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翌朝、私は喫茶店に向かって歩いていた。昨日は結局パンケーキだけでお腹いっぱいになってしまったの。朝になっても空腹感が全くなかったので、朝食を抜いている。やはりあの量は50歳近いおじさんにはきつかった。
そんなことを思いながら歩いていると喫茶店が見えてきた……。 店の前には誰かが立っている。誰だろう?男性か?
近付くにつれてそれが誰かわかってくる。なんとそこにいたのはうちの店を監視していた刑事さんだった。確か、角筈署の本橋さんだったな。まさか昨日のことがバレたのか?ドキドキしながらも、店の真ん前にいるので声をかけた。
「おはようございます。今日も来られていたんですね」
「おはようございます。ええ、まあ……」
挨拶を交わすと彼は言葉を濁す。
「どうかされましたか?」
「いえ、実はですね……昨日はこの喫茶店、定休日だったじゃないですか?」
なんでわざわざそんなことを確認するんだろう?もしかして疑われてるとか? 不安になりながらも平静を装って答えることにする。
「はい、そうですよ」
すると、彼の口から意外な言葉が飛び出したのだ。
「実はですね……ここ、何者かが入ったみたいなんですよ」
「はい?何か入った?なんのことですか?」
訳がわからず聞き返した。
「ですからね。この店に誰か侵入したようです。ほら、ドアのところに形跡が残っていますよね」
見てみると、たしかに入り口のところが抉れていた。ドアの隙間に何かを差し込んでむりやりこじ開けたような跡。それを見てようやく理解した。誰かが泥棒に入ったってことか!
「我々も閉店してる間は見ていませんからね。その間にやられたのでしょう」
それを聞いて安心してしまった。よかった。昨日のことがバレたわけじゃないんだ。一気に落ち着きを取り戻した私は刑事さんに言った。
「そうですか。わかりました。じゃあ、とりあえず何か盗まれてないか確認してみますね」
そういってドアを開けた。やはり鍵は壊されているようで、すんなり開いてしまった。
中に入ってみると店内を見渡す限り荒らされた様子はなく、カウンターの中も無事なようだ。ああ、飾っていた絵画が無くなってるな。
それ以外は特に変わったところはなかった。とりあえず翼ちゃんに連絡するか。今起きてるかなあ?
そう思ってスマホを取り出すと翼ちゃんに電話した。幸い2コール目で出てくれた。
『おじさん?』
「あ、もしもし、翼ちゃん?いま大丈夫?」
『どうしたの?』
「あのね、店に泥棒が入ったらしくて」
『ええっ!?それ本当!?』
驚く翼ちゃんに事情を説明することにした。一通り説明を終えると翼ちゃんは考え込むように言った。
『うーん……』
「どうかしたのかい?」
『これってやっぱり被害届け出さなきゃいけないのかなあ、と思って』
「え?どういうこと?」
『だって、私たちとしたら警察にはなるべく関わりたくないでしょ?』
「ああ、そういうことか。でもその警察が発見しちゃってるし、被害届け出さないと逆に怪しまれるんじゃないかなあ」
『そうなんだよね。じゃあ、今から行くから待ってて!』
そう言って電話を切った。さて、どうしたものか……。外で待ってる刑事さんに言っておくか。
「お待たせしました。軽く調べただけだとわからないので、ひとまずはこちらで調べてみます。被害がわかったら改めて届を出そうと思うのですが、よろしいいですか?」
それを聞いた刑事さんは安心したような表情を見せたあと頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
今日は臨時休業だな。
あの後すぐに翼ちゃん達がやってきて、店をくまなく調べ始めた。といってもそれほど広い店ではないので、すぐに終わったんだけど。
「盗聴器とかは付いてないみたいだね。良かった!」
猫ちゃんはホッとしているようだった。
「ロッカーも異常なしだよ」
翼ちゃんの荷物も無事なようだ。
「食器は大丈夫。レジも無事。パソコンはどうだろうなあ。何かされてても私にはわからないな」
データを抜かれたりウイルスを忍び込まされても全然わからない。何せ素人だし。
「被害は絵画だけみたいだね。店内が荒らされなくて良かったよ」
でも、お高いですよ?あれ一億する絵画ですし。まあ、彼女たちにとっては既に用済みなんだろうけどさ。
「監視カメラ、つけとけばよかったなあ」
今更言っても仕方がないことだけど、もっと早く設置してれば良かった。付けようとはおもってたのになあ。
「過ぎたことはしょうがないよ」
翼ちゃんに慰められてしまった。なんか情けないな……。もっとしっかりしないと!
「じゃあ、警察呼んで被害届けだすか。はあ……ドアも取り替えないといけないし、何日か臨時休業だなあ……」
私がため息をつくと、猫ちゃんが肩をたたいてきた。
「まあまあ、そんな時もあるよ!元気出して!」
うう……この子達の方がよっぽど大人じゃないか……。なんだか自分が情けなくなってきた……。
そんなことを思いながら歩いていると喫茶店が見えてきた……。 店の前には誰かが立っている。誰だろう?男性か?
近付くにつれてそれが誰かわかってくる。なんとそこにいたのはうちの店を監視していた刑事さんだった。確か、角筈署の本橋さんだったな。まさか昨日のことがバレたのか?ドキドキしながらも、店の真ん前にいるので声をかけた。
「おはようございます。今日も来られていたんですね」
「おはようございます。ええ、まあ……」
挨拶を交わすと彼は言葉を濁す。
「どうかされましたか?」
「いえ、実はですね……昨日はこの喫茶店、定休日だったじゃないですか?」
なんでわざわざそんなことを確認するんだろう?もしかして疑われてるとか? 不安になりながらも平静を装って答えることにする。
「はい、そうですよ」
すると、彼の口から意外な言葉が飛び出したのだ。
「実はですね……ここ、何者かが入ったみたいなんですよ」
「はい?何か入った?なんのことですか?」
訳がわからず聞き返した。
「ですからね。この店に誰か侵入したようです。ほら、ドアのところに形跡が残っていますよね」
見てみると、たしかに入り口のところが抉れていた。ドアの隙間に何かを差し込んでむりやりこじ開けたような跡。それを見てようやく理解した。誰かが泥棒に入ったってことか!
「我々も閉店してる間は見ていませんからね。その間にやられたのでしょう」
それを聞いて安心してしまった。よかった。昨日のことがバレたわけじゃないんだ。一気に落ち着きを取り戻した私は刑事さんに言った。
「そうですか。わかりました。じゃあ、とりあえず何か盗まれてないか確認してみますね」
そういってドアを開けた。やはり鍵は壊されているようで、すんなり開いてしまった。
中に入ってみると店内を見渡す限り荒らされた様子はなく、カウンターの中も無事なようだ。ああ、飾っていた絵画が無くなってるな。
それ以外は特に変わったところはなかった。とりあえず翼ちゃんに連絡するか。今起きてるかなあ?
そう思ってスマホを取り出すと翼ちゃんに電話した。幸い2コール目で出てくれた。
『おじさん?』
「あ、もしもし、翼ちゃん?いま大丈夫?」
『どうしたの?』
「あのね、店に泥棒が入ったらしくて」
『ええっ!?それ本当!?』
驚く翼ちゃんに事情を説明することにした。一通り説明を終えると翼ちゃんは考え込むように言った。
『うーん……』
「どうかしたのかい?」
『これってやっぱり被害届け出さなきゃいけないのかなあ、と思って』
「え?どういうこと?」
『だって、私たちとしたら警察にはなるべく関わりたくないでしょ?』
「ああ、そういうことか。でもその警察が発見しちゃってるし、被害届け出さないと逆に怪しまれるんじゃないかなあ」
『そうなんだよね。じゃあ、今から行くから待ってて!』
そう言って電話を切った。さて、どうしたものか……。外で待ってる刑事さんに言っておくか。
「お待たせしました。軽く調べただけだとわからないので、ひとまずはこちらで調べてみます。被害がわかったら改めて届を出そうと思うのですが、よろしいいですか?」
それを聞いた刑事さんは安心したような表情を見せたあと頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
今日は臨時休業だな。
あの後すぐに翼ちゃん達がやってきて、店をくまなく調べ始めた。といってもそれほど広い店ではないので、すぐに終わったんだけど。
「盗聴器とかは付いてないみたいだね。良かった!」
猫ちゃんはホッとしているようだった。
「ロッカーも異常なしだよ」
翼ちゃんの荷物も無事なようだ。
「食器は大丈夫。レジも無事。パソコンはどうだろうなあ。何かされてても私にはわからないな」
データを抜かれたりウイルスを忍び込まされても全然わからない。何せ素人だし。
「被害は絵画だけみたいだね。店内が荒らされなくて良かったよ」
でも、お高いですよ?あれ一億する絵画ですし。まあ、彼女たちにとっては既に用済みなんだろうけどさ。
「監視カメラ、つけとけばよかったなあ」
今更言っても仕方がないことだけど、もっと早く設置してれば良かった。付けようとはおもってたのになあ。
「過ぎたことはしょうがないよ」
翼ちゃんに慰められてしまった。なんか情けないな……。もっとしっかりしないと!
「じゃあ、警察呼んで被害届けだすか。はあ……ドアも取り替えないといけないし、何日か臨時休業だなあ……」
私がため息をつくと、猫ちゃんが肩をたたいてきた。
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