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第12話:未来のために

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『神の国』の一行が逃げ去った、警視庁。
副総監が殺害され、数多くの警官たちが重軽傷を負ったこの騒動。

しかし、皆は下を向いてはいなかった。


「逮捕した3人から、詳しく話を聞くんだ! 逃げた奴らのこと、アジトや隠れ家になりそうな場所、なんでもいい。小さなものでも見逃さずに拾い上げるんだ!」

「俺たちは出るぞ! 防犯カメラの映像やNシステムの称号を依頼しろ! 」

「各課総動員だ! このまま逃げられたら、俺たち警察の名折れだ!」


犯人たちを逃がすな。
その気持ちが一丸となり、すぐに行動に移そうとする各課の刑事たち。


しかし、その状況はあまり良いものではなかった。


「いい傾向ではあるんだけどね……。各課でバラバラに動かれては犯人の思うつぼだよ。こういう時こそ誰かがうまく統率しなきゃ……。」


各課が、各課長の指示に従い、犯人逮捕に向けて全力を挙げる。
望ましいことなのだが、灰島達3人は、普段相手にする凶悪犯よりも手強い相手。
一部の人間だけが接触しても、その刑事たちに危険が及びかねない。


「これさぁ……北条さんが仕切った方が良くね?」

「……え?」


虎太郎も、この状況をどうにかしなければと思ったのだろう。
それでも、司に白羽の矢を立てなかったのには理由があった。


「あの『マスター』は、司令が逮捕しなきゃダメだろ。うちらのメンバーの中で、司令と同じくらい周りに影響力があって、皆に指示を出しても文句を言われない人間……もう北条さんしかいねぇじゃん。」

「虎……。」

「もっとも、肝心な場面で体力切れになって足引っ張られても困るしな。」


憎まれ口を叩きながらも、虎太郎は冷静に現状を分析していた。


「きっと……司令なら。アイツの逃げた場所がわかる、そんな気がするんだ。」

「虎太郎くん……。でも、北条さんはあなたの相棒でしょう?」

「あぁ、だからだよ。他の奴の言うことに疑問を持ったとしても……」


虎太郎は、北条の相棒としてずっと捜査してきた。
だから、絶対的な信頼を置いている。


「北条さんの指示なら、無条件で従える。だって、バディだから。」


この虎太郎の一言で、北条の心も決まった。


「やれやれ……ここまで信頼されちゃうと、応えないわけにはいかないよね。OK。やるよ。じゃぁ指令室に向かうね。」


北条は、指令室に戻ろうと踵を返す。
そして、虎太郎の肩をすれ違いざまに叩いた。


「……司ちゃん、しっかりサポートしてやってよ。彼女が、この事件の幕を下ろすんだ。」

「……りょーかい。」


北条と虎太郎。
特務課が結成されて長い年月は経っていないが、その信頼は深まっていた。


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