上 下
60 / 150
2章

第59話 謎の装置

しおりを挟む
 それだけではない。

「この装置、なんだかわかりますか?」

 ニナの言葉通りだ。もしかしたら、ヤバい代物なのかもしれない。
 時限爆弾みたいに、いきなり大爆発を起こすとか。

「確か──見たことはあるんだよな」

 ソルトーンは右手を頭に何かを思い出そうとしている。見覚えが、あるのだろうか。
 しばらくすると、何かを思い出したかのように指をはじく。

「ああ、あったな……こんなの」

「わかるんですか?」

「ちょっと、まってろ」

 ソルトーンが席を立ち、後ろにある本棚へと向かった。
 そして、ソルトーンは一冊の本を取り出す。

「以前、魔王軍について研究していた時、こんなやつを見たことがある」

 そして本をパラパラとめくり始めた。
 中身は、魔物たちの図鑑のような物になっていて、各所に魔物たちの絵とその説明が入っていた。

 そして、ほんの終盤になって、とあるページを開いて俺達に見せつけてきた。

「ほら、これだろ。ニナが見せてきたのって」

 ソルトーンが指をとある場所を指す。
 その内容にニナは驚いてピクリと体を動かす。

「はい、そうです」

 俺も、絵と実物を互いに確認したがほとんど一致している。
 それだと見て、間違いないだろう。

「魔物──トランペソドロン」

「手短に言う。こいつは魔物と言っても特に武器はないし攻撃をするわけでもない。だが、厄介な力がある」

「なんですか? それは──」

「簡単に説明すると、録音機能だ」

 すると、ソルトーンがトランペソドロンを手に取り、裏の部分を見せてきた。
 ぶつぶつとした黒い穴に、上の部分に目のような模様。

「こいつ、音を記録する機能があるんだよ。この黒い穴の部分から音を集めて、どこかに送っているんだ」

「それって、まずくないですか?」

「そ、そ、そうですよ!」

 ニナの言う通りだ。兵士というのは、人によっては要人たちの警護につくことだってある。
 要人たちがぽろっといった言葉の中に、重要機密がある可能性だってある。

 相当な、重要案件であることに変わりはない。情報が筒抜けになってしまっているのだから。
 ソルトーンが指を組んで、俺たちをじっと見る。

「かなり深刻な事態だ。今すぐ何とかしないといけない」

 その通りだ。しかし、こんな事件俺は聞いた事も経験したこともない。
 取りあえず、今できることは一つしかない。

「先ずは、製造元に行った方がいいですね」

「そうだな。ただ、それくらいで解決するとは、思えない」

 ソルトーンも言う通りだ。

 録音機能がある装置を製造工程から服に仕込むなんて、知恵が回る奴らだ。当然、バレることくらい想定済みだろう。
 行った所で、すぐに解決するとは思えない。

 それでも、行くしか道はない──。

「とりあえず、製造元にこんなものがあった──と言ってきます」
 今からでも、行ってみよう。

「ニナ、この後時間ある? 行ってみよう」

「私は、大丈夫です。一緒に行きましょう」

「よろしく、頼むぞ」

 ソルトーンが座りながら頭を下げてきた。
 そこまでされたら、成果を出していかなければと思ってしまう。

「わかりました。では、行ってきます」

 そう言って頭を下げると、ニナと一緒にこの場を後にした。



「行こうか、ニナ」

「はい! 手がかり、見つかるように頑張ります」

 そう言ってニナは拳を強く握って俺の方を見る。
 とても意欲があるのが、分かる。俺も、ニナに負けないように頑張ろう。


 王宮から歩いて数十分ほどで、問題の街工場にたどり着いた。

 街のはずれにある、小さな町工場を言った感じだ。

 安っぽい眼鏡をかけた、痩せているおじさん。
 服は、よれよれで薄汚れている。どこか貧しそうな雰囲気だ。

「おや、あなた達が話に聞いていたガルドさんとニナさんですか。こんにちは」

「よろしく、お願いします」

 おじさんと互いに頭を下げて、握手をする。
 いきなり敵意を見せたり疑ってかかるのは得策ではない。

「すみませんね、いきなり訪れる事になってしまって」

「いえいえ、お気になさらず。まさか、こんなものが混入してしまっているとは──」


「いやあ……しかし、こんな装置──私には、身に覚えがないですよ……」

 おじさんは困った表情で頭を押さえながら言葉を返して来る。

「従業員でしょうか。何なんでしょうね……」
 
 おじさんは迷っている様子だ。
 取りあえず、現場を見た方がいいな。いろいろ分かるかもしれない。

「ちょっと、製造場所をうかがっても大丈夫ですか?」

「え、えっ。構いませんが、何も──ないと思いますよ」

 はピクリと反応した後、どこかおどおどしながら言葉を返す。

 どこか隠しているかのような態度。何か、ありそう。
 顔を合わせ、互いにコクリと頷く。

「ありがとうございます。では、見せていただきます」

 そして俺達は作業所へと足を運んでいく。


 木造の大きめな部屋。従業員の人たちが、机に向かって作業をしている。

「ここでは、兵士の人たちが着る軍服を、製造しています」
「確かに、そうですね」

 従業員の人たちの動きを観察してみるが、特に何かを仕掛けたり怪しい素振りはない。
 当然、部屋を見てもトランペソドロンはない。

「なんていうか、亜人の人ばかりですね」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...