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最終話:心をひとつに。

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元・爆弾処理班のエースにして、特務課では爆破事件の解決及び北条の逮捕に大きく貢献した辰川。

彼は上層部からの強い推薦もあり、今は警察学校の教官をしている。


「今の警察はデータ化だ統計だとやれ数字に頼ってしまいがちだ。確かにそれは悪いことじゃねぇ。いくつもの事例をまとめあげ、集計してのデータだ、参考にするのは大いに良いことだし、データはお前達の助けになるだろう。たがな、最終的に捜査の方針や推理をするのは、お前達刑事一人ひとりの判断だ。」


ホワイトボードに大きく字を書き、熱く語る辰川。


「それぞれの判断力を磨くにはどうしたら良いか? 簡単だ。出きるだけたくさんの人と話をすることだ。犯人だけじゃねぇ。周辺の住民、被害者の家族、加害者の家族、先輩刑事、派出所の警官……。刑事って仕事は、人と話をすることで経験値が上がる職業だ。教本をどれだけ読み込んだって、パソコンでいくら検索したって刑事の本質は身に付くものじゃねぇ。」


警察黄金期と言われた時代。
高橋、熊田、北条、稲取……。
たくさんの優秀な刑事を生んだ時代において、辰川はコツコツと自分の得意分野だけをひたすら伸ばしてきた。

そして、爆弾処理班には欠かせない存在となった。


「会話を通じて、そのうち『これはおかしい』『何か違和感を感じる』そう思うことがある。それが……『刑事の勘』になる。お前ら、デジタル社会に踊らされるなよ?結局のところ、犯人を逮捕するのはパソコンじゃねぇ。お前達だ。頭でっかちな刑事にだけはなるなよ!」

「……はいっ!」


辰川の講義は、警察学校の生徒達に好評である。
魂を感じる、自らの経験を余すところなく伝えてくれようとしている、熱意を感じる……。
若い警官の卵達に、辰川の熱さは伝わっているのだ。


「やれやれ……。もう、シケていくだけだと思ってたんだがな……。まぁ、俺の第二の、いや、第三の人生ってことか。」


第一線で活躍し、特務課に配属され、そしてその功績を称えられ教官となる。

辰川にとっては、願ってもない環境であった。


「虎の今度の相棒になるのヤツでも育ててやるとするか。」


辰川は、その後多くの優秀な刑事を輩出していく。
『辰川道場』という名がつくほど、辰川の門下生達はその名に誇りをもって警察へと入っていく。


後に、辰川の最高傑作とも言われる逸材が誕生するのだが……。


……それはまだ、先の話である。
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