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第二戦 転生戦姫ハ栄養ヲ得ル
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「はい、少し熱いから気を付けてね」
「あ、ありがとうなのじゃ」
なんとか冷静を繕ってご飯を受け取る。
出来立てなのかお粥から湯気が出ていた。
(!…暖かいご飯…!しかもあのクソまずい携帯食でも腐った非常食でもない!)
無意識の内に垂れた涎を飲み込むと、欲望と葛藤で震えた手でスプーンを取った。
ぱくり、と口に入れてみれば質の良い出汁の香りと野菜の旨味が口いっぱいに広がる。
(……ご飯ってこんなに美味じゃったのか……)
硬い小麦の固形物しか齧ってこなかったせいか、お粥が輝いて見える。思わず鼻がツンとした私はきっと悪くない。
はふはふとお粥を食べていると、ベッドの脇に座って頬杖をついていたメイドが私の髪をいじりながら口を開いた。
「お嬢ちゃんの髪、すごく綺麗だねぇ~。今時こんな純粋な銀髪めったに見ないよ~」
そういう彼女の髪は茶色で、少し伏せられている瞳は黒色をしている。
ファンタジーなんだし、パステルカラーでもおかしくないんじゃないか?
現に戦友の中に紅い髪の奴とか、それこそ同じような白髪の奴だっていたぞ?
「そうかの?私のいたところでは普通じゃったが……」
「えぇ、なにそれ。そういえば、お嬢ちゃん名前はなんていうの?どこ出身?」
(なんていうか…すごく今更な気もしないでもないがな……)
食事に毒も入っていなかったし、一応敵ではないらしい相手だ。名乗って置こう。
「私の名は、アミス。出身はエルガストじゃ」
名乗りながら〈誘拐〉や〈捕虜〉という選択肢を頭の中で消す。誘拐する相手の国を知らないはずはないし、捕虜ならばこんな好待遇はあり得ないだろう。
しかしメイドの反応は、アミスさえも予想していないものだった。
「エルガスト?それってどこら辺にあるの?」
「どこもなにも、ここの近くにあるはずじゃが?世界三大国の一つじゃぞ?アルバスハルト、フェレベティシア、エルガスト。…ここはアルバスハルトじゃないのか?」
こんな贅沢な暮らしができるほど力を持っている国なんてアルバスハルトしかないはずだ。
〈戦姫〉と言われるだけあって私の観察眼も決して悪くないはず―。
「お嬢ちゃん、怪我をしていたしきっと記憶がこんがらがっているのね。」
(むぅ!何を失礼な、私は至って正常じゃ!……だから、残念な子を見る目で見つめるのは止めよ)
「ここは、カルディア王国。今年でちょうど二千年の歴史を持つ国よ。世界三大国って言ったら、カルディア、ゲルバニア、ルクシェリア…でしょう?」
かるでぃあ王国?それに、げるばにあ?るくしぇりあ……
どれも聞いたことのない国名。
それになにより……
「…お主、今二千年の歴史を持つって言ったかの?」
「え?えぇ、言ったけど……」
おかしい。二千年の歴史を持つ大国など存在しなかったはずだ。アルバスハルトですら五百年。エルガストなんて二百年もない。
でも、カルディア王国は二千年――
彼女が嘘をついているようには見えない。
ということは、転生ではなく転移?または、召喚……?
とにかく、ここは私が生きていた世界とは別物と考えるべきね。
「なるほど。ありがとうのう、メイドよ。童はちょっと動揺していたらしいのじゃ。この国についてもっと知りたいのじゃが…教えてくれるか?」
必殺★上目遣いO・NE・DA・RE!!
「ッええ!私が教えられるものなら、何でも!あ、本も何冊か持ってくるわね!」
決まったぁああああああ!
いやぁ、美人って本当に役得じゃのう!
「わぁ、ありがとうなのじゃ~!」
行動の基本は情報収集!
〈氷の戦姫〉アミス、出陣なのじゃ!
To be continued・・・・・
「あ、ありがとうなのじゃ」
なんとか冷静を繕ってご飯を受け取る。
出来立てなのかお粥から湯気が出ていた。
(!…暖かいご飯…!しかもあのクソまずい携帯食でも腐った非常食でもない!)
無意識の内に垂れた涎を飲み込むと、欲望と葛藤で震えた手でスプーンを取った。
ぱくり、と口に入れてみれば質の良い出汁の香りと野菜の旨味が口いっぱいに広がる。
(……ご飯ってこんなに美味じゃったのか……)
硬い小麦の固形物しか齧ってこなかったせいか、お粥が輝いて見える。思わず鼻がツンとした私はきっと悪くない。
はふはふとお粥を食べていると、ベッドの脇に座って頬杖をついていたメイドが私の髪をいじりながら口を開いた。
「お嬢ちゃんの髪、すごく綺麗だねぇ~。今時こんな純粋な銀髪めったに見ないよ~」
そういう彼女の髪は茶色で、少し伏せられている瞳は黒色をしている。
ファンタジーなんだし、パステルカラーでもおかしくないんじゃないか?
現に戦友の中に紅い髪の奴とか、それこそ同じような白髪の奴だっていたぞ?
「そうかの?私のいたところでは普通じゃったが……」
「えぇ、なにそれ。そういえば、お嬢ちゃん名前はなんていうの?どこ出身?」
(なんていうか…すごく今更な気もしないでもないがな……)
食事に毒も入っていなかったし、一応敵ではないらしい相手だ。名乗って置こう。
「私の名は、アミス。出身はエルガストじゃ」
名乗りながら〈誘拐〉や〈捕虜〉という選択肢を頭の中で消す。誘拐する相手の国を知らないはずはないし、捕虜ならばこんな好待遇はあり得ないだろう。
しかしメイドの反応は、アミスさえも予想していないものだった。
「エルガスト?それってどこら辺にあるの?」
「どこもなにも、ここの近くにあるはずじゃが?世界三大国の一つじゃぞ?アルバスハルト、フェレベティシア、エルガスト。…ここはアルバスハルトじゃないのか?」
こんな贅沢な暮らしができるほど力を持っている国なんてアルバスハルトしかないはずだ。
〈戦姫〉と言われるだけあって私の観察眼も決して悪くないはず―。
「お嬢ちゃん、怪我をしていたしきっと記憶がこんがらがっているのね。」
(むぅ!何を失礼な、私は至って正常じゃ!……だから、残念な子を見る目で見つめるのは止めよ)
「ここは、カルディア王国。今年でちょうど二千年の歴史を持つ国よ。世界三大国って言ったら、カルディア、ゲルバニア、ルクシェリア…でしょう?」
かるでぃあ王国?それに、げるばにあ?るくしぇりあ……
どれも聞いたことのない国名。
それになにより……
「…お主、今二千年の歴史を持つって言ったかの?」
「え?えぇ、言ったけど……」
おかしい。二千年の歴史を持つ大国など存在しなかったはずだ。アルバスハルトですら五百年。エルガストなんて二百年もない。
でも、カルディア王国は二千年――
彼女が嘘をついているようには見えない。
ということは、転生ではなく転移?または、召喚……?
とにかく、ここは私が生きていた世界とは別物と考えるべきね。
「なるほど。ありがとうのう、メイドよ。童はちょっと動揺していたらしいのじゃ。この国についてもっと知りたいのじゃが…教えてくれるか?」
必殺★上目遣いO・NE・DA・RE!!
「ッええ!私が教えられるものなら、何でも!あ、本も何冊か持ってくるわね!」
決まったぁああああああ!
いやぁ、美人って本当に役得じゃのう!
「わぁ、ありがとうなのじゃ~!」
行動の基本は情報収集!
〈氷の戦姫〉アミス、出陣なのじゃ!
To be continued・・・・・
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