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最終話:心をひとつに。

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特務課のメンバー達が、それぞれの道を選んでから、さらに5年の月日が経った。


北条を除く6人は、ある墓の前に集まっていた。


「おう、久しぶりだな。」


一番最初に到着していたのは、虎太郎だった。
虎太郎は史上最年少にして、警視庁捜査一課長に就任していた。
天性の勘、そして溢れる情熱で課の刑事達を引っ張り、検挙率も大幅にアップした。

当時課長だった稲取は、虎太郎にあとを託すように退職。すぐに結婚し新しく探偵事務所を立ち上げたのだった。


「まさか虎太郎くんが一課長とはね……。人間、どうなるか分からないものね。」


そして志乃。
彼女は今や東京を代表する弁護士として、依頼の絶えない毎日を送っている。

「志乃さんこそ、名弁護士じゃねーか。そのうち何かのゲームのモデルにでもなるんじゃねぇの?」

「ふふ……みんな順調みたいで羨ましいわ。私なんて、毎日汗と血にまみれてむさ苦しい……。」


あさみはSITの副隊長となった。
これも異例の早さである。
古橋の抜けた穴を小泉が引き継ぎ隊長となったが、副隊長のポストは空席のままだった。
そこに推されたのがあさみである。
他にもベテラン隊員たちもいたのだが、その隊員も含め全員一致での推薦となったのだ。


「良いじゃねぇか。今じゃ評判だぜ。SITが出れば事件は完璧に片付くってな。何か、美味しいところを持っていかれてる気がして手放しじゃ喜べねぇけどさ……。」

「学校でもガキ達が騒いでるぜ。お前らみたいな刑事になりたいんだとよ。」


そして辰川。
彼は警察学校の教官の中でもひときわ注目を集める名教師になっていた。
生徒達が憧れの眼差しで語るのは、特務課の伝説。
そのメンバーだった辰川の講義には、皆真剣に取り組んでいる。


「ちゃーんと育ててくれよな、センセ!」

「ネットでも評判良いよー。今の警察は頼りになる。昔とは大違いってね。」


企業が爆発的な成長を見せ、今ではネット業界の名物社長となった悠真。
その資産は国内でも屈指であるらしい。


「最近、お前の名前を見ない日がねぇな。どんだけ成長したんだよ。あとで飯おごれ!」

「いいよー。フレンチのフルコースにする? それとも、予約一年待ちの寿司? 好きなの選んで良いよ。」

「この野郎……。」

「まぁまぁ、みんなそれぞれの道で順調みたいね。誇らしいことだわ。」


最後に訪れたのは、司。

彼女は捜査四課長になってからわずか5年で、警視監へと昇格。
熊田がさらに上の副総監に就任したことで空いたポストに就いたわけだが、女性初の幹部ということで、その手腕に期待されている。


「ってか、司令はどこまでも偉くなってくよな……。」

「役職が全てじゃないわ。虎太郎くんだって署内ですごい人気じゃない。」


これで、『メンバー全員』が同じ場所に集まった。

メンバー達が、それぞれ墓に花を手向けていく。
そして、目を閉じ手を合わせる。


「北条さん……あれから5年。俺たちは変わらずこうやって集まってる。職業も身分も違う俺たちだけど、特務課で集まれたから、こうやって絆は残ってる。最高の課だったよ。」


そう、この墓は北条の墓である。
逮捕から3年。
死刑囚としては刑の執行が早かった。
その背後にあったのは、世論だけではなかった。

やはり、死刑執行の裏側には阿久津達官僚の力が働いていた。
今後いつ彼の遺志を受け継ぐものが自分たちの闇を暴くかわからない。
北条という存在の大きさが生んだ恐怖が、官僚たちを死刑執行へと動かしたのである。


「大体、死刑執行の早さが異例だったのは察しがついた。俺たちは今、秘密裏に官僚たちの闇も調べてる。アンタがきっかけを作ってくれたからな。」

『神の国』事件後、阿久津は取り調べを受けたが、結局本人の起こした事故・事件については追及されなかった。
リストの保有者が元・警視庁官僚だったこと。
そして、そのリストに警視庁の幹部が二人も関わっていたことで、警察側は追及することで警察の闇が明るみに出ることを恐れたのだ。


「結局……警察も政治家も闇だらけだけどさ……。アンタが俺に教えてくれたこと、それを俺たちはそれぞれの立場で実行していこうと思うんだ。みんな、同じ場所にいなくても、心を一つにすることは出来る。なぁ、そうだろう?」


虎太郎が花の手前に、ワインボトルを置く。


「俺たちで、警察を変えていく。そして、いずれは政治家の闇も暴く。俺たちの戦いはこれからだ。だからさ……見守っていてくれよ、北条さん。」


虎太郎がもう一度、目を閉じる。


―――犯罪者に見守っててなんて、どうかしてるよ。―――

(あぁ……そうかも知れねぇな。でもさ、俺にとっては初めての『相棒』だった人なんだ。)



メンバーたちが皆、別れを惜しむように北条の墓標を見つめる。


そんな時、虎太郎のスマホが鳴った。


「はい。……あぁ? またアイツかよ……。分かった。出先だからここから急行する。」

「事件?」

「あぁ。ずっとマークしてた暴力団員が、麻薬密売の集会に来たらしい。そこを押さえる。」

「大変ね~一課も。」

「まぁ、まだ若いんだ。死ぬほど苦労しろや。」

「気を付けてくださいね。」

「さて、じゃ、防犯カメラの解析、手伝おうかな~」


こうして、メンバーたちは北条の墓に背を向ける。



「見ててくれ。俺たちの戦いは、まだ終わらない……。」


司により集められた7人の精鋭、警視庁特務課。
彼らの絆は、これから先もずっと切れることは無い。

    
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