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最終章
第127話 また、働きたいな
しおりを挟む「たまには、こういうのも悪くはねぇ……ご褒美ってやつだ」
おじさんは、ニカっと笑みを浮かべながら言葉を受かべながら親指絵を立てる。
まるで、私から電撃を受けて悦びを感じているかのように。
「ありがとな、気持ちよかったぜ──」
本当に、よかったのかな? そんな疑問にかられながら、首をかしげる。
「世の中には、異性から罵声を浴びたり、痛みを受けたりすることに快楽や愉悦を感じるものもいるのよ。彼は、そういうタイプでもあったかもしれないわね」
アンナさんがやってきて、耳元でささやいた。
「そ、そうなんっですか?」
「そうよ、私なんてそう言った人をターゲットに接客してるみたいなものよ」
「あ、確かに──アンナさんが接客している人って、そんな感じの人多いですもんね」
「なんですか? そんなニタニタしたした表情で──とっても気持ち悪いので、やめてもらえませんか?」
「あひぃっ!! すいません~~」
お客さんは、ニタニタと笑みを浮かべて喜んで嬉しそうに喜んでいる。ギッとにらみつけて、罵声に近い言葉を浴びせているにもかかわらずだ──。
確かに、そうだ。
私には理解できないけれど、世の中には不思議な思考を持つ人もいるんだなぁ……。
「は~~い、おにいちゃ~~ん。お待たせ──なでなでしてあげるね~~」
「レーノちゃん、今日もかわいいね~~。だいちゅき~~」
「お兄ちゃんありがとー、レーノとってもうれしー!」
今日もドリーム☆カフェはお客様のために、いつもの日常が繰り広げられていた。
私も、最後のお仕事──悔いが残らないように、ああしておけばよかったって思ったりしないように全力で頑張ろう。
それからも、私は悔いが残らないように精一杯対応。
私を指名してくれた人。みんな「お久しぶり」とか「会いたかったよ」とか言ってくれたのがうれしかった。
やっぱり、服装とかは恥ずかしかったけれど。
そして、今日で最後だということを告げると、みんな寂しそうに労いの言葉をくれた。クエストの時もそうだったけど、みんなから言葉をかけてくれると、頑張ってよかったなって思える。
そんな風に考えて、お客さんたちと接して、料理を作って──頭を下げて時々話したりして。
「ありがとうございました──」
最後のバイト、あっという間に終わってしまった。片付けてから着替え室へ。
更衣室で、3人同時に着替えていると、レーノさんが話しかけてきた。
「最後に、かける言葉があるから──ちょっと外へいいかしら」
「わかりました!」
なんなのかな? レーノさんはいつもの真顔、アンナさんはにっこりとした笑顔でこっちを見ている。
私服に着替え、店の外へ。
夕焼けで、店がオレンジ色に光っている。とってもきれい──だけど、最後だと思うとどこか切ない気持ちになる。
いつもはお客さんが座っている屋外の席に座って、話が始まる。
アンナさんも、にっこりと笑っている。
「ウィンちゃんの活躍は、聞いてるわ。凄いんだって」
「そ、そんな……」
思わず、顔を赤くしてしまう。それは、私だけの戦果ではない。ガルド様、ニナさん、それだけじゃない。周囲の人たちがサポートしてくれたおかげで、私は自分の力を出し切ることが出来ている。
「それは、周囲の人たちが──」
そう言いかけた時、レーノさんが私の顔をじーっと見てから──軽くデコピンしてきた。
ちょっとだけ痛いおでこを、右手で押さえながらレーノさんをじっと見る。
「もう、そこまで謙遜する必要ないわ」
「そ、そんな……」
「たとえ周りのサポートがあったとしても、それを生かして大金星を挙げたのは、あなたの成果よ。それは、しっかりと誇りなさい」
「そうよ、もっと自信もっていいわ。凄いじゃない!」
アンナさんはにっこりとした笑顔でそう言って、キッと親指を立てる。レーノさんは、接客の時以外は無表情で冷静な印象があるけどここぞというときは私たちのことを気遣ってくれたり、助言してくれたり──私のお姉さんのような存在だ。
2人に元気をもらって、気分が上向いた。
レーノさんが、ふっと微笑を浮かべてくる。
「あなたと一緒にいて、とても楽しかったわ。何事にも一生懸命な所がとっても印象に残っていて、こっちももっとあなたに教えたいって気持ちになれる。多分、ガルド君もそこに引かれたんじゃないかしら」
「あ……」
「あなたのこと、応援してるわ、これからも頑張りなさい」
「うん、私も──ウィンちゃんと一緒にいれてよかった。また会おうね」
そして最後、大きく手を振って私たちは分かれた。また、ここで働いてみたいなぁ……。
「ウィンちゃん、今までありがとね~~」
「たまには店に来なさい、いろいろサービスしてあげるわ」
「こちらこそ、今までいろいろお世話になりました。また、いつか会いに行きます」
精一杯の、感謝の言葉をかけてこの場を去っていく。
本当に、2人には感謝しかない。経験もない私に、いろいろ教えてくれた。料理についても、ここで教わったことを生かしてガルド様にごちそうしたりした。
ガルド様は──。とても喜んでくれた。だから、とても感謝している。
絶対、どこかで恩返ししよう──。
最後、2人に言葉をかけてもらって、とっても嬉しかった。
私の都合で、離れ離れになっちゃうけれど、またどこかで会っていろいろ話してみたいとは思う──。
帰り道、賑やかな繁華街へと入っていく。夕日が沈んで、夜になろうとしている。
そうだ、夕ご飯の買い物しなきゃ。
人通りの多い繁華街、私はまるで何事もない日常であったかのようにいろいろなお店の品物に視線を移していった。
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