怪盗ウイングキャット ~季節の花ジャムを添えて~

モブ

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 翌朝、目を覚ますとスマホの画面を確認する。時刻は午前6時30分だった。そろそろ起きようかと思い、体を起こすと大きく伸びをした。昨日はいろいろあって疲れたせいかいつもより目覚めがいい気がするなと思いつつ朝食の準備をするために台所に向かった。
 冷蔵庫を開けると食材がいくつか残っていたので適当に料理を作ることにする。野菜を切りながら昨日のことを思い出していた。
 猫ちゃんは大丈夫だろうか。またたびって未成年飲酒と同じようなものなのかな?心配だな……。そんなことを思っているうちに出来上がった料理を皿に盛り付けてテーブルに並べる。
 食事を終えると食器を片付けてから着替える。今日も仕事だ。気合を入れて家を出るとコンビニに寄って朝刊を一部買うと、喫茶店に向かって歩いていった。

 店に着いたので鍵を開けて中に入る。パソコンのある部屋をノックして何も聞こえないのを確認して開けた。中には誰もいない。どうやら二人は帰ったようだ。ホッと胸を撫で下ろすと店内の掃除を始めることにした。
 しばらくして一通り綺麗になったので店内にある時計を見る。まだ時間はあるようなので買ってきた朝刊を読むことにした。相変わらず怪盗ウイングキャットが一面トップで取り上げられている。
 記事を読み進めていくと、昨日テレビで言っていた宝石が返却されたことが書かれていた。鑑定の結果、本物であると証明されたらしい。
 偽物に使われた宝石も本物には劣るのもも非常に価値の高いものだと鑑定され、怪盗は何がしたかったのかと話題になっているそうだ。怪盗が目立ちたいだけにしては金が掛かり過ぎている。宝石展示会側の自演じゃないのか?なんて憶測が飛び交っているようだ。
まさか本当に目立ちたいだけだとは思うまい。

 読み終わると今度は店内にやり残しは無いか確認していく。ふと、カウンターの上に置いてある封筒に気が付いた。なんだろうと思って手に取ってみる。差出人は書いていない。宛名も無ければ住所も無い。裏返しても何も無い。怪しいとは思いつつも開けてみる事にした。中には一紙が何枚か入っていた。
 取り出して読んでいくと驚愕の内容に目を見開いた。




 おじさんへ。

 この手紙を読んでいる頃には、私たちはもう遠くに旅立っていると思います。
 突然いなくなったりしてごめんなさい。でも、どうしてもやらなきゃいけないことが出来たのです。
 本当はちゃんとお別れを言うつもりだったんだけど、決心が鈍っちゃいそうだから会えませんでした。
 本当はもっと一緒にいたかったです。でも、これ以上一緒にいると…………。
 いままでありがとう。さようなら。



                                         翼&猫より


 それを見た私は店のカギを閉めて飛び出した。駅に向かって走る途中でスマホで翼ちゃんに電話を掛ける。しかし、何度掛けても繋がらない。
 嫌な予感を感じながら走り続ける。やがて駅前に着くと改札を抜けてホームに向かう。ちょうど電車が来たところだったので飛び乗った。
 
 息を切らせながら二人の住んでいたマンションに到着する。受付に連絡して呼んでもらおうとしたら思いもよらぬ答えが返ってきた。「いえ、あの部屋はだいぶ前から誰も住んでいませんが……」
 その言葉に愕然としながらも礼を言ってマンションを離れる。どういうことなんだ?どこに行ったんだ?焦燥感に駆られながら当てもなく走り回る。もしかしたら近くにいるかもしれないという思いを抱きながら探し回ったのだが見つからず、とうとう力尽きてしまった。
 こんなのあんまりじゃないか!どうしてこうなったんだ!? 憤りを覚えながらも疲れ果てた身体が言うことを聞かず、時間だけ過ぎていった。

 スマホの時間を確認するために、ポケットに手を突っ込んで、ごそごそやったところで、何かが指先に触れた。何だろうと思って取り出すとそれはあの時計の男の連絡先。私はそれを見て、はっとした。
 そういえば、あの人たちなら翼ちゃんの行き先を知っているんじゃないか?そう思った私は早速連絡を取ることにした。コール音が数回鳴った後、男が電話に出る。

「もしもし、私だけど」
「ああ、喫茶店の。何の用だ?」
「実は、聞きたいことがあって」
 私が切り出すと男は黙って話を聞いてくれた。そして話が終わると口を開く。
「……なるほど、事情はわかった」
「それで、何か知らないかな?」
 期待を込めて聞く私に彼は答えた。
「悪いが知らない」
 それを聞いて肩を落とす私に彼が言う。
「……だが、一応ボスに連絡を取ってみよう」
「すまない、助かるよ」
 そう言うと、私は電話を切った。
 電話をしている内に多少体力が戻って動けるようになったので、とぼとぼと駅へ向かって言った。
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