爆弾拾いがついた嘘

生津直

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第1章 弟子入り

23 技術の継承

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 とはいえ、可能になってから実際に採用されるまでの道のりは平坦ではなかった。軍部や多くの国民が、スム族の技術を再利用するという点に抵抗を示したのだ。

 少数民族であるスムは工業、科学、医療などあらゆる分野で圧倒的な技術力を誇る。しかし、法律の限度すれすれのところを攻めるようにして高度な発明に取り組む彼らの貪欲さを、ワカの人々は良く思っていない。

 兵器に使われていた技術なら再利用先も兵器になるだろうという誤解も障壁になった。隆之介は各所に精力的に働きかけ、国が輸出による歳入増に魅力を見出していることもうまく利用しながら、地道に賛同者を増やしていった。

 一方、軍は軍で、また別の懸念を抱いた。爆弾の解体は爆破処理と比べ作業員が負うリスクが桁違いに高いため、簡単にうんと言えるものではなかったのだ。しかし隆之介はそれをむしろチャンスと捉える。

 内戦後の復興にひと区切りがつき、陸軍の海外派兵が盛んになると、隆之介は軍の上層部に交渉を持ちかけた。より多くの人員を国外任務にくためにも、ノウハウが確立されていて委託しやすく、もともと大学研究者らの技術協力を得てもいる不発弾処理の分野を民間にゆだねてはどうかと。そのかたわら自ら旗を振り、国家資格制度も確立。

 隆之介の取り組みの甲斐あって、陸軍は最終的に不発弾の探査や処理からほぼ手を引く形となった。こうして、一般人が見付けて警察に通報したものに関しても軍から民間業者に処理要請がかかる、という現在の様式ができ上がった。

 ひとたび商売として成立すると、戦後の不況で機械整備などの職にあぶれた者たちが、能力を生かす道として不発弾処理業を選ぶようになる。その後、反戦派の若者たちの間でも一躍人気職業となり、養成学校が相次いで開校された。

「まあ、解体したくても軍にいちいち施設を借りるんじゃ大変ですもんね」

「それもあるし、爆発の可能性が十分残ってる爆弾をいつまでも触っていたいかと聞かれれば、一刻も早く手放したいってのが普通の感覚だ。他に手段がないなら別だが、現場で爆破しちまえば事は簡単だろ」

「確かに……」

「それをわざわざ大仰おおぎょうな照射装置を持参して鎮静化して、一つひとつ丁寧に掘り出して、しかも細心の注意を払いながらバラバラにする。客観的に見れば物好きもいいとこだ。解体に成功すれば部品はそれなりにいい収入源にはなるが、危険の程度に見合うと思うかどうかは本人次第だし、実際、数こなしてなんぼの世界だからな」

 つまり、数をこなせるだけのスピードで処理する腕がなければ割に合わないことになる。

「先生は、なぜ解体を?」

 新藤の手が止まる。

「なぜ、か……」
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