料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子

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第1章 揚げ出し鶏と淡い恋 料理屋「〇」黎明編1

揚げ出し鶏と淡い恋1

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目が覚めていつも思うのは、「うまい飯を作って食べたい」という事と「それを誰かに食べて喜んでもらいたい」という事…

隣で丸まって寝ているミャオの頭を軽くなでながらそっと起き上がる
黒い艶やかながら、温かい少し毛足の長い猫のミャオを起こさぬように…


朝の準備を整え、作務衣に着替え、いつものように仕事場である厨房に降りていく

昨日の夜から水に浸しておいた米の入った鍋を魔導コンロで火を付ける
同時に厨房にある大き目の鍋に水を張り、魔導コンロで鰹節もどきの削り節を沸騰寸前まで煮て火を止め、布巾で漉し、昆布に似た乾物を投げ込む
昆布もどきから味が出たタイミングで引き揚げ、昆布はしばらく冷ましておき、出汁の味を確認
シンプルな魚出汁だが、ここは地球の日本とは違う異世界なので、現状ではこれだけでも近い物が出来て良かったと心からそう思う…米が炊けたタイミングで火を消し、しばらく蒸らす…米があったのも有難かった…


 

ある日、いつものように仕事場である飲食店に向かった俺は、目の前で酔っ払いに絡まれている若い子を助けるために仲裁に入って、その時囲まれて後頭部を殴られたショックで倒れ、病院につく頃には死んでいた…らしい
目が覚めた時に、輝かしい後光をまとう神と自称するものにそう説明されたのだ
どうやら俺が、死んだことは神としてもイレギュラーであり、人を助けたことを評価されもう一度チャンスをやろうという理由で現れたらしいのだが、当然、日本に生き返る事は出来ないが…

魂を異世界に転移することでつなぐことはできるとのことだったので、そこは有難く了承させてもらい、様々なチート能力を期待して、言うだけ言ってみたらかなりの好待遇で生き返る事が出来、現在に至るというわけだ
だいぶ端折ってしまったが、再び目が覚めたら異世界の中都市であるアナスタシアという街で小さい食堂をやっているハルという男として生きている

かつての自分を全てなくして異世界で新しい生活を始めるにあたって憤りも多少あったが、文句を言ったところで何も変わらないのは十分理解したからせっかくの異世界ライフを存分に楽しもうと前向きに生きることにしたのだ

とはいうものの、最初は本当に苦労した…

異世界での基本的な知識や言葉、生活習慣などは神のご意向により全く問題なし…
むしろ困ったのは生活の基盤である食堂の経営状況が全く持って悪かった

とにかくお客様が来ない

メニューを確認してみるとどうやら自分がハルとして自覚する前に提供していたメニューは洋食に近いメニューではあるが、レシピ通りに作ってみた料理は…はっきり言って不味い!!!!


2回言うが…非常にまずい物だったのだ!

これはかつてのメニューが悪いというよりは食材を上手に調理するという意識に欠ける国民性と言った方がいいのかもしれない…それくらいこの国の何処で食べても美味しくない料理であふれていたのだ…その中でもなかなか不味い料理を提供していたらしい…そのイメージを払拭するのは本当に苦労した…

なんて事をふと思いながら出汁を鍋から移していると
「…おはようございますにゃ…」
階段を見るとミャオが降りてきたようだ…

猫が喋った!!と思うだろうが、実は彼女は獣人族であり、今は猫型だが、本当は人型にもなれる半分猫半分人間の女の娘なのだ

俺は「おはよう…お腹すいてるか?」と聞くと

「当たり前なのにゃ…」寝ぼけながら彼女が言う

先程、出汁をとり漉した鰹節もどきを皿に移し、街の港の近くで作られてる魚から作られている醤油
いわゆる魚醬を混ぜる…それを炊き立てのご飯に乗せ、卵を割り黄身だけを乗せる
出汁にも少しの魚醬を混ぜ、ネギに似た香味野菜のみじん切りを乗せ、ミャオに提供する

「まかないで悪いなw」

「大好きなハルのご飯は何でもおいしいにゃ♡」

嬉しい事を言ってくれる…


ミャオは飛びつくように黄身のせの猫まんまに吸い物をがっつきながら「うまいにゃー♡」と叫んでいた
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