料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子

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第2章 牛すき焼きと甘い誘惑 料理屋「〇」黎明編2

ギルド受付嬢はすき焼きがお好き? 6

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リュカさんが頼んだすき焼きの〆には雑炊を作ることにした
旨味の出たすき焼きの残り汁に、炊いたコメを余計な滑りを取るように少し洗い、鍋に出汁と一緒に足し、卵でトロミをつける様に綴じる…汁気を少し飛ばして完成だ

雑炊を食べたリュカさんは身体も心も温かくなり、大変満足したようだった
お帰りの時に外まで見送る事にしたのだが・・・

「マスター…儂が料理でここまで満足したのは久しぶり…いや初めての事かもしれん…お主が一体どこでこんな料理を学んだかは知らぬが…その若さで相応の努力をしたのは十分に伝わったぞえ♡」

「ありがとうございます!」
・・・まさか異世界で二十数年修行して、若返って転移し、こちらに知識と技術を持ち込んだとは当然言えない・・・
だが、素直に褒められるのは嬉しい…
それだけ、日本で厳しい時代の飲食業から好きでずっとやって来た努力を認められるのは心から幸せなことだった

「これからは主の料理が世界に広がっていくのじゃろうな」
「そんな事にはなりませんよ…しがない料理屋のマスターで十分ですよ・・・」

「・・・呆れるくらい欲が無いのう・・・だが、周りが放っておかん可能性もあるからのぅ…まぁ良い意味でも悪い意味でもしばらく、この街ではマスターの噂で持ち切りになるじゃろうな」

「良い意味では解りますが・・・悪い意味でとは・・・?」
変なフラグを立てるのはジンさんに続き勘弁してほしいんですけど・・・

「まぁとにかく、何か困ったことがあれば、冒険者ギルドに来ればよい…儂も色々と協力するぞえ♡」

「ありがとうございます…その気持ちだけでも十分嬉しいです」

「それと…これは個人的な儂からの礼じゃ…受け取れい」
リュカさんはおもむろに俺の顔に近づき、頬を赤く染めた美しい顔で少し見つめた後、
キスをしてきた・・・それも濃厚に舌を絡め・・・
「…え?」

「主の事は本当に気に入ったと言ったじゃろ・・・また来るぞえ♡」

・・・驚いた・・・驚いたが・・・ありがとうございます・・・♡
心の中で興奮が収まらない・・・が平静を装い店に戻ると・・・

「・・・なんだかハル、嬉しそうだにゃ・・・なんか怪しいにゃ」
ジト目でこちらを見るミャオのすねた様子に驚き

苦笑いしながら急いで厨房に入る俺だったのだが・・・

「ハルがモテるのは仕方ないのにゃ・・・良い人だし・・・凄い料理いっぱい作れるにゃ・・・でもミャオの事もちゃんと可愛がるのを忘れちゃ駄目なのにゃ!」

心の中でミャオに謝りつつも
「・・・ありがとうなwミャオ」

「とりあえずリナさんとジンさんとミャオにもゾースイ作るにゃ!!・・・それで今日の所は勘弁するにゃ♡」

「はいよぉ喜んで!」

店の営業終わりまで楽しい時間は続いたのであった・・・




しかしながら、悪い意味でのフラグはすぐにやって来た
次の日の朝、ミャオが騒ぎながら俺を起こしに来た

「大変にゃー!!」

俺とミャオが店の入り口に行くと沢山の張り紙がベタ張りされていたのだ

「この店の料理は毒が入っている、気をつけろ!」
「獣人の働く店」「女の客は気をつけろマスターに口説かれるぞ」
「不味い料理で金とるな!」
・・・等々、およそ適当なデマの様な内容なのだが、あまりにも酷い

俺は水と風の魔法の応用で壁に張り付いた紙と汚れもついでに綺麗に取り去った

幸いにも早朝だったので周りのごく身近な方々にしか見られては無いようだったが・・・

「ミャオが…たまたま早起きしたんだけどにゃ…外出たらビックリしたにゃ!」

・・・不幸中の幸いか、本当にミャオに助けられたな・・・
「ミャオ、本当にありがとう・・・でも、もしかしたらしばらく続くかもしれないから気をつけような」

「分かったにゃ・・・」
ミャオは俯きながら、体を震わせていた

…正直、この商売をしていて日本にいた時も、変なうわさ話ややっかみで嫌がらせを受けるなどよくある話ではあるが…
内心は穏やかではない・・・

何より許せなかったのは店の評判を落とそうとするのにミャオを巻き込んだのが許せなかった

獣人は珍しい…というのも差別的に攻撃してくる輩がこの世界には間違いなく現在もいる
その為、獣人は獣人の国を中心とした差別のない国に集まるのだが…

アナスタシアの在るこの国『』は比較的に安全で差別をしない王様の納める国・・・獣人だけでなく、様々な種族が共存している
しかし、獣人の数はやはり多くはないので珍しいという事になる

古い考えの人間がいまだにいて、少数民族や、種族を迫害しているという事実をまざまざと感じさせられた

俺はミャオを強く抱きしめ、
「気にするなよ!俺が何とかするから!」

と震えるミャオを慰めつつ、静かに闘志を燃やすのであった…





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