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深まる絆

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彼も徐々に最初こそ面倒くさそうだったが、私に歩み寄るようになってくれたのは半年後。

私が顔を出せばペコリと会釈してくれるようになった。







『またご飯も食べてないで描き始めてる!!』



『…食べるの面倒くさい……』



『もぉ~世話の焼ける子ね!描きながらでいいから口をあけなさい』





今日のお弁当はサンドイッチだから、私が特別にあ~んしてあげましょう。

気分は母親だ、リュックは首を傾けて不思議そうな顔をする。いいから早くお口を開きなさい優しく促せばおずおずと口を開き、問答無用でサンドイッチを口に突っ込む。

今日のサンドイッチはレタス・トマト・ベーコン入りBLTサンドイッチだ。なかなかに厚いサンドイッチを強引に口に突っ込めばリュックは驚き呼吸困難になりながら必死に食べる。

喉が詰まらないようにアイスティも持参してある、そっと渡せばゴッホゴッホ咳き込みながらBLTサンドをアイスティで流しこんだ。





『殺す気かぁぁぁぁ!!』



『あっはっはっ~リュックが怒った!ちゃんとご飯しないからダメなんでしょ♪』



『メーシアを信頼した僕が馬鹿だった……』



『いま……いま……メーシアって呼んでくれた!嬉しい嬉しい嬉しいわぁぁ♪ついに若い燕が私になついたのね、有閑マダムの道が一本開けたわ♪』





私は万歳しながらキャッキャッ喜べば、リュックは頭をぽりぽり掻きながら深いため息をつく。





『……色々突っ込みたいけどもぉいいや…可愛いし……美味しいから……』





私は彼にとって知り合いから友達になり、そしてついに信頼出来る親友まで格上げされたかしら?

一年後には私が会いにいけば自然と微笑んでくれるしさりげなく隣に座るように促してくれる。

前髪を頑なに切るのを嫌がるから、ヘアピンで押さえてあげれば私の前だけならと承知してくれ、その綺麗な碧眼の瞳でみつめながら笑ってくれる。

額を露わにしたリュックは想像してたよりずっと端正な面持ちをしていた。







キュゥゥゥンと胸が弾ける。

2度目の心臓発作を起こした事はいうまでもない……







彼との交流で絆を深めながらパトロンのお仕事も忘れていない。
お父様に頼んでリュックの絵画を額縁に入れ我が家の客間に飾った。我が家の客間は商談に使用される事があるリュックの絵画がお客様の目に止まる場所を提供した。

飾ってから3ヶ月もしないうちに、男爵の貴婦人に気に入られ他の絵を見せて欲しいとご依頼があった、貴婦人ごしに噂が広がり沢山の貴族がその絵画目当てに我が商会に訪れるようになった。





『リュック聞いて貴方の絵画が売れたの!!まだ無名の貴方の作品だからまだ高額ではないけど、これが貴方の初めての報酬よ!』



『えっ……?僕が貰っていいの……?』



『勿論よ!!』



『でも売ってくれたのは君じゃないか……』



『正確には私じゃなくてお父様と商会の力のお陰だわ。報酬の1割はお父様に献上してあるけど許してね。これで少しでも貴方の暮らしが良くなればいいのだけど、お父様も貴方の作品を気に入ってくれてるし、私には美術的な心眼があるじゃないかと誉めてくれたわ♪これからもどんどん貴方の作品を売り込むわよ!』



『…………それでいいの?』


『ごめん…なんでもない……リュックのパトロンになれただけでも幸せなのに、大事な人になんて我儘が過ぎたわ』



『それって……どういう意味なの……?』





このにぶちん男子め!!

貴方最近色々な女性からアプローチされやんわり断ってるくせに、2年も一緒に居る私の恋心はわからないのか!?

えーーいどうにでもなれ!逆切れに近い勢いで私はついに胸のうちを吐き出す。







『好きなの!リュックが大好きなの!!悪い?悪いって言われたって私の気持ちは私のものだから貴方が否定しても絶対変わらないんだからね。』





怒鳴りながら告白する事になるなんて……

これ絶対振られるフラグだよね……

もっと可愛らしい告白出来ないのかしら、我ながら自分で自分が嫌になる……





『……僕も…』



『振られたってリュックのパトロンなのは変わらないし、金銭的援助も止めたりする気はないから安心してね。私の気持ちを吐き出したかっただけなの……えっ?』



『だから僕もだって……』



『いやいや……無理強いも強要もしないから!本当お弁当作りも画材費もこれまで通りだからリュックは何にも心配しなくていいのよ!ごめんね変な事いっちゃって、あははは……』



『メーシア……ちゃんと聞いて…誰にも相手にされない小汚ない僕を見つけ、僕の才能を開花してくれたのは君だ。そして餌付けまでして健康体にしたら長生きだってする、があるんだよ。』





ん……?



リュックはペットだったの……?



捨て犬かなんかだったのか……?





『愛情一杯に可愛がられ育てられた僕は勿論ご主人様に首ったけだよ!メーシアの恋人になる、最後までお世話してね』





気付けば私が見上げる程大きくなったリュックが、私の俯く顔を持ち上げて素敵な笑顔で微笑んでいた。

そんな蕩けそうな笑顔はじめて見た、色々な感情かごちゃまぜになった私は感極まって大泣きしながら『一生大切にする』と鼻息荒く宣言する。

そこからは脳内お花畑で、リュックとの幸せな学園生活をこれでもかって堪能していた。







しかし世の中そんなに上手くいくわけもなく……
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