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僕と彩先輩は獄炎ギルドに向かっていた。
「あの、彩先輩。つい勢いで向かってますけど、向こうには結構な数の人がいましたよ。二人だけで大丈夫でしょうか?」
「向こうが乗ってくれるかどうかにかかっているけど……まあ、なんとかなるでしょう」
「先生とか呼んだ方がいいのでは?」
「生徒同士のいざこざに教師が首を突っ込むなんてしないの。この学園ではね」
ならば僕らだけで何とかするしかない。でもどうすれば……? そんなことを考えているうちに目的地に到着した。
ギルドの建物が立ち並ぶ一角、西部劇に出てくるような酒場をサイズだけ大きくした煉獄ギルドの本拠地だ。
その建物の入口で僕らは立ち止まった。
「じゃあ行くわよ」
「はい!」
気合いを入れて扉を開ける。ついさっきも来た酒場を思わせる風景。乱雑に並べられた丸テーブルに大勢の男たち。カウンター背に座る獄炎ギルマス。僕らが勢いよく入ってきたのでみんな一斉にこちらを向く。
「話をつけてくる。ゆうすけはここにいなさい」
そう言うと僕を入り口付近に残して彩先輩はそのまま奥へ進む。それを見て獄炎ギルマスが声をかけてきた。
「おう、どうした?何か用か?」「あなたに話があってきたの」
「俺に?」
「そう。あなた個人ではなく獄炎ギルドにね」
「そうか、まあとりあえず座れや」
「結構よ」
そう言って彩先輩は獄炎ギルマスの申し出を断り、要件を告げる。
「私の後輩の友達がさらわれたの」
「ほお、そいつは大変だな」
「そうね、大変なのよ。だから私がここに来たの」
「……何が言いたいんだてめえ」
苛立つ獄炎ギルマスに対し淡々と答える彩先輩。
「ここにいるんでしょ?あなたたちが攫ってきた一年生の女の子が二人」その言葉にざわつく周囲。
「知らねえなぁ~そんな奴ら。ああ、それとは別に一年の女が二人このギルドに入ったけどなあ!」
(この期に及んでしらばっくれるつもりか!)そう思った僕は思わず叫んだ。
「とぼけても無駄だぞ!さっさと二人を返せ!!」
すると、その言葉を聞いた周囲の男たちが大声で笑い出した。そしてその中の一人の男が口を開く。
「おい、聞いたかよ今のセリフ!こいつヒーロー気取りだぜ!」
さらに笑い声が上がる。すると彩先輩が大声を発した。
「黙りなさい!!」
その声に再び静まり返る室内。
「ゆうすけも今は黙っててちょうだい」
「す、すみません」素直に謝る僕。
そんな僕たちを見て獄炎ギルマスが言う。
「で、話ってのはここでキャンキャン騒ぐだけか?」
彩先輩は暫し沈黙し、持ってきた日本刀なようなものを獄炎ギルマスに見せ、それから意を決して言い放つ。
「私たち、さざ波ギルドは――獄炎ギルドに対して、ギルドバトルを申し込みます!!」
しんとした静寂が流れる店内。数秒後、またも誰かが声を上げた。
「ぶはっ!おいおいマジかよ?!お前らみたいな弱小ギルドが俺らに勝てるわけねえだろぉ~!」
その言葉に同調するように周囲から嘲笑が巻き起こった。しかし、それでもなお彼女は言葉を紡ぐ。
「さあ、獄炎ギルドのマスター。返答は如何に?」
挑発的な口調で問いかける彩先輩。すぐそばの壁に掛けてあった斧を取り、彩先輩に押し付けるように見せながら獄炎ギルマスは言う。
「いいだろう、その勝負受けてやる。俺たち獄炎が勝ったら……彩、お前は獄炎ギルドに入れ」
「ええ、いいわよ。ただし私たちが勝てばその女の子二人はうちが貰うわ」
「ああ、約束しよう。勝負は五日後。内容はエンブレムだ」
「わかったわ」それだけ言うと彩先輩は踵を返し出口へと向かう。僕もその後に続く。外に出ると振り返りもせずに言う。
「帰るわよ」
そう言って歩き始める彼女の背に僕は問いかけた。
「どうなってるんですか彩先輩?ギルドバトル?エンブレムっていったい?」
「詳しい話は帰ってから話すわ」有無を言わせぬ口調だった。
「わかりました……」それ以上何も言えなかった。
こうして僕たちはさざ波ギルドのハウスに戻ることにした。
「あの、彩先輩。つい勢いで向かってますけど、向こうには結構な数の人がいましたよ。二人だけで大丈夫でしょうか?」
「向こうが乗ってくれるかどうかにかかっているけど……まあ、なんとかなるでしょう」
「先生とか呼んだ方がいいのでは?」
「生徒同士のいざこざに教師が首を突っ込むなんてしないの。この学園ではね」
ならば僕らだけで何とかするしかない。でもどうすれば……? そんなことを考えているうちに目的地に到着した。
ギルドの建物が立ち並ぶ一角、西部劇に出てくるような酒場をサイズだけ大きくした煉獄ギルドの本拠地だ。
その建物の入口で僕らは立ち止まった。
「じゃあ行くわよ」
「はい!」
気合いを入れて扉を開ける。ついさっきも来た酒場を思わせる風景。乱雑に並べられた丸テーブルに大勢の男たち。カウンター背に座る獄炎ギルマス。僕らが勢いよく入ってきたのでみんな一斉にこちらを向く。
「話をつけてくる。ゆうすけはここにいなさい」
そう言うと僕を入り口付近に残して彩先輩はそのまま奥へ進む。それを見て獄炎ギルマスが声をかけてきた。
「おう、どうした?何か用か?」「あなたに話があってきたの」
「俺に?」
「そう。あなた個人ではなく獄炎ギルドにね」
「そうか、まあとりあえず座れや」
「結構よ」
そう言って彩先輩は獄炎ギルマスの申し出を断り、要件を告げる。
「私の後輩の友達がさらわれたの」
「ほお、そいつは大変だな」
「そうね、大変なのよ。だから私がここに来たの」
「……何が言いたいんだてめえ」
苛立つ獄炎ギルマスに対し淡々と答える彩先輩。
「ここにいるんでしょ?あなたたちが攫ってきた一年生の女の子が二人」その言葉にざわつく周囲。
「知らねえなぁ~そんな奴ら。ああ、それとは別に一年の女が二人このギルドに入ったけどなあ!」
(この期に及んでしらばっくれるつもりか!)そう思った僕は思わず叫んだ。
「とぼけても無駄だぞ!さっさと二人を返せ!!」
すると、その言葉を聞いた周囲の男たちが大声で笑い出した。そしてその中の一人の男が口を開く。
「おい、聞いたかよ今のセリフ!こいつヒーロー気取りだぜ!」
さらに笑い声が上がる。すると彩先輩が大声を発した。
「黙りなさい!!」
その声に再び静まり返る室内。
「ゆうすけも今は黙っててちょうだい」
「す、すみません」素直に謝る僕。
そんな僕たちを見て獄炎ギルマスが言う。
「で、話ってのはここでキャンキャン騒ぐだけか?」
彩先輩は暫し沈黙し、持ってきた日本刀なようなものを獄炎ギルマスに見せ、それから意を決して言い放つ。
「私たち、さざ波ギルドは――獄炎ギルドに対して、ギルドバトルを申し込みます!!」
しんとした静寂が流れる店内。数秒後、またも誰かが声を上げた。
「ぶはっ!おいおいマジかよ?!お前らみたいな弱小ギルドが俺らに勝てるわけねえだろぉ~!」
その言葉に同調するように周囲から嘲笑が巻き起こった。しかし、それでもなお彼女は言葉を紡ぐ。
「さあ、獄炎ギルドのマスター。返答は如何に?」
挑発的な口調で問いかける彩先輩。すぐそばの壁に掛けてあった斧を取り、彩先輩に押し付けるように見せながら獄炎ギルマスは言う。
「いいだろう、その勝負受けてやる。俺たち獄炎が勝ったら……彩、お前は獄炎ギルドに入れ」
「ええ、いいわよ。ただし私たちが勝てばその女の子二人はうちが貰うわ」
「ああ、約束しよう。勝負は五日後。内容はエンブレムだ」
「わかったわ」それだけ言うと彩先輩は踵を返し出口へと向かう。僕もその後に続く。外に出ると振り返りもせずに言う。
「帰るわよ」
そう言って歩き始める彼女の背に僕は問いかけた。
「どうなってるんですか彩先輩?ギルドバトル?エンブレムっていったい?」
「詳しい話は帰ってから話すわ」有無を言わせぬ口調だった。
「わかりました……」それ以上何も言えなかった。
こうして僕たちはさざ波ギルドのハウスに戻ることにした。
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