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14歳の誕生日(3)

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『リリア!貴様との婚約を破棄させて貰う。公爵令嬢アメリアに行った様々な虐めや脅迫行為、これ以上見逃す訳にはいかない!』



華々しい夜会にそぐわない叫び声により、人々の話し声が息を潜め舞台中央に視線が注がれる。何が起きたか何を言われてるのか理解出来ず、ワナワナと身体を震わせながら暴言を吐く相手を見ても結果は何も変わらない。



『再度言わせてもらう、貴様との婚約は破棄させて貰う!お前の処分はすでに決まっている、貴様の一族にもそれ相当の罪を償って貰う。』



言い訳も反論も許されず、護衛に拘束され身動きをとれず。犯罪者をみるような視線、暴言が沸き起こり、人々から蔑む視線が注がれる。



私は何を間違えた?

私は王太子の婚約者になるべく知識・礼節を血も滲む想いで努力してきた。足りなかったのか?

身分・容姿・知識・努力も全てに置いて最初から足りなかったのでは?


彼女 公爵令嬢アメリアは全てに恵まれていた。努力しても決して得られない美貌は羨ましく焦がれ嫉妬し我を忘れた……。

嫉妬の炎で、様々なあらぬ噂を流した。様々な物を破壊した。得られたのは最低限の自尊心のみ




虚しい・・・・

寂しい・・・・


身分・容姿・博学な王太子を恋い焦がれる前に、私を拾わず捨て置いてくれれば、こんなにも醜く見苦しい女にならなかったのに・・・・


















「リリア様~リリア様!大丈夫ですか?」


ピンクの髪は肩に掛かる緩やかなウェーブ、大きな目に赤い瞳 目鼻立ちがはっきりとした美少女が話しかけてる。


「お義兄ブラッディが、リリア様のお顔を握り潰すような事をなさるから、リリア様が放心状態になってしまったのです!」


「僕が!?悪いのか?どう考えてもコイツの行いが・・・・確かに一心不乱にケーキを食べているが、無表情で一言も話さない・・・・気味が悪いな・・・・」



何やら過去の断罪を思いだし、感傷に耽っている私にシスコン兄妹が声をかけてるらしい。心配までされては申し訳がたたない。



「お声をかけて頂いたのに、お返事が遅くなりまして申し訳ございません。改めてご挨拶を、私子爵家のリリアと申します、お茶会の際はお見苦しく失礼な態度この場で再度謝罪をさせて頂だきたくお願い申し上げます」



完璧な淑女の礼をとり、深々と頭を下げる。

先程との対応・口調が180度も違うリリアに、唖然とする二人



「リリア様!頭を上げて下さい。謝罪なんて私などに親しく声をかけて頂きとても嬉しかったです。それに春から同じ学園に通えると伺いました。出来たら親しくして頂ければ嬉しいです」



「アメリアお前は優しすぎるよ。リリア嬢は何か悪い物でも口に入れただけだ」



「アメリア公爵令嬢・ブラッディ公爵子息ご心配かけて申し訳ないです。私のような平々凡々の馬鹿にアメリア令嬢と、親しくなどもったいないです。」



まだ断罪の過去の余韻がぬけない、また過ちを繰り返してしまっているのでは?という衝動にかられる。

そもそも傲慢に女嫌いの克服のお手伝いという名目で、王太子の婚約者候補を了承するなど間違っているのでは?調子に乗りすぎていたのでないのか?



関わるべきではなかった・・・・


同情など傲慢にも甚だしい・・・・



そして婚約者候補の立場を軽く考えすぎていた。




今さら自ら辞退など出来るわけもなく、八方塞がりにしたのは自分自身。自らの首を自ら締め上げている。

なんだか泣きそうになる、自分の馬鹿さ加減にヘドがでる。



「ごめ・・・・ごめんなさい・・ちょっとお手洗いに・・・・」




そんな時だった・・・・




ふわっとリリアの頭の上に、手が置かれ優しく頭を撫でられる。

ふわっと身体を持ち上げられれば、抱き上げられる



「大丈夫だよ!リリアは僕が守るから、何にも心配しなくても平気だよ。やっと僕がお仕置きした意味わかったね。本当に馬鹿なんだから・・・」



目に水が溢れだす、ライラックはなぜこんなに優しいのかわからないけど、戻ってきてくれた安心と自分自身の愚かさで声にならない。喉に熱いものが込み上げて、しゃくりあげる



「ライお兄ちゃん・・・・助けて・・・・」


「だから言ったでしょ。何で僕に相談しなかったんだって・・・・大丈夫、ほら泣かない。ごめんね二人ともリリアはちょっと暗い過去が、トラウマでね。たまに精神不安になるんだ落ち着かせる為、この場を抜けるね」



「ライラック・・・・大丈夫なのか?本当何があったリリア嬢に」


「ライラック様リリア様を宜しくお願いします。今にも壊れてしまいそうです。」



ライラックは優しい笑顔で、リリアを抱きその場を離れていく。アメリアにもブラッディにもその場を止める事はなかった。

二人の絆のような雰囲気を壊す者などいなかった。


ただ寂しげにたたずむ・・・・王太子だけは居た。

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