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第1章 亡国の魔法騎士
精霊の森へ
しおりを挟む「エグゼ君が、シスカの町にはいりましたか・・・」
玉座にて、そっとつぶやく。
「王都から二年かけて、ようやく最南西まで辿り着きましたか・・・。もう少し早く着くと思っていましたが・・・」
思ったよりも、剣士としての腕はよくなかったようだ。
それよりも、気になるあの男。
他の大陸から来た、ということは解っている。そして、短期間で、「メリクリウス」のトップに立ったということも。
確かな戦闘力と、カリスマがあるだろうことは、安易に想像できた。
しかし、まだ、底を見せていない。
どこまで強いのだろうか。この男は。
「ちょうどいい機会かも知れないですね。ためしてみますか。火之本たたらが、なにか感づいたようですが、問題はないでしょう。それに・・・」
口元に思わず、笑みがこぼれる。
「今一度、エグゼ君に絶望を味わってもらう、いいチャンスです。ねぇ、愛しの姫君よ」
玉座から数メートル離れた、特別な台座。
その台座では今まさに姫の胎内から、魔物の仔が生れ落ちるところであった。
「また、力の強い仔が、うまれましたね・・・」
造魔と、魔力の高い人間の間に生まれた、仔。
さらに強力な力を宿し生まれてくる。
そして、その仔がさらに魔力の強い人間と交わる。
そうした、禁忌の関係から際限なく強い造魔が生まれていく。
「アレから、2年経ちましたよ、エグゼ君」
初期の造魔から、どれほど進化したのか。早く、実戦で試したくて仕方がない。
「早く、強くなってください。エグゼ君そして・・・」
「私の造魔が最強だと、証明させなさい」
「んで、どこに行くんだ?」
早朝。まだ夜も開けきらぬ時間帯に、エグゼとソウマは装備を整えて外に出ていた。
「『精霊の寝床』と呼ばれる、精霊たちの聖地にいくんだ」
「聖地・・・。そんなところに、俺も行っていいのか?」
「と言っても、その聖地には、僕しか入れないんだ」
「そうなのか?」
「そう。本来なら、精霊しか入れない聖地。なぜか僕だけは、精霊に好かれているせいか、入れたんだけどね」
「エグゼだけが、入れた・・・。すごいな。精霊に、好かれているんだな」
「魔力が使えなくなった今では、精霊たちの声も聞けないけどね・・・。でも、確かにいるんだって。精霊たちは、いなくなることはないみたいだ」
「ほう。じゃあ、もっとも精霊に近いその聖地に行けば、もしかしたら、なにかあるかもな!」
「うん。少し、希望が見えてきたよ」
そういって、エグゼがやさしげに微笑む。
「じゃあ、俺は、その聖地の入り口まで、護衛すればいいんだな」
「あぁ、頼むよ。山の頂上に向かって、森に入って。2日くらいでつけるはずだ」
「了解!じゃあ、いくか!」
昼なお暗い森の中。
朝露に濡れた緑の香りが、鼻腔をくすぐる。
聞こえるのは二人の足音と、森に住んでいる、鳥の鳴き声や、獣の遠吠えだ。森全体が、普段立ち入らないよそ者に警戒をしているかのようだ。
「あまり近くはないが、人の気配がするな」
不意に、ソウマがつぶやいた。森に入ってから、数刻が過ぎたころだった。
「本当か!?僕には、何も感じられないけど・・・」
あたりを見回し、耳をそばだててみるが、何も解らない。
「こちらには気づいてないな。ただ、おなじ様に山頂を目指しているみたいだが、どうも様子がおかしいな」
「様子がおかしいというのは?」
「山頂を目指したり、逆に降りたり、行ったり来たりを繰り返している感じだ」
ふと、たたらの言葉が頭をよぎる。
「それはおそらく、ミハエルの手下だ。この町を征服し、精霊石を手に入れようとしているらしい。そして、そいつらも『精霊の寝床』に向かっているが、森に阻まれているんだろう」
「なるほど。まぁ、たいしたやつらじゃあない。出会っても、問題にはならないさ」
「とはいえ、無駄な戦闘は避けたい。・・・精霊の住処を、そんな奴等の血で汚したくはないからな」
「確かに」
そして二人は再び、頂上を目指して歩き始めた。
ふと、ソウマがコンパスを見る。
「使い物にならない、か」
当然のようにつぶやいて、コンパスをしまう。
ソウマは、先ほどから自分の感覚が狂っているのを感じていた。
方向感覚、索敵能力、知覚、触覚。
普段ならもう少し早く、敵の動向も把握できたであろう。
やはり、特殊な力がこの森にはある様だ。
逆に。
逆に、エグゼは、迷いなく森を突き進んでいる。
まるで、帰りなれた我が家に着いたように。
日が高くなる頃。
森の様子が一変した。
見た目が、ではない。
雰囲気、空気。目に見えない物が、確かに違っていた。
しかしそれは不気味な物や不快感ではなく、むしろ安心にもにた気持ちだった。
「ここは…?」
思わず、ソウマがつぶやく。
「僕たち人間の領域から、抜け出したんだ。少し、『精霊の寝床』に近づいた証だね。ここには」
エグゼが言い終わるのが早いか、何かが素早くエグゼに襲いかかる。
「エグゼだぁ?!最近全然こないから、心配したよぉ?」
エグゼの肩に、なにかいる。
「ティアラ、久しぶり。なかなか来られなくてごめんね」
人差し指を差し出すと嬉しそうに目を閉じ、頬ずりをする。
大きさ的には、エグゼの掌にスッポリと収まってしまう、小さな少女。
「妖精か…?」
一変した空気とともに感じていた、複数の気配。
敵意はなく、好奇心や少しの警戒感を帯びた無数の視線を、ソウマはずっと感じていた。
「そう、ここは妖精の住処なんだ。妖精たちが、『精霊の寝床』を守ってる」
「えっへん!守ってるのだっ」
ティアラが、踏ん反り返りながら言う。
「でも、魔法が使えなくなってから、大変なんだよ?!意識魔法なら、使えるけど…」
「意識、魔法?」
ソウマは、初めて聞く単語に首を傾げた。
「意識魔法、というのは、言わば強い催眠だよ。特殊な魔法陣やシンボル、音波なんかを、仕掛けて、見ただけ、聞いただけで人を惑わす魔法のことさ。さっきの森には、その意識魔法と呼ばれるものが、多数設置してあったんだ」
「私たち妖精は、そういうのを見つからないように設置するのが、すっごい得意なんだよ!」
「あの森の違和感は、そのためだったのか…。どうも感覚の中に、何かが割り込んで来るような感じがしたんだ」
「その違和感がわかるだけ、ソウマはすごいと思うよ」
「でも、エグゼには、意識魔法はまったく意味がないんだよ!ひっかからないの!人間なのに、すごいよね?」
「昔は、魔力が高いからだとおもっていたけど、魔法が封じられてる今でも、効かないとなると、体質的な問題なのかな?」
なぜ意識魔法が効かないのか。
妖精や精霊たち、エグゼ自身にもよくわかっていなかった。
普通の人間が入り込むと、違和感にも気づかない。それどころか、目的地に着かないことに疑問さえも持たない。
意識することも、意識できず、人の無意識下に働きかける魔法。
「私たちと、せーれーさんたちの住処を、変なおじさんに荒らされたくないもんね!」
「ははは!変なおじさんか!確かにそうだ!」
ミハエルの手下の兵士が、この森を荒らしているのだ。その程度ではすまないはずだか、呑気な妖精たちにとっては、変なおじさん扱いで済んでしまうらしい。
「俺は、エグゼと一緒にはいっちまったけど、お邪魔していいのかい?」
ソウマは、ティアラに視線を合わすよう、屈み込みながら、優しげな笑みで話しかけた。
「うん!大丈夫!エグゼのお友だちでしょ?エグゼが、変なおじさん連れてくるわけないもん!」
ティアラは、小さい羽を振るわせると、空に飛び立ち、ソウマの頭の上にとまる。
「エグゼと同じ、優しくて強い匂いがするっ!」
そう言って、ソウマの意思を表すかのように力ずよく、しなやかな髪にダイブした。
「ありがとう。俺は、エグゼの友達の、ソウマだ。ソウマ・ブラッドレイ」
「そーまだね!ティアラはね、ティアラだよ」
「おし、よろしくな、ティアラ!」
「おー!よろしくー!エグゼと、そーまはこれから、『精霊の寝床』に行くんだよね?」
ティアラは、ソウマの頭の上が気に入ったのか、そのまま座り込んでしまった。ティアラを連れた一行は、歩きながら話す。
「そうなんだ。魔法が使えなくなってから、精霊たちとも、話ができなくなっちゃったから、一番近いここなら、なにかわかるかと思ったんだ。ティアラは、なにかわかるかい?」
「んー!」
精一杯難しい顔をしながら、ティアラは、考え込む。今にも頭から、煙が吹き出そうだ。
「あのね、怖い何か、北の方にいるの!」
「怖い何か?」
「うん!精霊たちも、その何かが怖くて、出てこられないの。あ!でも、でも、エグゼ来たら、みんな喜ぶよ!今のエグゼには、見えないかも、だけど」
妖精であるティアラや、精霊は、どちらかというと、自然に近い魔物だ。この大地に起こった異変を、エグゼ以上にその身で感じているのだろう。
「この先には、精霊たちはいるのかな?」
「普段はいないけど、エグゼが行って、声をかけたら、きっと返してくれるよ!」
期待と不安。
会えるかもしれない。
話せるかもしれない。
せめて、存在が感じられるかもしれない。
ただ。
会えなかった時、
話せなかったとき。
存在すら、感じられなかった時。
複雑な気持ちのまま、エグゼたちは、旅のお供にティアラを加えて、『精霊の寝所』を目指すのだった。
精霊たちは普段、この世界とは少しずれた世界にいる。目に見えず、身に触れず、でも、同じ姿形の世界。
そして精霊たちを呼び出す時は、魔力を使いその異世界への扉を開くのだ。
しかし、ごく稀に精霊界と人間界の境目が薄い、もしくは全くない場所がある。それが、聖域、と呼ばれる場所だ。
その一つが、この『精霊の寝所』である。
精霊に認められたい者。
精霊に好かれている者。
精霊に呼ばれて来る者。
この聖域には、精霊に縁がある物しか、訪れることができない。妖精の意識魔法を通り抜けたとしてその先には、本当に精霊と相性のいい者しか入ることはできないのだ。
そこに、レベルや、魔力の強弱、職業や身分は関係ない。
日、月、火、水、木、金、土の7大精霊がいる。
そして、この『精霊の寝所』には、安息の日である、『日(にち)』を司る大精霊がいるのだ。
大いなる太陽の恵みと、深遠なる夜の安らぎを司り、生きとし生けるものに、安らぎをもたらし、回復を促す。
そして、質の高い精霊石が悪用されぬよう、管理をしているのだ。
本当に世界の平和のために、精霊石を使うことのできる勇者が来る日まで…。
ティアラを仲間にしてから、一つの夜を越えた。
三人が歩き続けている間に森の様子は、目に見えて一変した。
外界では、見たこともないような草木、花、果実。
出会ったこともないような生き物たち。
すべての生物が、争うことなく、平穏に暮らし続けている。
「ここは、平和だな」
ポツリ、とソウマが呟いた。
まるで外での戦乱が嘘かのように、ここには平和があった。
懐かしき、日々。
「ここはもう、半分以上精霊の領域だからね。、生態系なんかは全く違うけど、このエルミナ大陸は全体的にこんな雰囲気だったよ。あの夜までは…」
決して忘れることのできないあの夜。
その日、エグゼは一回死んでいるのだ。人類の守護神と呼ばれた、エグゼは。
今ここにいるのは、いざという時に大切なものなど、何一つ守れなかった、抜け殻でしかない。
「エグゼ…っ?苦しいよ!」
ティアラが胸を押さえながら、エグゼに訴えかける。
純粋な妖精は、人の心の奥底にある強い想いに、感応することがある。
まるで、地獄の業火に身をやつすような、その心がティアラには伝わってしまったのだ。
「ご、ごめん!」
慌てて、心を閉ざす。
とりあえず、今はこのことは封印しておこう。
「妖精は、心が読めるのか?」
とソウマが、問いかけた。
「読めるのとは、違うかな?何考えてるかはわからないしね。
なんて言うんだろ?。強い気持ちの波が、届くんだよ!ドバーッて!
私たちが知りたいと思って、使える能力じゃないんだけどね?」
ティアラは身振り手振りで、自分のチカラについて説明する。
しかし、ソウマの頭の上にいる以上、説明している相手であるソウマには、そのジェスチャーは、見えていなかった。
それを見ることができた隣のエグゼは、クスリと笑いながら歩をすすめる。
ティアラの止まることない話を聞きながら、三人は頂上に向かう。
旅は順調で、野生動物に襲われることもなければ、もちろん、人間と戦うこともない。
しかし。
「いてっ!」
不意に、ソウマが立ち止まる。
まるで、なにかにぶつかったかのような、急な止まり方だった。
「どうしたんだ?ソウマ」
エグゼは、何事もなかったように先を歩いていた。
「境い目だね」
とティアラ。
どうやらここが、妖精の住処から、精霊の聖域への入り口らしい。
見た目で明確な違いはないが、ソウマは、そこから先に進めないでいた。
「見えない壁のようなものに、阻まれてるんだ」
それは、ティアラも同じらしい。
「ここから先は、エグゼ1人だね!頑張って!」
「そうか、ここが入り口だっけ。よし、行ってくるよ!ちょっと待ってて!」
踵を返し、2人に背を向けると、エグゼは『精霊の寝所』の奥へと向かっていった。
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