53 / 150
2章
第52話 ヤ∥コダ
しおりを挟むナイト=ゴーントはヤコダの胴体を鷲掴みにする。
「やらせるかよ!」
俺も周りの冒険者たちも遠距離攻撃を仕掛けてヤコダを助けようとするが、ナイト=ゴーントは障壁を張ったせいで攻撃が通らない。
そして──。
バギバギバギバギィィィィィィィィ──。
なんと、ヤコダの体を掴んだまま身体を口に入れ始めたのだ。
ヤコダは顔が恐怖でくしゃくしゃに引き攣らせ、脱出しようともがき苦しむが、力の差がありすぎてどうすることも出来ない。
メキメキメキメキメキメキ──。
腰の部分で強引にヤコダの体を真っ二つに引き裂いて、下半身の部分をむしゃむしゃと食べてしまった。
その瞬間、ヤコダの上半身がぼとりと落ちる。
切断された腰の部分からドバドバと血があふれ出し、内臓がいくつか露出している、明らかに事切れたヤコダの姿がそこにあった。
あまりの無残な光景に、目をそらす冒険者まででて来る始末。
しかし、戦いはまだ終わっていない。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッ!!
ナイト=ゴーントがこっちに向かってくる。他の冒険者達も慌てて反撃しようとするが、彼らでは相手にならないだろう。
もう、これ以上犠牲者を出させるわけにはいかない。
すぐに戦う準備に入る。
「私も行きます!」
何とニナに向かって光線を口からはいてきた。
──かなりの威力だ。
ニナは腕をかすめるものの、何とか直撃を免れた。腕を抑えながら後退。
傷を負ってしまったものの、致命傷ではなさそうだ。
間に俺が入って、攻撃を受ける。
「攻撃が、重い」
思わず声を漏らす。攻撃自体はからめ手を使って来るわけではない。
力任せに殴って蹴ってくる、とても単純なもの。
しかし、その力がとてつもない。
ガードをしても抑えきれず、ダメージを受けてしまう。
一人では、とても倒せない。集団で力を合わせないととても対抗できない。
しかし、ほとんどの冒険者は初対面で一緒に戦ったことはない。
いきなり一緒に戦った所でうまくはいかないだろう。
おまけに、ヤコダを食い殺した姿を見て、一般冒険者達は体を震わせ動揺している。
ここは、俺達だけで戦った方がよさそうだ。
すぐにエリアとビッツに視線を送った。
「頼む。力を貸してくれ」
「わかったよ」
「任せて」
二人とも威勢良く言葉を返す。そして、ニナも──。
「私だって、力になります。協力、させてください!」
不満そうに、頬を膨らませて叫ぶ。考えてみればそうだ。ニナだって、冒険者なのだから。
「わかった。でも、いざとなったら自分のことを守ってくれ。約束だよ」
「はい。わかりました」
もう、目の前で人が死ぬのはごめんだ。
絶対に、守り切って、ナイト=ゴーントを倒す。
そう心に決め、後ろにいるビッツとエリアに視線を送る。
2人は、黙ってコクリとうなづいた。
──行こう。
剣を強く握って、ナイト=ゴーントとの距離を詰める。
ナイト=ゴーントは俺に気付くなり、いきなり殴りかかってくる。
俺はその攻撃に対応。
殴り掛かってきた拳をよけ、一気にナイト=ゴーントの懐へと飛んでいく。
幸い、そこまでからめ手を使ってくるわけではない。
強いパワーを生かした、シンプルな攻撃。
しかし──。
「先輩!」
俺の体が軽く吹っ飛ばされると、ニナが思わず叫んだ。
パワーが、違うのだ。
人間ではない、魔物だから当然なのだが。ガードをしても、有り余るパワーでこっちを押し込んでくる。今回もそうだ。
攻撃を受けきれない。致命傷にならないよう、後退しながら攻撃を受けていくが、それでもダメージを受けてしまう。
殴り掛かる攻撃に対して、決して力で返さない。受け流し、反撃の機会をうかがうが──。
グォォォ……グァァァァァァァッッッッ──!!!!
今までより強く殴り掛かってきたのだ。恐らく、拳に込める魔力を大幅に上げたのだろう。
不意を食らった形になり、対応しきれなかった。
のけぞる形になり、スキができてしまったのだ。
ナイト=ゴーントがニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
そして、一気に俺に向かって殴り掛かってきた。
のけぞった体制のまま、対応できない俺の胴体に──。
「させないな」
その瞬間、間にビッツが入ってくる。
ビッツが長い槍をなぎ払い、ナイト=ゴーントの拳と対峙。
衝突の瞬間、衝撃波が発生。相当な威力だというのがわかる。
両者の力は──五分だろうか。
ビッツの体とナイト=ゴーントの拳が同時に後ろに引いた形になる。
しかしナイト=ゴーントは再び俺達の方へと向かってくる。
その瞬間──。
「させないよ!」
エリアが叫び声上げる。その瞬間、大きな杖をナイト=ゴーントに向けた。
杖からは大きな魔力を伴った砲弾が出現し、ナイト=ゴーントに直撃し大爆発を起こす。
流石に無事ではいられなかったのか、ナイト=ゴーントが後退。
「今のうちに!」
エリアの援護のおかげで、スキができて後退することができた。
「ありがとう、エリア!」
「この位、当然よ」
エリアは自信満々に言い返す。
そして、再びナイト=ゴーントに視線を向けた。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる