか…まさか…」


《そう貴方のお父様のお通夜の日でした。貴方は虚ろげな瞳で淡々と喪主をこなしていました。その姿はまるでこの世から消えてしまいそうに儚げでふっとその場から存在を無くしてしまいそうで…透明人間の私が言うのもなんですがね…消えてしまうのではとヒヤヒヤしました…》



私は父子家庭だった。父一人子一人、母は私を産んで亡くなったが、母のぶんまでお父さんは私を愛し慈しみ育てくれた。やっと成人してこれから親孝行するって時に父親の癌がみつかりあっという間にこの世を去った。

感謝もお礼も告げられず亡くなった事も受け入れられず途方に暮れた。でも現実は無情でやる事のは多く親戚や知り合いに迷惑をかけるわけにいかず淡々と葬儀をこなした。その時の記憶は朧気で、今だに思い出すと苦しくなる。葬儀後も父親の顔に泥を塗る真似はしたくなくて、日々の生活をこなしてきたが本当は寂しいかった。

葬儀の時の悲しみも切なさも誰かに話したくてわかち合いたくてしかたなかった…



《私は貴方が心配で心配で…葬儀後も泣くことも感情を出すこともなく、淡々と生きていく姿が痛々しく…目が離せなくて…》


「そんな前から旦那様は私を気にかけてくれたのですね…」



ホロリと涙が溢れる…父が亡くなって天涯孤独になった私は一人ぼっちになった。これからずっと一人で生きて行くのだと思っていたのに、私は知らない間に旦那様に見守って頂いていたらしい。



《はい…人外能力で貴方に危険がないか、生命の灯を自ら消されてないか常に監し…いえ見張っておりました…不安で心配で本音はその場で拐ってしまおうとも考えましたが、経済的苦労をかけない様蓄えを増やしやっと貴方を囲う事が可能になりました》


「んっ…?一目惚れって話はどこに…?」


《三年前のその時に一目惚れでした。それからはずっとお慕いし見守り続けておりました》


「人外能力で常に見守っていた…?えっえっえっ…それ恋愛感情では無いのでは…」


《24時間365日…仕事で近くに居られない時は、遠隔透明能力を駆使しました。これほどまで私を虜しときながら…この気持ちを疑われるのですか?》



あれ…ちょっといい話だと思ったのに背筋にゾクリと寒気が走る、そもそも初対面前から貴方は私を見守る続けるという名目で人外スキル生かしてストーキングしておられたと…



「旦那様…もしや…私のストーカー?」


《ちっ…ちが…違います!?そっそっんなつもりは、本当に心配だったんです…》



姿は見えないのにあわあわ慌てて腕を振るい、かなり動揺する洋服の袖が上下に慌ただしく揺れ動き忙しない。なぜだかそんな彼が可愛いくて思わず微笑んでしまう私。この半年の同棲生活で彼の包み込む優しいさを知ってきた。父の様な兄の様な居心地の良さ、確実に好かれ大切にされてるのは伝わっている。父を亡くした虚無感にさいなまれていたが、胸にポッカリあいた穴を彼が少しずつ埋めていく。彼に癒され彼に絆され、恋心の芽がニョッキり成長し始めた自覚はある…

でも彼は私に触れてこない…人外だから性欲というものが無いのかもしれない半年たっても夜は別々の布団で寝る



触れて欲しい…

でも嫌われたくない…

また一人ぼっちに戻りたくない…



だから家族として夫婦としてこれからも彼の側に居続けたいから白い関係を続ける…




「私をお嫁さんに選んで頂だきありがとうございます」


《聡子さん…一生幸せにします》



初めて私から彼に抱き付き、そんな私を彼も抱き締め返してくれた幸せな休日の1日


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