お腹痛いって勇者(お兄ちゃん)が言うから代わりに凱旋パレードに参加しただけなんです

1章

3

なんやかんやあったけど5年かけて魔王討伐に成功した。


よく5年間私が勇者の身代わりになってた事がバレなかったなと呆気にとられるが、よく頑張った私、気付けば20歳になっていた！本当何度兄のせいで怒られ怒鳴られ嫌味を言われた事か、最後の方は『お前は二重人格なのか！？』と怪しまれたが全てが終わったのだ、これで仮面もつけず、勇者リューイとしてではなく田舎者リィーシャとして生きられる普通の女の子らしく恋をしてお嫁さんになったり出来るんだと喜びにうちひしがれていた。




「なんか喜んでる所悪いリィーシャ……」


「あれ？お兄ちゃんどうしたの、国王様に討伐報告が終わってあとは凱旋パレードだけでしょ？」


「は……はら……腹が痛くて、いつトイレに駆け込むかわからない……」


「えええええええ大丈夫？？」


「代わってくれ！！」


「い…嫌だよ……」


「これで最後だから、お前が俺の代わりになるのは最後だからお願い！お願いします！！魔王討伐報酬でお前の欲しかった物買ってあげるから！！本当に腹が痛くてこの年で漏らしたら生きて行けないだろ！！」



これが最後だから……


これが最後だから……



この言葉に私は騙されてしまったのだ。沢山の民衆が集まっている中の凱旋パレードに主役の勇者が欠けるなどあってはいけないと、生真面目さと、最後だしいいかっと気楽に考えてしまった。



「おう！リューイ！！」


「勇者リューイ様お待ちしてました」



騎士のオルドと聖女のミチカ様が笑顔で出迎えてくれた。魔王討伐が終わり二人とも役目が終わった安堵で笑顔だが……

美貌の持ち主の黒魔導師ゼルビア様は、相変わらず私を一睨みする。いや私ではない勇者リューイに対してだ、私は嫌われて無いと思いたい。

仮面を着けていかにも怪しい世話役だった私にも長旅だった為か、ゼルビア様は口数が少なかったけど親切にしてくれた。



最後の最後まで睨み付られるって、どんだけ嫌われてるのよお兄ちゃん！！

思い返せば勇者の時に、ゼルビア様に何度罵られた事だろう『死ね！』『無能！』『ゴミくずが！』『知恵が無い奴は人間でもない』『この脳筋野郎！』『この場から去れ！』なんだろう一生分の罵倒を受けた5年間だったな、よく耐えぬいたな自分偉いぞ自分！これもこの凱旋パレードで最後だ睨み付けられ罵られたってこれが最後なんだから余裕だ、ふいに私はゼルビア様に対して微笑んでしまった。



それがいけなかったのだ……