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最終章
第107話 ウィン。大活躍
しおりを挟むだからこっちがそれを理解していていれば何の問題もない。
少しずつ、相手を倒していく。しかし、相手もただでは転ばない。
相手も、連携と強力な攻撃で対抗してくる。それに対して、全員で連携を取りながら対応していく。
やはり、相手が強いこともあって時折苦戦してしまう。
このまま、真正面から戦っても負けはしないだろうが、負傷者が多く出てしまう。
最も、受ける被害を最小限にとどめるには──彼女の力を借りるしかない。
周囲に向かって叫ぶ。
「ウィンに吹っ飛ばしてもらう。いったん引こう」
「いいアイデアね。一体ずつ片付けていくより、ずっと楽だわ」
「わかった、伝えればいいんだろ」
そして俺やビッツ、エリアが周囲に向かって叫ぶ。まずは他の冒険者たちが1人、また1人と撤退していく。
魔物たちはそれに対して追って来ようとするが、俺たちがバラバラになって対応していく。1人が魔物を何体も対応することになってしまうが、それでも少しずつ後退しながらなんとか不利を取らないように戦う。
そして、互いにアイコンタクトをとる。気を合わせたように、俺たちは魔物たちから瞬時に距離をとって後退。
両足に魔力を使ってジャンプ、一瞬で魔物たちと距離をとる。左右に視線を振って他の仲間たちがまだ戦っていないか確認。
「大丈夫。みんな撤退したわ」
エリアの言葉通りだ、後退した場所には、面食らってこっちを追おうとしている魔物だけ。
俺たちが何とか距離をとった瞬間。後方にいるウィンに向かって叫んだ。
「ウィン今だ」
「わかりました」
ウィンは、大きく深呼吸をした後自身の杖を天に向かってあげる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ライトニング・ボルテージ!!」
大爆発を起こし、周辺にいた魔物たちを木っ端みじんに吹き飛ばしていく。
煙が晴れると、こと切れた魔物たちの亡骸がそこら中に散乱している。しかし──。
「まだだ、倒し切っていない」
この前とは違う。数が多く、範囲もそれなりに広い。一撃じゃ倒し切れない。ウィンも、それを理解していた。
「大丈夫です! わ、わかってます」
まだ、爆発した場所から離れた場所にいる魔物たちが残っていたのだ。その数、数十体ほど。
ボロボロではあるが、まだ戦う意思を持っている。
ウィンが強気な口調で言葉を返し、もう一度杖から術式を繰り出していく。
「ふぅ──いきます!」
やはり、連続となると体力や魔力的にきついのだろうか。さっきと比べて、息が上がっている。
それでも、ウィンは魔力を振り絞って再度攻撃を繰り返していく。それくらいで手を止めるウィンではないことは理解している。
「サンダー・ブラスト!!」
再び、敵がいる場所へ攻撃。ウィンの連続攻撃。いくら強化されたとはいえ一般クラスの魔物でウィンの攻撃に対抗できるやつはいない。
残りの敵たちは、ただウィンの攻撃を受け、亡骸と化していった。
そしてとどめの一撃を、ウィンが繰り出す。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ウィンの象徴である赤い稲妻が魔物たちに直撃。最後の魔物たちは圧倒的な威力にひとたまりもなく爆発し消滅していった。
ウィンは、あまりにも力を消耗したのかぺたんと膝をついてしまった。
慌てて駆け寄り、肩を貸す。
「大丈夫?」
「はい。ちょっと魔力を使い過ぎただけです。ちょっと休めば、立てますから」
ウィンは、安心しきっているせいか肩を寄せてきた。微笑な表情で、俺の方を向いてくる。その姿が、とってもかわいい。
それから、ニナがやってきた。
「ふう、何とか終わった……」
「はい、先輩が助けてくれなかったらどうなっていたことか。さすがは先輩です。凄いですね」
ニナは、きらきらとした目つきで俺に近づいてくる。そして、俺の胸に自分の顔を埋めてきたのだ。
「ニナ──」
「いいじゃないですか。私動けませ~ん」
わざとらしく演技っぽい口調で言葉を返す。まあ、今回は連戦の上に強い敵だったし甘えてもいいだろう。
ウィンがいる手前気が引けるけど、優しく髪をなでる。
ニナは、嬉しそうにほほ笑んで、俺の顔をじっと見ていた。
「ありがとうね、ニナ」
ウインは、残念そうな複雑な表情をしている。
後輩の士気を高めるのは、先輩である俺の役目ではある。
仕方がないとはいえ、罪悪感を感じてしまう。
そんな時に、俺の隣にビッツがやってきた。ビッツも消耗しているのか、大きく息を吐いて腰を下ろす。
「これ、俺たちの動き読まれてるよな」
「それ、俺も思った」
俺も、戦いながら感じていたしビッツも理解していたのだろう。
「敵は、俺たちの中にもいるってことだな」
ビッツの言葉に、この場の雰囲気が強く引き締まる。
その言葉通りだ。確実に、俺たちの行動を読んで魔王軍のやつらに売り渡そうとしている。
次にやることは、そんな奴らの正体を暴くことだ。また、いろいろな人たちの協力を必要とすることになるだろう。
しかし、前に進むしか道はない。放っておけば、いつか甚大な被害を出すだろう。
その前に、何とか食い止めないと──。
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