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6・新パーティーと新たな仲間(2)

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「…ゼノのダチのセイルだ。俺もパーティーに入ることになった。よろしく」

―――――はあああああああああああああッ!?!?

***

ゼノとパーティーを結成して約一か月。私たちは順調に強くなって行った。始めにゼノが言っていた通り、パーティーで討伐すると楽なことがたくさんあった。今までは受注が躊躇われていたクエストも一発OK。多くのモンスターを殲滅する場合はフォローしてくれる仲間がいるのも悪くなかった。
―最近は喧嘩する回数も減ってきたしね。

そして、なんやかんやで忙しいゼノのために私は"電話"を作ったりもした。
いやぁ、初めて電話した時のゼノの驚きよう!アレは傑作だった!!
決まりとして日曜の十八時に定期電話を入れて、一週間の予定を決める。
あとは会ったときに細かい変更を伝える感じ。
始めにパーティーを組んだ時は"SSSS級の無理ゲーだぁ!"って思ったけど、何だかんだでいいじゃないか…と、私は思っていましたよ。ええ、ついさっきまでは!!

「―ゼノ。どういうことかな?」

私がこのパーティーのリーダーなんだよねッ!?どうして勝手にメンバー増えた!?

「いやぁ、ごめんね。セイルがどうしても冒険者になりたいって言い始めて…旧知の仲だったから安全面も配慮してパーティーに入れちゃった★」

てへッ★じゃねーよっ!!
あ”あ”あ”あ”ーーー。でもどうせもう申請は通しちゃっているんだろうし…はぁ。

「…えーっと、セイル?貴女の戦闘スタイルは?」
「魔術。あと弓も使える」

ふむふむ。完全援護系ね。

「―魔術の得意属性は?」
「炎。ってか、さっきから質問ばっかだけどお前誰」

…………類は友を呼ぶ。
ムカつくヤツの友はムカつくし、いけ好かないゼノの友達もいけ好かない…と。

「私はこのパーティーのリーダー、ルーファ。双剣と魔術がメインの前衛攻撃担当」
「あぁ、お前がゼノが言っていた"ルーファ"ね……はぁ。なんだ、どんな強者かと思ったらただのチビじゃん」

――イラぁッ!!

「私より弱者の癖に生意気言わないでくれる?」
「はぁ?ランクが低いのは、まだ冒険者を始めたばかりなだけだけど?」
「はっ、私実力派Sランクレベルなの。それでも勝てるって言う?この背がでかいだけの弱虫が」
「あぁ?お前言ってくれるじゃねぇかッ!俺だってで…ゼノと一緒にいるためにずっと訓練しているんだぞッ!?」
「訓練しているだけで満足して実力が伴っていない…なんてかわいそうなのかしら?鍛えるだけならゴリラでもできるわ」
「うるせぇ。ガキは家でままごとでもやっていろよ」
「お生憎様。貴方もガキよ」

バチバチバチバチ…。
二十センチは高い彼を睨みつけながら悪態を突き合う。
黒髪に紺の瞳って何気に綺麗だなとか、絶対思っていないからねっ!?

「ハイハイ、喧嘩はそこまで。セイル、口でルーファに敵うわけないんだから止めておきな。それに真剣勝負を望むならきっと相手をしてくれるよ?」
「…!!」

ふん。相手はしてあげるけど、どうせ歯が立たないよ?

「おいチビ。俺と勝負しろ」
「ハイハイ、分かっていましたよ。受けて立ちます」

本当、どいつもこいつもいけ好かない。

**

「んで?私に喧嘩を吹っかけて、手も足も出ずに返り討ちにあったセイル君。申し開きはあるかな?」

手にした木刀を地面に這いつくばっているセイルへ向けたまま微笑む。

「―くそッ!!なんでこんなチビが強えんだよッ!?」

そりゃまぁ、戦女神の私は強いだろうけど―

「……ただ単純に貴方が弱いだけじゃない?」

私まだ小さいから本来の実力の半分の力も出せていないんだけど。

「―っ!?」
「ルーファ、そのくらいにしておいてあげな。セイルの心折れちゃうからね?」
「―――こんなもんで折れたら"ウィオラ"に付いてこれないんじゃない?目指すはSSSランクパーティーなのよ?」

セイルに対する罪悪感を隠すようにそっぽを向いて突き放す。

「セイル、大丈夫。このパーティーにいれば嫌でも強くなれるさ。ちょっと僕とルーファは異常なだけだから。同い年の中だと君は十二分に強いよ」
「……」

…私が"異常"ってことについては見事に何も言えないわね。
"賢者"だし"戦女神"だし"大魔導士"だし、サキュバス公爵令嬢だし。

「―ふんっ、及第点ね。ほら、早く今日の分のクエストを受注しましょう。日が暮れたら迷惑だわ」

…なんか私悪役令嬢みたいじゃんっ!!
―まぁ、いいけどさ。
何故か私が悶々としながらギルドのクエスト一覧表示場所へ向かう。

「後衛支援が入ったなら草原のクエストも受けやすくなったのか…。"ラビットドラゴン大量発生"だって!これは!?」
「うーん…Sランクパーティーのクエストだけど……まぁ、このメンバーなら大丈夫か。いいんじゃない?」
「―――ぁ」
「…なに?セイルもこれでいい?」
「―あ、あぁ。それでいい」

…何を呆けているんだ?アイツ。

「…セイル。ルーファはね、そういう子なんだ」
「――あぁ。お前が言った通り、だな」

はぁ?ゼノは人がいないところでセイルに何を話したんだか。

「これでいいなら受けてくる。ちょっと待っていて」

こうして二人を訝りがりながらも、私は"新ウィオラ"初のクエストを受注したのであった。



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