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第4章 俺のライバル
54 暗雲
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前回があんな風だったから、その後の関係がどうなることかと危ぶまれたが……それは杞憂に終わった。
あの日は、喧嘩別れのようになるのが怖くて、朝、別れ際に思い切ってキスを求めた。大輝は優しく応じた。今までで一番かもしれないぐらいに優しく。これが最後になるかもしれないという悦子の不安をますます煽るほどに。
悦子はその一週間後にメッセージを送った。疲れていたんだろうに呼んでくれてありがとうの一言。また余計なことを言ってしまった気がするという反省。そして、大輝のことをもっと知りたいと思うあまりつい首を突っ込みすぎてしまうこと。大輝に幸せになってほしくてついお説教まがいのことを言ってしまうこと。書いては消し、消しては書いて、なるべく重たい雰囲気にならないようまとめたつもりだ。返信はなかったが、その数日後に電話がきた。
「どう? 元気?」
そう尋ねる大輝の声は、先日の自称不機嫌と大差ない印象だった。
「うん」
「あのさ、あれから生理あった?」
あったっけ、と考えるまでもなかった。
「あ、実は今、最中で……」
「あ、そう」
大輝はそこまで心配していた風でもないが、着けていても中では出さない主義という噂は、悦子の前でも実証されてきた。しかし先日、大輝がゴム越しとはいえ珍しく悦子の中で果てたことは、悦子にも察しがついていた。
「ところで、明日は? 暇?」
「あ……明日、っていっても……」
昨日始まったところだから、明日にはまだ終わらない。
「もしかして、結構重い?」
「あ、ううん、痛いとか辛いとかはないんだけど……」
と言い淀む。しかし相手は大輝だ。皆まで言うまでもなかった。
「それだったらまあ、いろいろやりようはあるよ。君が嫌じゃなければ」
どんなやりようがあるのか悦子にはわからないが、いずれにしても出血ウェルカムの申し出を断る手はない。最悪その手段に抵抗があれば、その時に嫌だと言っても遅くはないのが大輝流だ。悦子は承諾し、翌日大輝の家を訪れた。
果たして、大輝は浴室で悦子を立たせたまま器用に抱き、悦子はびしょ濡れの大輝の容姿と、普段とは趣の違った愛の物語を堪能した。
バスローブ姿でベッドに入ると、大輝は入念にマッサージを施してくれた。
「なんか、あれだな。君は……癒やし系だな」
悦子は夢うつつに答える。
「どこが? むしろ癒やされてばっかりなのに……」
大輝は悦子の顔中にキスして回っていたが、そのうち飽き足らなくなったのか、悦子のバスローブを勝手にペロンと剥き、乳房を撫で回し始めた。
「寝るよ、もう……」
「いいよ、寝てて」
「そんな触られてたら寝れないでしょ……」
と笑いながら、十分眠れそうな気配を感じていた。ずっとそのまま触れていてほしかった。じきに、一段と温かい一点が先端に加わった。
(ダメダメ、反応しちゃ。もう寝るんだから……)
しかし、大輝も決して火を点けようとしている風ではない。舌と唇をただまったりと這わせ、悦子の乳首とその周りを味わっていた。
「楽しい?」
「ん」
「おいしい?」
「ん」
「ママの味?」
その瞬間、大輝がはっと身を起こした。感電でもしたかとこちらが慌てるほど、目に見えて鋭い反応だった。その息が悦子の濡れた乳首を冷やした。大輝は一瞬目を見開き、手で口を押さえると、堪えるようにぎゅっと目を閉じた。
「えっ、ちょっ、何……吐きそう?」
背中に手を当てると、大輝はそれを逃れて立ち上がり、まるで駆け込むように書斎に入ってしまった。本来の間取りでは寝室にあたるこの部屋。大輝が仕事部屋として使い、女が寝ている間に一人夜を過ごす場所。その扉の鍵が掛かる音を、悦子は初めて耳にした。
眠気は吹き飛んでいた。大輝に何をしてしまったのだろう。冗談ですらない、何気ない相槌のつもりだった。しかし、何らかの事情でママのいない人には酷だったのだろうか。実家がないと言った大輝の冷めた眼差しが思い出され、胸が痛んだ。
(でも、なにも嘔吐かなくたって……)
あの日は、喧嘩別れのようになるのが怖くて、朝、別れ際に思い切ってキスを求めた。大輝は優しく応じた。今までで一番かもしれないぐらいに優しく。これが最後になるかもしれないという悦子の不安をますます煽るほどに。
悦子はその一週間後にメッセージを送った。疲れていたんだろうに呼んでくれてありがとうの一言。また余計なことを言ってしまった気がするという反省。そして、大輝のことをもっと知りたいと思うあまりつい首を突っ込みすぎてしまうこと。大輝に幸せになってほしくてついお説教まがいのことを言ってしまうこと。書いては消し、消しては書いて、なるべく重たい雰囲気にならないようまとめたつもりだ。返信はなかったが、その数日後に電話がきた。
「どう? 元気?」
そう尋ねる大輝の声は、先日の自称不機嫌と大差ない印象だった。
「うん」
「あのさ、あれから生理あった?」
あったっけ、と考えるまでもなかった。
「あ、実は今、最中で……」
「あ、そう」
大輝はそこまで心配していた風でもないが、着けていても中では出さない主義という噂は、悦子の前でも実証されてきた。しかし先日、大輝がゴム越しとはいえ珍しく悦子の中で果てたことは、悦子にも察しがついていた。
「ところで、明日は? 暇?」
「あ……明日、っていっても……」
昨日始まったところだから、明日にはまだ終わらない。
「もしかして、結構重い?」
「あ、ううん、痛いとか辛いとかはないんだけど……」
と言い淀む。しかし相手は大輝だ。皆まで言うまでもなかった。
「それだったらまあ、いろいろやりようはあるよ。君が嫌じゃなければ」
どんなやりようがあるのか悦子にはわからないが、いずれにしても出血ウェルカムの申し出を断る手はない。最悪その手段に抵抗があれば、その時に嫌だと言っても遅くはないのが大輝流だ。悦子は承諾し、翌日大輝の家を訪れた。
果たして、大輝は浴室で悦子を立たせたまま器用に抱き、悦子はびしょ濡れの大輝の容姿と、普段とは趣の違った愛の物語を堪能した。
バスローブ姿でベッドに入ると、大輝は入念にマッサージを施してくれた。
「なんか、あれだな。君は……癒やし系だな」
悦子は夢うつつに答える。
「どこが? むしろ癒やされてばっかりなのに……」
大輝は悦子の顔中にキスして回っていたが、そのうち飽き足らなくなったのか、悦子のバスローブを勝手にペロンと剥き、乳房を撫で回し始めた。
「寝るよ、もう……」
「いいよ、寝てて」
「そんな触られてたら寝れないでしょ……」
と笑いながら、十分眠れそうな気配を感じていた。ずっとそのまま触れていてほしかった。じきに、一段と温かい一点が先端に加わった。
(ダメダメ、反応しちゃ。もう寝るんだから……)
しかし、大輝も決して火を点けようとしている風ではない。舌と唇をただまったりと這わせ、悦子の乳首とその周りを味わっていた。
「楽しい?」
「ん」
「おいしい?」
「ん」
「ママの味?」
その瞬間、大輝がはっと身を起こした。感電でもしたかとこちらが慌てるほど、目に見えて鋭い反応だった。その息が悦子の濡れた乳首を冷やした。大輝は一瞬目を見開き、手で口を押さえると、堪えるようにぎゅっと目を閉じた。
「えっ、ちょっ、何……吐きそう?」
背中に手を当てると、大輝はそれを逃れて立ち上がり、まるで駆け込むように書斎に入ってしまった。本来の間取りでは寝室にあたるこの部屋。大輝が仕事部屋として使い、女が寝ている間に一人夜を過ごす場所。その扉の鍵が掛かる音を、悦子は初めて耳にした。
眠気は吹き飛んでいた。大輝に何をしてしまったのだろう。冗談ですらない、何気ない相槌のつもりだった。しかし、何らかの事情でママのいない人には酷だったのだろうか。実家がないと言った大輝の冷めた眼差しが思い出され、胸が痛んだ。
(でも、なにも嘔吐かなくたって……)
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