上 下
12 / 30
チュートリアル

12 種族の差、職種の差

しおりを挟む
「あ、ごめん。もうすぐパパが帰ってくる時間だから、私そろそろログアウトするね」

 あれからカニを何匹か倒した頃、るなちゃんがそう言った。
 もうこんな時間だったんだ。楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうね。


「ああ、もうこんな時間なの? 私も落ちなきゃ!」
「わかった、じゃあ、今日はこの辺で終わりにしよう」
「そうだね、続きはまた明日にしよう!」

 私たち三人が同意する。
 もっとやっていたい気もするけど、夕ご飯とかお風呂もあるからね。ずっとやってたらお母さんに怒られちゃう。

「ねえ、これって、街まで戻った方がいいのかな?」
「街まで戻った方がいいかも。るな、時間大丈夫?」
「戻るだけなら大丈夫!」
「じゃあ、急いで戻ろう! よーい、どん!」

 街に向かっていきなり走り出すみさと。
 ええっ!? ずるい! みんなでみさとの後を追う。
 はるちゃんが凄い勢いで追い抜いていった。えっ、速い?!
 私たちの中で一番足が速いのは、るなちゃん。一番遅いのははるちゃんだ。
 それなのに、みさとに余裕で追いついて追い越していく。
 もしかして、これが種族の差ってやつ?

 突然始まった街までの競争は意外な結果に終わった。
 一着、はるちゃん。二着、私。三着がみさとで、最下位がるなちゃんだった。

「足が速いってこんな気分なのね。いい気分だわ」
「身体が思うように動かないよぉ~」

 学校ではマラソン最下位常連のはるちゃんはトップを走れて上機嫌だ。
 一方、運動神経のいいるなちゃんは悔しそうにしてた。

「これって種族の差だよね? エルフってそんなに足早いの?」

 はるちゃんに尋ねると、ステータスを見せてくれた。

「私はこんな感じだけど、みんなのとそんなにステータス違う?」

 他のみんなもステータスを表示させて見比べる。
 ほえ~、全然違うんだ……。













*******

 私とみさとはヒューマンでわりと数字がバランスよく振り分けられてる。PIEが少し低いかな?
 るなちゃんのドワーフはHPが80もあってSTRとPIEが高い。代わりにMP、AGI、INT、LUKが低い。
 はるちゃんのエルフはHPが50しかなくて、STR、とLUKも低い。DEX、AGI、PIEが高くて、INTがなんと二桁もあった。 INT、15?!

「ああ、それね。私、レベル上がった時にINTにポイント振ってたから」
「えっ、戦いながらステータスの割り振りなんてやってたの?」
「そそ。魔法の威力が上がってだんだん倒すのが早くなってたでしょ?」

 はるちゃん器用だなあ。私はタコ殴りに必死で、そんなことする余裕なかったよ。
 
「ねえ、このAGIってのが足の速さだよね? 私、はるみの半分しかないんだけど?」
「まあ、ドワーフだからねえ。そんなもんじゃないの?」
「これってどうやって振り分けるの? 私、手付かずのままなんだよね」
「ステータス画面で指でこう動かすといいんだよ」
「なるほど。こう……」
「待って、るな! それはやめた方がいいよ!」

 AGIを上げようとしたるなちゃんを慌てて止めるはるちゃん。間一髪、操作を止めることが出来たみたいだ。
 っていうか、AGIって上げちゃだめなの? 私、上げちゃったよ?

「えっ、上げちゃいけないの?」
「だって、るなはドワーフでプリーストでしょ? 欠点のAGIを伸ばしてもプリとしては強くならないよ?」
「そうなの? プリーストだとだめなんだ……」

 しょんぼりとするるなちゃん。なんだかかわいそう。

「まあまあ、元気出して! そのうち強くなるからさ!」
「そうそう、これからだよ、これから!」
 
 落ち込むるなちゃんを励ます私とみさと。
 そうだよね、まだ始めたばっかりだもん。大丈夫だよ!

「……ステータスだけ見るなら、あなたたちファイターよりも、るなの方が強いわよ? 現時点ではね」

 はるちゃんがさらりと言う。
 ええー、そうなの?

「本当? やったー!」
「今はね。でも、プリーストがファイターと張り合うのはやめた方がいいと思う」
「なんで?」
「スキルが違うからよ。役割が違うと言ってもいいわね。ファイターは物理攻撃がメインで、プリーストは回復や補助がメインだから」
「そっかぁ……。でも、これからは私が守ってあげるからねっ!」
「期待してるわよ。るな」

 そう言って笑いあうはるちゃんとるなちゃん。仲良いなあ。
 結局ステータス上げはSNSや動画で調べてからにしようってことになった。
 スタートダッシュした人たちの情報がそろそろ出るかもしれないからって。
 MMOはネットで情報を共有する前提で作られているから、情報収集は必須なんだとか。
 大変だなあ……。

 その後、しばらく四人でおしゃべりしてログアウトすることになった。
 またね! と手を振って別れる私たち。
 VRの電源ボタンを押すと、目の前のファンタジー世界が消えて真っ暗になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ローラシア・フロンティア クロスオーバー!  トリックスター編

モブ
SF
長年親しんでいたVRMMOから突然追放されたゆうすけは途方に暮れていた。そんなある日、姉から「娘がVR機器を探している」とメールが来て……。 新作のVRMMOが出るならやるしかないよね? 不具合修正報告 6/26 『乗るべきだった』『蟹の声』において、NFT装備が表示されない不具合を修正しました。 7/06 『とびだせ大作戦』において、モンスター討伐時にパンゲアが取得できていなかった不具合を修正しました。 ローラシア・フロンティアをご利用のお客様にご迷惑をおかけ致しました事を、深くお詫び申し上げます。 ※注意! この小説は画像をふんだんに使います。 下部にソードマスター編のリンクあります

魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~

虎柄トラ
SF
音ゲーが大好きな高校生の紫乃月拓斗はある日親友の山河聖陽からクローズドベータテストに当選したアーティファクト・オンラインを一緒にプレイしないかと誘われる。 始めはあまり乗り気じゃなかった拓斗だったがこのゲームに特典として音ゲーが付いてくると言われた拓斗はその音ゲーに釣られゲームを開始する。 思いのほかアーティファクト・オンラインに熱中した拓斗はその熱を持ったまま元々の目的であった音ゲーをプレイし始める。 それから三か月後が経過した頃、音ゲーを全クリした拓斗はアーティファクト・オンラインの正式サービスが開始した事を知る。 久々にアーティファクト・オンラインの世界に入った拓斗は自分自身が今まで何度も試しても出来なかった事がいとも簡単に出来る事に気づく、それは相手の攻撃をパリィする事。 拓斗は音ゲーを全クリした事で知らないうちにノーツを斬るようにパリィが出来るようになっていた。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ
SF
第三次世界大戦後、2084年。 日本は戦災によって監視社会となり、人々は自由のない日々を過ごすこととなった。 ある者はVRMMO「レヴェリー・プラネット」に興じることで監視のストレスから逃げようとする。 またある者は、テロによって監視社会を革命しようとする。 その他、ゲームに課金するために犯罪に走る者、その犯罪者を利用する者、取り締まる者、 多くの人がそれぞれの道を歩いていく。 この物語は、そんな人間模様を 『ブギーポップは笑わない』や『パルプ・フィクション』のような形式でまとめた小説です。 一括投稿。

病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん
SF
生まれつき体の弱い少女、夏凪夕日は、ある日『サンライズファンタジー』というフルダイブ型VRMMOのゲームに出会う。現実ではできないことがたくさんできて、気が付くとこのゲームのとりこになってしまっていた。スキルを手に入れて敵と戦ってみたり、少し食事をしてみたり、大会に出てみたり。初めての友達もできて毎日が充実しています。朝起きてご飯を食べてゲームをして寝る。そんな生活を続けていたらいつの間にかゲーム最強のプレイヤーになっていた!!

冒険者育成学園の日常 

モブ
SF
地球がファンタジーへと改変されてしまってから二十年数年後。 東京にある冒険者を目指す若者を教育育成する機関、冒険者育成学園の日常を「AIのべりすと」が語る、成り行き任せの現代ファンタジー! になるつもりだったのに……どうしてこうなった? AI任せのノープロットなので、どうなるかなんてわからないです! 4/11 全然ファンタジーになってくれないのでカテゴリをファンタジーからSFに変更しました。 4/19 完結しました。

Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種
SF
そのVRMMOは【犯罪者】ばかり――? 新作VRMMO「Festival in Crime」。 浮遊監獄都市を舞台に、【犯罪者】となったプレイヤー達がダンジョンに潜ったり、時にプレイヤー同士で争ったりしつつ、ゲームを楽しんでプレイしていく。 そんなお話。

処理中です...