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地獄の黒狼

41体目 漆黒の烈狼5

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「んぅっ……!」

 楽は、挿れさせたペニスの大きさに震える。圧迫感と確かに伝わる快楽。ただ、それ以上何かがあるわけではない。

(大きいな……けど、奈津美があんなに乱れ狂うほどでは……)

 油断こそしないが、疑問は当然浮かぶ。

 その疑問は次の瞬間に破壊された。
 亀頭が子宮口を離れ、再度突き入れられた時に擦られた場所は、紛れもなくGスポットである。二度目も、三度目も、それ以降もペニスの先端はGスポットを刺激し続けたのだ。
 驚きと快感に身体が跳ね、甘い声が喉を震わせた。

 腹部全体が性感帯になってしまったような快感が楽の身体を突き上げる。透明な愛液が染み出てペニスを伝う。
 太鼓を叩くかのようにリズムよく打ち込まれる刺激の波動が腹奥に響いた。

「あっ!? んんっ……くううっ! ああああ!」

(なっ、なるほどっ! これは確かに辛い……!)

 テクニックと体力を、高度な次元で併せ持ったヘルハウンドの性技は楽に対しても圧倒的。重い一撃を何度も押し込んでくる。
 赤熱した快感が一点に集中して執拗に責めてくる。抗おうと締めてもズラしても無駄。
 全力を持って鉄板のように張り巡らせた固い意志も、まるで雲のように抵抗なく突き破られ意味を持たない。
 耐える事に関しては苦手な楽は、即座に性感を高められてしまい……。

「うっ、嘘……イクっ! ああっ! ダメだ! 堪えないと……っ! ィ……っくうううううううう!」

 肉の螺旋が痙攣を帯びながら剛直を締め上げる。チョコレートムースのような美乳が大きく揺れる。
 挿入から30秒足らずで絶頂を迎え、早くも勝ち目が遠くなってしまう。
 パッと光の粒が視界で舞い、涙で世界が歪む。快濁に理性を蝕まれる。強烈な熱はまだ送り込まれ続けている。
 このまま溺れてしまいたいという情動が脳裏に張り付く。それでも、楽は気を保ち反撃に移った。

「……っ、っ、ぐっ!?」

 突き上げるヘルハウンドの動きが一瞬鈍くなる。楽が絶頂でただでさえ締まっている膣を更に、思い切り締めたのだ。
 亀頭を無数の肉ヒダがなぞり上げ、ヘルハウンドの喉から苦しげな嬌声が上がる。

(どうだっ……!)

 だが次の一振で攻勢は破壊され、主導権はヘルハウンドにあるまま責めが再開されてしまう。
 締めたせいでより形を意識させられてしまう。子宮を圧し潰さんばかりの巨大な逸物、ごつごつと浮き上がった血管、十分に反り上がったカリ。
 女をえぐり発情させるために形成されたそれが弱点めがけて突き込まれる。

「あっ!? くあっ! ああああっっっ! はああああぁぁぁぁぁぁんっっっっ!」

「くっ……」

 主導権はヘルハウンドにあった。しかし楽が締め付けを止めないままピストン運動に移ってしまったため、一方的とは言えない状況にある。
 突く度に絡みうねる膣肉が、耐久力を削り取っていく。ペニス全体を巻いたシルクが円滑に舐める。
 痙攣が呼応し合い、共振の末に我慢の壁が決壊した。

「あっ! あっ! ああっ! イクっ! うああああああぁぁぁぁーーーーー!」

「う……あっ!」

「あひっ!? ひぃあああああっっっ! またイッ……イッくううううぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!」

 子宮を押し上げる程の威力で精液が膣内に叩きつけられ、ポルチオ性感により楽は連続絶頂で体力を削られてしまう。それでも、ヘルハウンドに初の強制絶頂を強いた事実は大きい。

 今度はヘルハウンドの責めが緩んだ一瞬を狙い、こちらから腰を振り下ろしていく。弱点に当てることも出来ずただ大きいだけの陰茎を、グツグツに熱くなった肉のヒダが飲み込んだ。
 二つの絡まった肢体はチュロスのよう。ズリズリと熱い皮を擦って喰らい合う。

「んっ! はぁっ! ふふ……このまま責めたら……君は可愛い鳴き声を聞かせてくれるかな……?」

「ぐっ……ああっ! この……」

「ああっ! んっ、ふっ……んううううっ!」

 楽が攻勢に出られたのはほんの十秒ほど。持ち直したヘルハウンドが弱点に当たるよう腰をズラすと、優位は消え去った。
 相も変わらず、ゾクゾクとした快感が背筋を駆け上がっていく。息ができない。頭が上手く回らない。雲の上にいるように浮かんだ意識に身体が追い付かない。
 音を立てて愛液が噴出する。ひび割れた地面に染み込んでいく。口は空きっぱなしで赤い舌が見え隠れする。

 それでも諦めずに腰を打ち付け続ける。一擦り事に膣が痙攣する。それでも。

「うあああああぁぁぁ! ああぁぁぁあああーーーーっっ!」

「ぐっ……ううう!」

 楽は苦戦しつつも、着実にヘルハウンドの体力を削ぎ落とす事には成功していた。
 身体の奥で燃え上がる快楽に喘ぎながらも膣内を締め上げ、今もまた射精へと導いている。
 それでも責めを続けようとするヘルハウンドだったが、次第に動きは鈍くなり、根負けして休憩に入った。

 楽も肩で息をしながら一安心する。

(た、助かった……あのまま続けられていたら、持たないところだった。でも、先に回復されたらその時こそ終わりだ。仕掛けるなら、今しかない)

 覚悟を決めた楽は、一か八かの博打に打って出る。

「はぁ……はぁ……ふふ、動きが止まったね。そんなに僕のナカは気持ちよかったかい?」

「黙れ」

「そう恥ずかしがらなくていいさ。もっと射精してくれて構わないよ……もっと気持ちよくなって……ね」

 メルティワードと共に膣内を締めると、ヘルハウンドのペニスは苦しそうに跳ねる。
 ビクビクと押し叩く感触と共に熱い飛沫が迸った。

「うっ……ぐ……で、出るっ!」

 幾度となく子宮内に注ぎ込まれた精子が、またその量を増やし楽の腹部を内側から押す。グルグルと腹の中で出ていかないまま圧迫し続ける熱い白濁に、少しの冷や汗が褐色の肌を濡らす。

「んっ……ふふ、ほら見てよ。お腹が少し膨らんでる。僕を孕ませる気かい?」

 少し調子に乗りすぎたか……次の言葉を思い直した時には遅く、ヘルハウンドは激昴していた。

「舐めるなよ人間……ふんっ!」

 バヂュッ、と破裂したような水音を立て、ふたなりペニスが膣壁を抉る。

「……ぁ……ひぃいいいああああああああ!」

 雄々しい突きが楽を持ち上げ、跳ねさせる。火照った身体は少しも耐えられずに絶頂し続ける。
 グツグツに溶け、ヌメる蜜壷を壊さんばかりに進撃する巨根が、体力と意識を奪っていく。乳房の尖りが熱く赤く硬さを増す。陰核に押し付けられる陰毛は鞭のように快感を打ち込んでくる。
 一つも抵抗も許してくれない、新緑の草原を強引に焼き付くさんばかりの快楽の炎が複雑に渦を巻いて楽を飲み込んでいく。

「ああああああああダメダメダメダメ! うぁああああああああっっっっ!」

 秘部からは一突き毎に精液と愛液の入り交じった液体が溢れ、足元を汚す。胸を指で同時に刺激され、耐えようという意思さえ飛ばされてよがり狂う。
 ムワリと身体から吹き上がった、快感に溺れる女のいやらしい匂いが彼女自信の鼻を突いた。最後の最後に逃げようと脚に力を込めるが、付け根を強く抑える手に阻まれる。

 視界が白く染っていく。パワーある性技に子宮口を殴られ屈服していく。自分が今どうなっているのかすら分からない。

 ただひたすらに甘い鈍痛が身体の芯を何度も貫いている。

「んああああああああああああぁぁぁーーーーーっっっ! 無理ぃ! こんなの無理だああああああっ! ひぅうううううううっっっっ!」

 ほんの少しのミス。しかし籠絡ろうらくさせられなかった楽の負け。奈津美と同じように乱れ、同じ道を辿った。

 ヘルハウンドの動きが一層激しさを増し、楽の女陰を堕としにかかる。

「そんなに孕みたいのなら、孕ませてやる! 受け取れ!」

「あああああああああぁぁぁああぁっっっ! やああああああああああああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁあぁーーーーーーーっっっっっっ!」

 最奥に、大量に注がれた精液が快感を増大させ、頭を白一色に染め上げる。熱いマグマが子宮を甘美な熱気で埋めていく。

 絶頂の瞬間、脚に力が入り飛び上がるようにして後ろへ倒れる。そのせいでヘルハウンドのペニスが抜け、まだ出ていた精液が楽の身体に飛び散った。
 溶けたロウソクのように熱い塊がボタボタと降り注ぐ。雄の匂いが鼻腔を犯し、楽の朦朧としていた意識を押し潰した。

 だらりと伸びた肢体に征服の印が追加されていく。汗で艶めかしく光る褐色にドロリと濃厚な白濁液がかけられ、女の濃厚に甘い香りが霧散していく。

 楽はこの後起こりうるだろう惨事に懺悔もできぬまま、白目を剥いて完全に果てた。




『大神陸曹、佐伯陸曹共に気絶! 突破されます!』

「く……陛下を京都までお送りする用意を!」

「陸佐殿! ……承知いたしました!」

 皇都軍令部で最高権限を持つ一等陸佐の命令に部下が応じる。だがその命令は、負けを念頭に置いたものだった。
 皇都を護る為に戦い、結果として国の象徴である天皇陛下を首都から強制的に移動させる。つまり、皇都を放棄する。

 これが負けでなくて何であろうか。

「ここまでなのか……」

 彼は拳を握りしめ、状況の把握に務める。そんな彼に後ろから近づく女性が一人。

「私を出してもらえれば、すぐにでも倒して見せます」

 メイド服に身を包み大きな傘を携えた可憐な少女が出撃を催促するも、陸佐は首を縦に振らない。

「ならん」

「どうしてですか!」

 怒りを抑えたような声で陸佐に詰め寄る。

「お前はまだ実戦経験が無いだろう」

「何事も経験するまでは未経験です! それに、訓練では高位とも渡り合えるという結果が……」

「私はお前より、強い奴らを二人知っている。どちらも新兵だったが、才能に恵まれていた。私は彼女たちを初出撃で中位荒獣に向かわせた。……結果はな、二人共死亡だ」

 陸佐は、あえて静かに実体験を語る。彼の中に渦巻く後悔の念は、少女の勢いを削いだ。

「……」

「荒獣との戦いは、高度複雑化した現代戦ではない。太古より連綿と受継がれ、しかしほとんど進化していない性交による交戦だ。戦闘としての技術は乏しく、まだまだ訓練回数よりも実戦経験がものを言う」

「……分かりました」

 諭された少女は大人しく後ろに下がった。

「そう焦るな。この戦いが終われば機を見て出撃させてやる。……おいスカウト、状況はどうなってる!」

『抵抗できていません! 防衛網崩壊寸前! ハンターの援軍を要請します!』

「ヘルハウンド相手に出せるハンターはもういない!」

 残存戦力では、出すだけ無意味と判断した陸佐は非情な決断を伝えた。

『三瓶陸曹と紅菜陸曹は出せないのですか!』

「三瓶は無理だ。それにもし紅菜を失えば、防衛網の再構築は実質不可能。それなら、一時撤退して布陣を整えた方がマシだ」

『……了解!』

 悔しそうな声が余韻となって、司令室を包み込んだ。





 旧東京都墨田区押上一丁目スカイツリー第一展望台

 地上高350mに位置するガラス張りの展望台から、地上に向かって銃口が伸びていた。
 周りに背の高い建物は無く見渡しはいいが、旧東京タワーさえも超える高度では時折嵐のような風が吹き荒れている。

「………………」

 報告を受けてから狙い済ましていたビルの谷間。そこから多数の動物が闊歩かっぽし近づいてくる。
 スナイパーライフルを構えた男の目が、東から進撃するハイウルフ103頭を照準に捉えた。

「先頭を狙え。風速5m、ヒト時サンジュウゴ分ニジュウニ秒から」

 もう一人の男が指示と情報を与える。
 先頭の一匹を十字線の真ん中に置き、目標の未来位置、風の向きと速度を考慮し重力、温度、湿度の影響を素早く暗算、計算結果を弾き出す。当たるように照準をずらし……。

「撃て」

 火薬によって加速した金属がライフリングを擦る、大きな銃声が上空に響き渡った。
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