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第1章 弟子入り
24 就寝
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再び緩やかに動き出した新藤の手元を見つめながら、一希は続けた。
「探査の時におっしゃいましたよね。やりがいは特に考えてない、基準は常に安全と報酬だって。でも、オルダの解体は爆破よりも確実に危険な処理ですから……入ってくる金額がそれに見合うと感じてらっしゃるってことですか? それとも、お国のお財布のため、ですか?」
新藤はしばらく仕分けを続け、やがて一つの答えを出した。
「能力は使わなければ衰える」
一希はその言葉を噛み締めつつ続きを待ったが、返事はそれっきりだった。
新藤は黙々と部品の山を崩していく。いつもの流れなのだろう。迷うことを知らぬ両手が、まるで機械のように淡々と正確に作業を続ける。その手元はいつまで見ていても飽きることがなかった。
そう、断じて飽きたわけではないのだが、いつしか一希の瞼は重くなってきた。朝が早かったから、と心の中で咄嗟に言い訳するが、それは新藤だって同じだ。
「あの、いつも大体何時頃お休みに……」
時刻は十一時を回っていた。新藤は手を休めずに声だけを返した。
「いつもなんて決まりはない。その時々だ」
じゃあ今日は……と聞きかけたが、寸前で自制する。どうせうるさがられるだけだ。
外殻が右、信管が左、ネジが手前、起爆心棒が……。
次々と部品を振り分ける新藤の手を凝視しているうちに、あやうく船を漕ぎそうになる。と思ったら、どうやらもう漕いでいたらしい。新藤が手を止めてこちらを睨む。
「あ、す、すみません。ちょっとボーッとしちゃって……」
「何の真似だ。我慢大会か?」
「すみません、本当に」
「すみませんじゃない。何の真似だと聞いてるんだ」
「いえ、何でもありません。もう大丈夫です」
「はったりはやめろ。眠いならなぜ寝ない?」
それは、新藤の手を煩わせておいて自分が先に寝るわけにはいかないからに決まっている。しかし、新藤は一希が遠慮しているとは思いもよらないらしく、本気で困惑していた。
「あの部屋に何か足りないもんでもあるのか? 布団と枕とカバーはやったよな?」
「あ、はい、大丈夫です。全然足りてます。あの、お邪魔になってもあれなので、お言葉に甘えて今日はこれで失礼します。ありがとうございました。お休みなさい」
ぺこりと頭を下げて退散する一希の目には、首をかしげて作業に戻る新藤が映っていた。
一希は寝る前にせめて何かできることはないかと考えた末、新藤が夜食に食べる可能性を考えて豚汁をもう一度温めてやり、鍋のまま置いておいた。
ようやく気が済んで床に就いた時には、夜這いの可能性を心配することなどすっかり忘れていた。
「探査の時におっしゃいましたよね。やりがいは特に考えてない、基準は常に安全と報酬だって。でも、オルダの解体は爆破よりも確実に危険な処理ですから……入ってくる金額がそれに見合うと感じてらっしゃるってことですか? それとも、お国のお財布のため、ですか?」
新藤はしばらく仕分けを続け、やがて一つの答えを出した。
「能力は使わなければ衰える」
一希はその言葉を噛み締めつつ続きを待ったが、返事はそれっきりだった。
新藤は黙々と部品の山を崩していく。いつもの流れなのだろう。迷うことを知らぬ両手が、まるで機械のように淡々と正確に作業を続ける。その手元はいつまで見ていても飽きることがなかった。
そう、断じて飽きたわけではないのだが、いつしか一希の瞼は重くなってきた。朝が早かったから、と心の中で咄嗟に言い訳するが、それは新藤だって同じだ。
「あの、いつも大体何時頃お休みに……」
時刻は十一時を回っていた。新藤は手を休めずに声だけを返した。
「いつもなんて決まりはない。その時々だ」
じゃあ今日は……と聞きかけたが、寸前で自制する。どうせうるさがられるだけだ。
外殻が右、信管が左、ネジが手前、起爆心棒が……。
次々と部品を振り分ける新藤の手を凝視しているうちに、あやうく船を漕ぎそうになる。と思ったら、どうやらもう漕いでいたらしい。新藤が手を止めてこちらを睨む。
「あ、す、すみません。ちょっとボーッとしちゃって……」
「何の真似だ。我慢大会か?」
「すみません、本当に」
「すみませんじゃない。何の真似だと聞いてるんだ」
「いえ、何でもありません。もう大丈夫です」
「はったりはやめろ。眠いならなぜ寝ない?」
それは、新藤の手を煩わせておいて自分が先に寝るわけにはいかないからに決まっている。しかし、新藤は一希が遠慮しているとは思いもよらないらしく、本気で困惑していた。
「あの部屋に何か足りないもんでもあるのか? 布団と枕とカバーはやったよな?」
「あ、はい、大丈夫です。全然足りてます。あの、お邪魔になってもあれなので、お言葉に甘えて今日はこれで失礼します。ありがとうございました。お休みなさい」
ぺこりと頭を下げて退散する一希の目には、首をかしげて作業に戻る新藤が映っていた。
一希は寝る前にせめて何かできることはないかと考えた末、新藤が夜食に食べる可能性を考えて豚汁をもう一度温めてやり、鍋のまま置いておいた。
ようやく気が済んで床に就いた時には、夜這いの可能性を心配することなどすっかり忘れていた。
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