聖戦記

桂木 京

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第1章:イノチの意味は

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「以上、昨夜の顛末でございます。」

翌朝、アインはゼロと共に、宮殿でオスカーに昨夜の顛末を報告していた。

「では、ノースグランド軍ではなかったと……。では、そのアンデット兵は、何者の差し金なのだ……?」

顎に手を当て、考え込むオスカー。

「俺は国境のノースグランド詰め所、見てきたけど、そりゃーもう平和なもんだったぜ?」

ゼロも、ノースグランド軍の偵察を独自に行っていた。その結果を、とりあえず伝えた。

「むぅ……」

オスカーはますます考え込む。

「直接、ノースグランド国王と面会しては如何でしょう?正体が分からない敵が現れた以上、先方に敵意がないなら共同戦線の意思を固めておくべきかと。」

沈黙を破ったのは、アインだった。

「留守は守ります。オスカー様はノースグランド国王と面会を。国家間の問題です。私が面会に行くのは、少々荷が勝ちすぎるかと……。」

恐縮です、と頭を下げるアインに、オスカーは、

「つくづく、君が将軍で良かったよ。常に的確な案を出してくれる。」

……と、笑みを浮かべ。

「分かった。ノースグランド国王と面会をしてこよう。軍を率いて行くわけにはいかないので、秘密裏に行こう。アイン、留守を頼めるか?」

と、アインに告げる。

「はっ!」

即答でアインは敬礼し、

「それならば、ゼロをお伴に。」

と、ゼロに目配せをする。

「はぁ!?……俺は騎士じゃねぇっての!」

冗談じゃない、と反論するゼロに、

「……だからよ。ただの町人さんだからこそ、御忍びの領主の護衛ができるのよ。友人と銘打ってね。」

アインは微笑みながら言う。

「……姉貴、だから俺を連れてきたんだな?これが狙いか!」
「察しの良い弟で助かるわ。」

全てはアインの想定通り、事が進む。

「ちっ……仕方ねぇな。オスカー様、俺……夕食に肉がねぇと納得しねーからな!」

不満げにオスカーに言うゼロ。慌てて頭を下げるアインを横目に、

「ゼロ、君とは一度、身分とか関係なく話がしたかった。まぁ、仲良く隣国への旅行と洒落こもうじゃないか。」

と、ゼロに笑いかけた。

「未熟な弟ですが、きっとオスカー様の助けとなるでしょう。私が保証します。」

アインの言葉に、

「華将軍のお墨付きなら安心だ」

とにっこりと笑うオスカーであった。

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