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2章
第76話 両親との再会。しかし──
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「懐かしい──です」
ウィンはほっと、落ち着いたような様子で街をまじまじと見る。
やはり、故郷についたということで特別な気分になっているということだろう。
「あ……すいません。つい見惚れてしまって」
「いいよいいよ」
「実家の方、案内しますね」
そして俺達はウィンの家へと向かっていく。
街の人々でにぎわう大通りや、実質的な政府機能を持つ王宮を通り過ぎた街のはずれに、ウィンの実家はあった。
「ここが、私の実家です」
「うん、なかなか大きいね」
芝生やお花畑がある広い庭の先に、白い石造りの大きな家。
街の中で、一番豪華に造られている感がしていて、身分の高い人の家だというのがわかる。
ウィンの家は貴族だったのだから、特に不自然ではないが。
家に入る前にウィンに一声かける。
ぎゅっと握っていたその手が、どこか震えているように感じたからだ。心の準備が出来ていないのかな?
「ウィン、入るよ。心の準備は大丈夫?」
ウィンは俺をしばしの間じっと見た後、答える。
「ガルド様。ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫です」
ウィンはプルプルと顔を振った後、きりっとした表情を作り言葉を返した。
覚悟は出来ているのだろう。それなら、ここでその覚悟を否定する理由はない。
「わかった、行くよ──」
「はい」
そう言ってウィンの手を強く、ぎゅっと握った。
そして俺は、家の扉をトントンと叩く。
どんな人なのだろうか。とてもドキドキする。
扉を開け入口に立っていると、中から若い女の人の言葉が返ってきた。
「どちらさまでしょうか」
「ウィンです。両親に、逢いに来ました」
そこにいたのは侍女──らしきメイド服を着た人。
ウィンと視線が合うなりはっとした表情になる。
「あっ、ウィン様。お久しぶりです。今案内しますね。こちらです」
メイドさんは廊下の方へと足を運んでいった。恐らく、この家に仕えているのだろう。
俺達はメイドの人の後をついていく。
廊下を行き、俺達が案内されたのは、相対式の黒いソファーのある応接室。
「お茶を持ってきます。待っててください」
「わかりました」
俺達は、ソファーに隣同士に座る。
両親との再会だからか、ウィンは深呼吸をして心を落ち着けさせている。
やはり、緊張しているのだろう。ウィンの手を、優しくぎゅっと握る。
ウィンはすぐに俺の方を向いて、ちょっとだけ硬かった表情が柔らかくなった。
「あ、ありがとうございます。心がおちつきました」
「それはよかった」
にこっと笑顔を作り、言葉を返す。ウィンの心が落ち着けばそれでいい。
しばしの時間が経って、メイドの人がお盆にティーカップをもってやって来た。
コトッと、机に紅茶が置かれる。
俺とウィンの分と──机の反対側に2つ。
恐らくは、両親の分だ。
そして、しばしの時間が経つと、扉が開く。
キィィィ──。
1人は、大きく髭を伸ばした中年の男の人。
もう1人は釣り目で小太り。俺達をにらみつけている。
どことなくウィンの面影があるおばさん。
「ウィン──」
髭を生やしていて、俺と同じくらいの背丈のお父さんがボソッとつぶやいた。
ウィンはすぐに立ち上がって、頭を下げる。
「お父様。帰ってまいりました」
父親はウィンの話を聞くそぶりも見せずに俺の方に視線をむけ、にらみつけてきた。
「なんだ、この男は」
「ガルド様です。困っていた私を助けてくれて、住む場所を与えてくれました」
「フン。なんの目的なのやら」
母親の方が、不機嫌そうにつぶやいた。そう考えてしまうのも不思議じゃない。
事実、ウィンは俺と出会うまでそんな被害にあっていた。
もちろん、そんなことにはなっていない。きちんと、説明しないと。
そして俺達は握手をする。
まずは、敵ではないと意思表情をする事からだ。
「ガルドです。よろしくお願いします」
「俺の名はラデック。……こちらこそよろしくな」
「私がウィンの母イリヤ。よろしく」
二人と手を取り合ったものの、返ってくる両親の言葉がどこかぎこちない。どこか、腫れ物に触れているような──。
重苦しい雰囲気の中、父親がオホンと咳をすると、話が始まる。
「まずはウィン。王都で、お前がどうなっているか聞きたい」
「えっ……」
その言葉にウィンは言葉を失ってしまう。俺も、いきなりそんな話が来るとは思っていなかった。
どうすればいい……。いくら何でも戦う言葉出来なくなって奴隷になったとは言えない。
ウィンのいきさつを話す。
無理やりパーティーを解散させられたこと。それから行き場所を失ってしまったこと。
そして、そんな身も心もボロボロになった状態で俺が助けたこと。
両親は、しばらくの間黙りこくったまま。
俺が紅茶を一口付けて、コトッと机に置くと、ラデックが言葉を返し始めた。
「つまり、ウィンはもう戦えないということだな?」
その言葉に、ウィンは体を震えさせてしまう。
「はい──」
恐らく、トラウマがよみがえっているのだろう。
まずい、何とかフォローしないと。
「でも、ウインなら必ず立ち直れます。ずっと一緒にいてわかったんです。ウィンは、芯が強くて、勇気があって。だから、いつかトラウマを──乗り越えられる日がやってきます」
「ふざけるな。信用できるか! 現に今戦えないじゃないか!」
俺の言葉に、ラデックが強く反発する。まるで、ウィンのことなど何も考えていないかのように。
ウィンはほっと、落ち着いたような様子で街をまじまじと見る。
やはり、故郷についたということで特別な気分になっているということだろう。
「あ……すいません。つい見惚れてしまって」
「いいよいいよ」
「実家の方、案内しますね」
そして俺達はウィンの家へと向かっていく。
街の人々でにぎわう大通りや、実質的な政府機能を持つ王宮を通り過ぎた街のはずれに、ウィンの実家はあった。
「ここが、私の実家です」
「うん、なかなか大きいね」
芝生やお花畑がある広い庭の先に、白い石造りの大きな家。
街の中で、一番豪華に造られている感がしていて、身分の高い人の家だというのがわかる。
ウィンの家は貴族だったのだから、特に不自然ではないが。
家に入る前にウィンに一声かける。
ぎゅっと握っていたその手が、どこか震えているように感じたからだ。心の準備が出来ていないのかな?
「ウィン、入るよ。心の準備は大丈夫?」
ウィンは俺をしばしの間じっと見た後、答える。
「ガルド様。ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫です」
ウィンはプルプルと顔を振った後、きりっとした表情を作り言葉を返した。
覚悟は出来ているのだろう。それなら、ここでその覚悟を否定する理由はない。
「わかった、行くよ──」
「はい」
そう言ってウィンの手を強く、ぎゅっと握った。
そして俺は、家の扉をトントンと叩く。
どんな人なのだろうか。とてもドキドキする。
扉を開け入口に立っていると、中から若い女の人の言葉が返ってきた。
「どちらさまでしょうか」
「ウィンです。両親に、逢いに来ました」
そこにいたのは侍女──らしきメイド服を着た人。
ウィンと視線が合うなりはっとした表情になる。
「あっ、ウィン様。お久しぶりです。今案内しますね。こちらです」
メイドさんは廊下の方へと足を運んでいった。恐らく、この家に仕えているのだろう。
俺達はメイドの人の後をついていく。
廊下を行き、俺達が案内されたのは、相対式の黒いソファーのある応接室。
「お茶を持ってきます。待っててください」
「わかりました」
俺達は、ソファーに隣同士に座る。
両親との再会だからか、ウィンは深呼吸をして心を落ち着けさせている。
やはり、緊張しているのだろう。ウィンの手を、優しくぎゅっと握る。
ウィンはすぐに俺の方を向いて、ちょっとだけ硬かった表情が柔らかくなった。
「あ、ありがとうございます。心がおちつきました」
「それはよかった」
にこっと笑顔を作り、言葉を返す。ウィンの心が落ち着けばそれでいい。
しばしの時間が経って、メイドの人がお盆にティーカップをもってやって来た。
コトッと、机に紅茶が置かれる。
俺とウィンの分と──机の反対側に2つ。
恐らくは、両親の分だ。
そして、しばしの時間が経つと、扉が開く。
キィィィ──。
1人は、大きく髭を伸ばした中年の男の人。
もう1人は釣り目で小太り。俺達をにらみつけている。
どことなくウィンの面影があるおばさん。
「ウィン──」
髭を生やしていて、俺と同じくらいの背丈のお父さんがボソッとつぶやいた。
ウィンはすぐに立ち上がって、頭を下げる。
「お父様。帰ってまいりました」
父親はウィンの話を聞くそぶりも見せずに俺の方に視線をむけ、にらみつけてきた。
「なんだ、この男は」
「ガルド様です。困っていた私を助けてくれて、住む場所を与えてくれました」
「フン。なんの目的なのやら」
母親の方が、不機嫌そうにつぶやいた。そう考えてしまうのも不思議じゃない。
事実、ウィンは俺と出会うまでそんな被害にあっていた。
もちろん、そんなことにはなっていない。きちんと、説明しないと。
そして俺達は握手をする。
まずは、敵ではないと意思表情をする事からだ。
「ガルドです。よろしくお願いします」
「俺の名はラデック。……こちらこそよろしくな」
「私がウィンの母イリヤ。よろしく」
二人と手を取り合ったものの、返ってくる両親の言葉がどこかぎこちない。どこか、腫れ物に触れているような──。
重苦しい雰囲気の中、父親がオホンと咳をすると、話が始まる。
「まずはウィン。王都で、お前がどうなっているか聞きたい」
「えっ……」
その言葉にウィンは言葉を失ってしまう。俺も、いきなりそんな話が来るとは思っていなかった。
どうすればいい……。いくら何でも戦う言葉出来なくなって奴隷になったとは言えない。
ウィンのいきさつを話す。
無理やりパーティーを解散させられたこと。それから行き場所を失ってしまったこと。
そして、そんな身も心もボロボロになった状態で俺が助けたこと。
両親は、しばらくの間黙りこくったまま。
俺が紅茶を一口付けて、コトッと机に置くと、ラデックが言葉を返し始めた。
「つまり、ウィンはもう戦えないということだな?」
その言葉に、ウィンは体を震えさせてしまう。
「はい──」
恐らく、トラウマがよみがえっているのだろう。
まずい、何とかフォローしないと。
「でも、ウインなら必ず立ち直れます。ずっと一緒にいてわかったんです。ウィンは、芯が強くて、勇気があって。だから、いつかトラウマを──乗り越えられる日がやってきます」
「ふざけるな。信用できるか! 現に今戦えないじゃないか!」
俺の言葉に、ラデックが強く反発する。まるで、ウィンのことなど何も考えていないかのように。
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