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一章・出会い~七歳編~
3・執事様の新しい家族と乙女ゲーム
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乙女ゲーム世界転生。
そんな三流小説もびっくりなベタ展開がまさか自分の身に起きるとは……。
しかも悲しいかな悪役令嬢というポジションで。
私の前世…ミリの時に一番ハマっていた乙女ゲーム"星宝の歌と運命の恋"…通称“歌恋”。
幼い頃に父を失ってしまい女手一つで育てられた伯爵令嬢ーティアラは、五歳のときに公爵家に連れて行かれる。
一体どうしたのか…と不安になるも、その内容は自分の母と公爵様との結婚話。困っているところを何度も助けられ、それでも頑張る健気さが公爵様に見染められたらしい。
「これでお母さんの苦労も報われる!」と喜ぶティアラだが、ここから白豚悪女ーアリシアの虐めが始まる。
フワフワとした可愛い金髪に桃色の瞳…THE・ヒロインというような可憐な容姿に嫉妬し、母親の愛を知っていることに嫉妬し、義兄と実弟、父に庇われていることに嫉妬する……ゲームの中のアリシアはそんな少女だ。
そして彼女は学園の卒業パーティーにて断罪され、娼館落ちか死刑になる。
「はぁぁぁぁ~~っ。どうしたものかねぇ?」
本来なら『フラグ回避~っ!』とか言って奔走するべきなのだろうが、生憎娼館落ちも死刑も嫌じゃない。
…寧ろ可愛い後輩に裏切られて殺された前世の方が酷い。
「んー…でも折角の二度目の人生、楽しく生きたいしなぁ…」
色々殴り書いたノートに突っ伏して呟く。
「いや!ぐちぐち考えても未来は分からないし!自分の好きなように生きよう!たとえ殺されても後悔はないように!!」
…エドワードの言っていた“脳筋姉さん”は残念なことに事実だったらしい。
**
「ティ~ア~ラ~ちゃん!!」
思い立ったら即行動!をモットーにしているアリシアは早速バラ園にいるティアラへ向かって行った。
「わぁあ!?」
おぅ…可愛い……流石はヒロインだ。
心の中で感心しながらオドオドしているティアラに話しかける。
「ティアラちゃん、公爵邸にはもう慣れた?なにか困ったことがあったら言って!何でも手伝ってあげるよ!!」
自身の腕を叩きながら威張るアリシア。しかしどうしたのか、ティアラの表情は晴れない。
「………アリシア様。あの…私……」
「アリィ」
「え?」
「アリィって呼んで。貴方と私は姉妹になるのだから、アリシア様なんて他人行儀な呼び方はやめて欲しいな」
(っていうか、私が妹になるのだから本来なら『ティアラ姉様』と呼ぶべきなんだろうね…。)
しかしどうしてもゲームのイメージが強く、姉と呼ぶことに抵抗を覚えてしまうアリシアは心の中で苦笑しながらティアラに微笑んだ。
「⁉⁉―あ、あの…アリィ……様、?」
「ううん、アリィだよ。様、は無しでもう一度ッ!」
「あ、アリィ……」
(うわぁあああーーッ!!可愛いぃぃいいいいいッ!)
モジモジと呼びにくそうに呟くティアラに、アリシアの心はノックアウトされていた。
「えへへ!ティアラちゃん!!」
心底嬉しそうに微笑みながら赤髪の少女も続ける。
「あ、アリィにティアラ姉!二人も仲良くなれたんだ」
「エディ!それにセオ兄様も!!」
和やかな空気が流れる中、二人を探していたエドワードとセオドールがやって来た。
「二人もそうみたいね…って!さっきのエディの言い方じゃ、私たちが仲良くなれないみたいじゃないの」
心外だわ!と頬を膨らませるアリシアに、エドワードが呆れた顔で言う。
「いや…だってアリィだよ?最近の行動なんて問題だらけじゃないか」
「?最近の…?」
二人の会話を聞いていたセオドールが心底不思議そうに首を傾げた。
「あぁ、聞いてくださいよ。兄様……」
そう言ってエドワードはここ1ヶ月のアリシアについて語り始める。
急にドレスを捨てて剣を振り始めた事から、いつの間にか屋敷を抜け出して街へ行っていたり、書き置きを残して二日ほどいなくなったの事まで。…まぁ、いなくなった時はルーカスが暴れまわって大変だったというが。
「…そ、それは…また……」
話を聞き終えたセオドールは若干引き気味…いや、ドン引いていた。ニコニコをデフォルトとしている彼としては大変珍しい顔だ。
「アリィはヤンチャなのね……」
対してティアラは、顔を青くして心配そうな顔をした。
「いやいや、姉様。アリィを〝ヤンチャ〟で片付けたら、街を暴れるドラゴンもヤンチャになりますよ…」
「むっ!そんなことないわ!ちょっとしたお遊びじゃない」
「「「いや、流石にそれはないよ」」」
「!?」
出会って間もないというのに揃った声で答える三人。真顔で言われたためか、アリシアは本当に驚いたように瞳を瞬かせる。
「アリィのせいで僕がどれほど苦労しているか…」
「うっ…!」
はぁ、と態とらしく溜息を零すエドワードに流石に罪悪感が目覚めたのか、アリシアは苦い顔で言葉を詰まらせた。
「アリィ…みんなに迷惑かけちゃダメよ?」
「てぃ、ティアラちゃん…!」
聖女のような笑みで言うティアラに、アリシアは感極まったように抱きつく。
(こんな可愛い子を虐めるとかありえない!! 〝歌恋〟のアリシアは何を考えていたのかしら!ティアラちゃんは媚を売るわけでもなく、健気に頑張る子だから結構ファンも多かったのよ!)
「ティアラちゃん!ティアラちゃんは私が守るからね!」
「えっ!?あ、うん…?」
アリシアは重大なことに気が付いたような顔で、ティアラに変な虫がつかない様に守ろうと決意した。
そんな彼女の様子に何かを察知したのだろうエドワードが心底面倒くさそうな顔で言う。
「……脳筋馬鹿アリィが早々にシスコン化した…」
「あはは、仲が良くて何より~★」
「え…、えぇぇぇ…?」
ティアラを守ろうと決意するアリシア。アリシアに呆れるエドワード。ニコニコと笑うセオドール。アリシアに困惑するティアラ。
賑やかで楽しい彼女たちの物語は、まだ始まったばかり……。
そんな三流小説もびっくりなベタ展開がまさか自分の身に起きるとは……。
しかも悲しいかな悪役令嬢というポジションで。
私の前世…ミリの時に一番ハマっていた乙女ゲーム"星宝の歌と運命の恋"…通称“歌恋”。
幼い頃に父を失ってしまい女手一つで育てられた伯爵令嬢ーティアラは、五歳のときに公爵家に連れて行かれる。
一体どうしたのか…と不安になるも、その内容は自分の母と公爵様との結婚話。困っているところを何度も助けられ、それでも頑張る健気さが公爵様に見染められたらしい。
「これでお母さんの苦労も報われる!」と喜ぶティアラだが、ここから白豚悪女ーアリシアの虐めが始まる。
フワフワとした可愛い金髪に桃色の瞳…THE・ヒロインというような可憐な容姿に嫉妬し、母親の愛を知っていることに嫉妬し、義兄と実弟、父に庇われていることに嫉妬する……ゲームの中のアリシアはそんな少女だ。
そして彼女は学園の卒業パーティーにて断罪され、娼館落ちか死刑になる。
「はぁぁぁぁ~~っ。どうしたものかねぇ?」
本来なら『フラグ回避~っ!』とか言って奔走するべきなのだろうが、生憎娼館落ちも死刑も嫌じゃない。
…寧ろ可愛い後輩に裏切られて殺された前世の方が酷い。
「んー…でも折角の二度目の人生、楽しく生きたいしなぁ…」
色々殴り書いたノートに突っ伏して呟く。
「いや!ぐちぐち考えても未来は分からないし!自分の好きなように生きよう!たとえ殺されても後悔はないように!!」
…エドワードの言っていた“脳筋姉さん”は残念なことに事実だったらしい。
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「ティ~ア~ラ~ちゃん!!」
思い立ったら即行動!をモットーにしているアリシアは早速バラ園にいるティアラへ向かって行った。
「わぁあ!?」
おぅ…可愛い……流石はヒロインだ。
心の中で感心しながらオドオドしているティアラに話しかける。
「ティアラちゃん、公爵邸にはもう慣れた?なにか困ったことがあったら言って!何でも手伝ってあげるよ!!」
自身の腕を叩きながら威張るアリシア。しかしどうしたのか、ティアラの表情は晴れない。
「………アリシア様。あの…私……」
「アリィ」
「え?」
「アリィって呼んで。貴方と私は姉妹になるのだから、アリシア様なんて他人行儀な呼び方はやめて欲しいな」
(っていうか、私が妹になるのだから本来なら『ティアラ姉様』と呼ぶべきなんだろうね…。)
しかしどうしてもゲームのイメージが強く、姉と呼ぶことに抵抗を覚えてしまうアリシアは心の中で苦笑しながらティアラに微笑んだ。
「⁉⁉―あ、あの…アリィ……様、?」
「ううん、アリィだよ。様、は無しでもう一度ッ!」
「あ、アリィ……」
(うわぁあああーーッ!!可愛いぃぃいいいいいッ!)
モジモジと呼びにくそうに呟くティアラに、アリシアの心はノックアウトされていた。
「えへへ!ティアラちゃん!!」
心底嬉しそうに微笑みながら赤髪の少女も続ける。
「あ、アリィにティアラ姉!二人も仲良くなれたんだ」
「エディ!それにセオ兄様も!!」
和やかな空気が流れる中、二人を探していたエドワードとセオドールがやって来た。
「二人もそうみたいね…って!さっきのエディの言い方じゃ、私たちが仲良くなれないみたいじゃないの」
心外だわ!と頬を膨らませるアリシアに、エドワードが呆れた顔で言う。
「いや…だってアリィだよ?最近の行動なんて問題だらけじゃないか」
「?最近の…?」
二人の会話を聞いていたセオドールが心底不思議そうに首を傾げた。
「あぁ、聞いてくださいよ。兄様……」
そう言ってエドワードはここ1ヶ月のアリシアについて語り始める。
急にドレスを捨てて剣を振り始めた事から、いつの間にか屋敷を抜け出して街へ行っていたり、書き置きを残して二日ほどいなくなったの事まで。…まぁ、いなくなった時はルーカスが暴れまわって大変だったというが。
「…そ、それは…また……」
話を聞き終えたセオドールは若干引き気味…いや、ドン引いていた。ニコニコをデフォルトとしている彼としては大変珍しい顔だ。
「アリィはヤンチャなのね……」
対してティアラは、顔を青くして心配そうな顔をした。
「いやいや、姉様。アリィを〝ヤンチャ〟で片付けたら、街を暴れるドラゴンもヤンチャになりますよ…」
「むっ!そんなことないわ!ちょっとしたお遊びじゃない」
「「「いや、流石にそれはないよ」」」
「!?」
出会って間もないというのに揃った声で答える三人。真顔で言われたためか、アリシアは本当に驚いたように瞳を瞬かせる。
「アリィのせいで僕がどれほど苦労しているか…」
「うっ…!」
はぁ、と態とらしく溜息を零すエドワードに流石に罪悪感が目覚めたのか、アリシアは苦い顔で言葉を詰まらせた。
「アリィ…みんなに迷惑かけちゃダメよ?」
「てぃ、ティアラちゃん…!」
聖女のような笑みで言うティアラに、アリシアは感極まったように抱きつく。
(こんな可愛い子を虐めるとかありえない!! 〝歌恋〟のアリシアは何を考えていたのかしら!ティアラちゃんは媚を売るわけでもなく、健気に頑張る子だから結構ファンも多かったのよ!)
「ティアラちゃん!ティアラちゃんは私が守るからね!」
「えっ!?あ、うん…?」
アリシアは重大なことに気が付いたような顔で、ティアラに変な虫がつかない様に守ろうと決意した。
そんな彼女の様子に何かを察知したのだろうエドワードが心底面倒くさそうな顔で言う。
「……脳筋馬鹿アリィが早々にシスコン化した…」
「あはは、仲が良くて何より~★」
「え…、えぇぇぇ…?」
ティアラを守ろうと決意するアリシア。アリシアに呆れるエドワード。ニコニコと笑うセオドール。アリシアに困惑するティアラ。
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