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昼休みが終わって教室に戻ると河童が席に座っていた。机に大きな紙を広げてなにやらぶつぶつ呟いている。何かを見ているようだ。気になったので声をかけてみることにした。
「おーい、何やってんだー?」その声に反応してこちらを向いた河童は真剣な顔をして手招きをした。
なんだろうと思いながら近づくと机の上に広げられた紙を見せてきた。それは新聞のようだった。見出しには『さざ波ギルド、獄炎ギルドにバトルを挑む!』と書かれている。
「なんだよこれ……まるで見世物じゃないか」呆れ気味に言うと彼は頷いた。
「ああ、そうだ。賭けもやってるぞ。予想オッズは圧倒的に獄炎優勢。まあ賭けにならんだろうな」
それを聞いて思わず聞き返す。
「え……じゃあ、さざ波には全く勝ち目はないの?」すると彼は肩をすくめて答える。
「勝てるわけがないだろう。王同士の実力が均等していても兵の数が違う」
確かにその通りだと思った。そもそも人数も装備も向こうの方が上なのだ。まともに戦っても負けてしまう可能性が高い。
「実は……僕、さざ波ギルドなんだ。その……きみはどこかのギルドに入ってたりするの?」
恐る恐る尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「俺はどこにも入ってない」
「え、そうなの?!」
「お前の言いたいこともわかっている。俺をさざ波ギルドに勧誘したいのだろ?」
その言葉に僕は頷く。しかし、すぐに首を横に振った。
「いや、いいよ。負けるのが確定してるなら入る意味がない。負けたらギルドマスターの彩先輩が引き抜かれてギルドが保てなくなってしまう」
僕がそう告げると、河童はため息をついた後、こう言った。
「俺が何も知らないとでも思ってるのか?このギルドバトルには俺にも関わる資格があるはずだ。むしろこの俺が中心といってもいい」
その言葉に僕は驚いた。「……お前、どこまで知ってるんだ?」おそるおそる尋ねる僕に河童は答えた。
「俺はなんでもお見通しだ。俺が助けたあの二人のことも!獄炎に捕らわれたことも!さざ波と獄炎のギルドバトルにあの二人が賭かっていることも!全てな!」
そう言い切った河童の表情は真剣そのもので、とても嘘をついているようには見えなかった。僕は彼に尋ねた。
「お前はいったい何者なんだ?」河童は即答する。
「――俺は神(ジン)。名は体を表すと言うだろ?つまり俺は神(かみ)だ!俺も参加するぞ。やつらに神がいかなるものか見せてやる!」
――放課後、僕たちはさざ波ギルドに集まった。彩先輩、セバス先輩、それに僕と河童。ついにギルドの最低人数をクリアしたんだ。
さて、ギルドバトルについて話し合おうとしたところ、突然部室の扉が開かれた。そこには険しい表情をした獄炎ギルドのギルマスと火野くんがいた。獄炎のギルマスはズカズカと中に入ってくるなり言った。
「おい、お前らどういうつもりだ!あの女どもはどこに隠した?!なぜギルドバトルに執行部が関与してくる!!」
どうやら怒っているようだ。だが、それに構わず火野くんは挑発的に言う。
「おいおい、俺たちはあんた達に頼まれて仕方なくギルドバトルを受けてやったんだぜ?それなのにこれはねえだろ?」
「えっ?ちょっとどういうこと?何が何だかさっぱりわからないのだけど……」混乱する僕たちをよそに獄炎のギルマスが吠える。
「とぼけるな!貴様らがあの女どもを攫ったんだろ?!神聖なギルドバトルを汚す気か!!」ますます意味がわからなかった。困惑していると、今まで黙っていた彩先輩が口を開いた。
「つまり、あなた達が攫って捕えていた女の子たちがいなくなったってことかしら?」その問いに対して火野くんは呆れたように言う。
「だからそう言ってるじゃねえか。しかも執行部からギルドバトルの無効するって命令が来た!お前らが裏でこそこそ手をまわしたんだろうが!」
それに対して彩先輩が言う。
「私たちがそんなことするわけないでしょ!」
「お前たちしかいないだろうが!ギルドバトルしても負けが決まってるからと姑息な真似をしやがって!恥を知れ!」
「ちょっと、落ち着いてくださいよ……」僕は興奮するギルマスの二人を宥めるように言うが、まったく効果はない。それどころか余計にヒートアップしてしまったようで怒鳴り散らし始めた。
「いいか、よく聞け!俺たち獄炎ギルドを嵌めたこと後悔させてやるからな!絶対に潰してやる!!覚悟しておけ!」
そう言い放つと二人は帰っていった。
去り際に一瞬、火野君が河童に目配せをして河童が微かに頷いたように見えた。今のなんだろう?
ずっと沈黙していた河童がつぶやく。
「なるほど……だいたいわかった」そして立ち上がると、静かに告げた。
「執行部にいくぞ。ついてこい」
「おーい、何やってんだー?」その声に反応してこちらを向いた河童は真剣な顔をして手招きをした。
なんだろうと思いながら近づくと机の上に広げられた紙を見せてきた。それは新聞のようだった。見出しには『さざ波ギルド、獄炎ギルドにバトルを挑む!』と書かれている。
「なんだよこれ……まるで見世物じゃないか」呆れ気味に言うと彼は頷いた。
「ああ、そうだ。賭けもやってるぞ。予想オッズは圧倒的に獄炎優勢。まあ賭けにならんだろうな」
それを聞いて思わず聞き返す。
「え……じゃあ、さざ波には全く勝ち目はないの?」すると彼は肩をすくめて答える。
「勝てるわけがないだろう。王同士の実力が均等していても兵の数が違う」
確かにその通りだと思った。そもそも人数も装備も向こうの方が上なのだ。まともに戦っても負けてしまう可能性が高い。
「実は……僕、さざ波ギルドなんだ。その……きみはどこかのギルドに入ってたりするの?」
恐る恐る尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「俺はどこにも入ってない」
「え、そうなの?!」
「お前の言いたいこともわかっている。俺をさざ波ギルドに勧誘したいのだろ?」
その言葉に僕は頷く。しかし、すぐに首を横に振った。
「いや、いいよ。負けるのが確定してるなら入る意味がない。負けたらギルドマスターの彩先輩が引き抜かれてギルドが保てなくなってしまう」
僕がそう告げると、河童はため息をついた後、こう言った。
「俺が何も知らないとでも思ってるのか?このギルドバトルには俺にも関わる資格があるはずだ。むしろこの俺が中心といってもいい」
その言葉に僕は驚いた。「……お前、どこまで知ってるんだ?」おそるおそる尋ねる僕に河童は答えた。
「俺はなんでもお見通しだ。俺が助けたあの二人のことも!獄炎に捕らわれたことも!さざ波と獄炎のギルドバトルにあの二人が賭かっていることも!全てな!」
そう言い切った河童の表情は真剣そのもので、とても嘘をついているようには見えなかった。僕は彼に尋ねた。
「お前はいったい何者なんだ?」河童は即答する。
「――俺は神(ジン)。名は体を表すと言うだろ?つまり俺は神(かみ)だ!俺も参加するぞ。やつらに神がいかなるものか見せてやる!」
――放課後、僕たちはさざ波ギルドに集まった。彩先輩、セバス先輩、それに僕と河童。ついにギルドの最低人数をクリアしたんだ。
さて、ギルドバトルについて話し合おうとしたところ、突然部室の扉が開かれた。そこには険しい表情をした獄炎ギルドのギルマスと火野くんがいた。獄炎のギルマスはズカズカと中に入ってくるなり言った。
「おい、お前らどういうつもりだ!あの女どもはどこに隠した?!なぜギルドバトルに執行部が関与してくる!!」
どうやら怒っているようだ。だが、それに構わず火野くんは挑発的に言う。
「おいおい、俺たちはあんた達に頼まれて仕方なくギルドバトルを受けてやったんだぜ?それなのにこれはねえだろ?」
「えっ?ちょっとどういうこと?何が何だかさっぱりわからないのだけど……」混乱する僕たちをよそに獄炎のギルマスが吠える。
「とぼけるな!貴様らがあの女どもを攫ったんだろ?!神聖なギルドバトルを汚す気か!!」ますます意味がわからなかった。困惑していると、今まで黙っていた彩先輩が口を開いた。
「つまり、あなた達が攫って捕えていた女の子たちがいなくなったってことかしら?」その問いに対して火野くんは呆れたように言う。
「だからそう言ってるじゃねえか。しかも執行部からギルドバトルの無効するって命令が来た!お前らが裏でこそこそ手をまわしたんだろうが!」
それに対して彩先輩が言う。
「私たちがそんなことするわけないでしょ!」
「お前たちしかいないだろうが!ギルドバトルしても負けが決まってるからと姑息な真似をしやがって!恥を知れ!」
「ちょっと、落ち着いてくださいよ……」僕は興奮するギルマスの二人を宥めるように言うが、まったく効果はない。それどころか余計にヒートアップしてしまったようで怒鳴り散らし始めた。
「いいか、よく聞け!俺たち獄炎ギルドを嵌めたこと後悔させてやるからな!絶対に潰してやる!!覚悟しておけ!」
そう言い放つと二人は帰っていった。
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「執行部にいくぞ。ついてこい」
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