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2章
第99話 想い──
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「だから、もうこっちはウィンに干渉したりはしないわ。必要があったら、助け舟は出すけれど──」
「お前だって、いろいろひどいことを言ってきた俺たちとはいたくはないだろう──」
ウィンは、うつむいたまま何も返さない。いくら今取り繕っても今まで両親が浴びせてきた言葉は消えない。遅すぎたのだ。
それでも、今までのような険悪な仲と比べると、かなり良くなった方だ。
「すまないとは、思っている」
「──はい」
ウィンは、どう返せばいいか悩んでいるのだろう。迷っているような表情で、コクリと返事をした。
「そこまで言うなら、こっちも無理強いはしない。2人とも、好きに暮らしていいぞ」
「私たちのことは、忘れてもいいわ。これからは幸せに暮らすのよ、ウィン──」
ウィンの表情がはっとなり、顔をほんのりと赤くする。
俺もウィンも、その言葉をずっと待っていた。罵声ではない、ウィンを応戦する言葉。
「一応言っておく。仮にも俺達は両親なんだ。何かあったら、帰ってきても良い、話位は、聞いてよいぞ」
「何か悩みがあったら、話は聞いてあげるわ」
「は、はい!」
返事をするウィンの表情が、依然と比べて明るい。やはり、両親に認めてもらったという事実が、ウィンの心の希望になっているのだろう。
そして、話が終わると深々と頭を下げる。
「お父様、お母様、ありがとうございました」
ようやく、ひとつの問題が解決した。
こんな家族でも、ウィンにとって両親は彼らしかいない。俺がどれだけ必死にウィンのことを想っても、尽くしても代わりになんかなれない。
ウィンの中の、心の重荷が、ひとつ取れたような気がした。
最高の答えと言えばそうですとは言えないが、ウィンにとって良い結果となったのは間違いない。
苦労はしたけれど、ウィンの安心したような表情を見ていると頑張ってよかったという気持ちになる。
あとは、最後に挨拶をして帰るだけ。
そんなことを考えて部屋を出て、自分たちの部屋へと戻ると、ウィンが話しかけてきた。
「この後、話があります。よろしいでしょうか?」
夜。
とうとう俺とウィンは、明日帰ることになった。
夕食も、俺達をもてなす目的だったのか、高そうな柔らかいパンとおいしい肉のステーキ。
それから、いったん家を出て庭へ。
雲一つない透き通った空。こじんまりとした街なので照明が少なく、そのおかげで星々がとてもきれいに夜空に咲いている。
涼しい夜風が頬に触れ、とても心地よい。
そして、後ろを振り返ってウィンに話しける。
「で、話って何だ。ウィン」
ここにいる理由。それは簡単。ウィンが呼び出したのだ。
伝えたいことがあるから、ここに来てくださいと──。
向かい合う俺とウィン。
ウィンは、俺から目をそらして真剣な表情をしている。まるで、大切なことを伝えようとしているかのように。
真剣な表情でごくりと息を呑んだ後、話し始める。
「ガルド様──」
ウィンが俺の胸に飛び込んできた。
そして、はっとした表情で俺の胸に飛び込んできた。
吸い込まれそうな綺麗な瞳で、俺の方をじっと見ている。
「伝えたいことが、あるんです」
真剣な表情で俺のことをじっと見つめている。ほんの少し下を向いてもじもじとした後、再び俺に視線を向けてきた。
「今まで、私のことを大切にしてくれて、接してくれて──本当に嬉しかったです」
「それは、どうも」
「ガルド様のことが、とっても愛しいです。ずっと同じ屋根の下で済んでいて──わかったんです。私は、ガルド様のことが好きなんだって」
好き──。その言葉に、心臓が止まりそうなくらいドキッとした。
それが──今のウィンの気持ちなんだ。確かに俺はウィンを大切にしていた。絶対に悲しませまいと。
けれど、ウィンが俺にそう言った感情を持っているとは思いもよらなかった。
どう受け答えをすればいいかわからず、戸惑ってしまう。
何せ初めてのことだ。言葉一つでウィンが傷ついてしまうと考えると、プレッシャーを感じてしまう。
ウィンのことをじっと見て考え込んで──答えを出す。
「それって、告白ってことかな?」
「はい、告白です。私は、ガルド様のことが心の底から好きです」
「胸がどきどきして、いつもガルド様のことを意識してしまっていて──。私、ガルド様のことが好きなんだって、わかったんです」
どこか遠い世界の出来事のような、夢であるかのようなふわふわした感覚だ。
大切な人だとは思っていた。しかしそれはあくまで大切なパートナーというか、仲間というかそんな感じの人とであった。
異性として、交際相手としてではなかった。
どうすればいいか、戸惑う。
しばらく時間が経った。考えて──迷って、答えは一つしかないってわかった。ずっとウィンとともに過ごして、ウィンは俺に尽くしてくれた。
優しくて、いつも俺のことを想ってくれて。
時にはハプニングみたいなこともあったけれど、とても楽しかった。ウィンも、心から笑ってくれた。
そんなウィンが、俺に好意を抱いてくれた。
それなら、答えは一つしかない。
「お前だって、いろいろひどいことを言ってきた俺たちとはいたくはないだろう──」
ウィンは、うつむいたまま何も返さない。いくら今取り繕っても今まで両親が浴びせてきた言葉は消えない。遅すぎたのだ。
それでも、今までのような険悪な仲と比べると、かなり良くなった方だ。
「すまないとは、思っている」
「──はい」
ウィンは、どう返せばいいか悩んでいるのだろう。迷っているような表情で、コクリと返事をした。
「そこまで言うなら、こっちも無理強いはしない。2人とも、好きに暮らしていいぞ」
「私たちのことは、忘れてもいいわ。これからは幸せに暮らすのよ、ウィン──」
ウィンの表情がはっとなり、顔をほんのりと赤くする。
俺もウィンも、その言葉をずっと待っていた。罵声ではない、ウィンを応戦する言葉。
「一応言っておく。仮にも俺達は両親なんだ。何かあったら、帰ってきても良い、話位は、聞いてよいぞ」
「何か悩みがあったら、話は聞いてあげるわ」
「は、はい!」
返事をするウィンの表情が、依然と比べて明るい。やはり、両親に認めてもらったという事実が、ウィンの心の希望になっているのだろう。
そして、話が終わると深々と頭を下げる。
「お父様、お母様、ありがとうございました」
ようやく、ひとつの問題が解決した。
こんな家族でも、ウィンにとって両親は彼らしかいない。俺がどれだけ必死にウィンのことを想っても、尽くしても代わりになんかなれない。
ウィンの中の、心の重荷が、ひとつ取れたような気がした。
最高の答えと言えばそうですとは言えないが、ウィンにとって良い結果となったのは間違いない。
苦労はしたけれど、ウィンの安心したような表情を見ていると頑張ってよかったという気持ちになる。
あとは、最後に挨拶をして帰るだけ。
そんなことを考えて部屋を出て、自分たちの部屋へと戻ると、ウィンが話しかけてきた。
「この後、話があります。よろしいでしょうか?」
夜。
とうとう俺とウィンは、明日帰ることになった。
夕食も、俺達をもてなす目的だったのか、高そうな柔らかいパンとおいしい肉のステーキ。
それから、いったん家を出て庭へ。
雲一つない透き通った空。こじんまりとした街なので照明が少なく、そのおかげで星々がとてもきれいに夜空に咲いている。
涼しい夜風が頬に触れ、とても心地よい。
そして、後ろを振り返ってウィンに話しける。
「で、話って何だ。ウィン」
ここにいる理由。それは簡単。ウィンが呼び出したのだ。
伝えたいことがあるから、ここに来てくださいと──。
向かい合う俺とウィン。
ウィンは、俺から目をそらして真剣な表情をしている。まるで、大切なことを伝えようとしているかのように。
真剣な表情でごくりと息を呑んだ後、話し始める。
「ガルド様──」
ウィンが俺の胸に飛び込んできた。
そして、はっとした表情で俺の胸に飛び込んできた。
吸い込まれそうな綺麗な瞳で、俺の方をじっと見ている。
「伝えたいことが、あるんです」
真剣な表情で俺のことをじっと見つめている。ほんの少し下を向いてもじもじとした後、再び俺に視線を向けてきた。
「今まで、私のことを大切にしてくれて、接してくれて──本当に嬉しかったです」
「それは、どうも」
「ガルド様のことが、とっても愛しいです。ずっと同じ屋根の下で済んでいて──わかったんです。私は、ガルド様のことが好きなんだって」
好き──。その言葉に、心臓が止まりそうなくらいドキッとした。
それが──今のウィンの気持ちなんだ。確かに俺はウィンを大切にしていた。絶対に悲しませまいと。
けれど、ウィンが俺にそう言った感情を持っているとは思いもよらなかった。
どう受け答えをすればいいかわからず、戸惑ってしまう。
何せ初めてのことだ。言葉一つでウィンが傷ついてしまうと考えると、プレッシャーを感じてしまう。
ウィンのことをじっと見て考え込んで──答えを出す。
「それって、告白ってことかな?」
「はい、告白です。私は、ガルド様のことが心の底から好きです」
「胸がどきどきして、いつもガルド様のことを意識してしまっていて──。私、ガルド様のことが好きなんだって、わかったんです」
どこか遠い世界の出来事のような、夢であるかのようなふわふわした感覚だ。
大切な人だとは思っていた。しかしそれはあくまで大切なパートナーというか、仲間というかそんな感じの人とであった。
異性として、交際相手としてではなかった。
どうすればいいか、戸惑う。
しばらく時間が経った。考えて──迷って、答えは一つしかないってわかった。ずっとウィンとともに過ごして、ウィンは俺に尽くしてくれた。
優しくて、いつも俺のことを想ってくれて。
時にはハプニングみたいなこともあったけれど、とても楽しかった。ウィンも、心から笑ってくれた。
そんなウィンが、俺に好意を抱いてくれた。
それなら、答えは一つしかない。
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