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第39話 今日は、二人でデート

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 数日後。

 腕は、治りかけた。数日も立てば、クエストへの復帰も可能だろう。

 みんなと一緒に戦うのが、とても待ち遠しい。
 しかし、その前にやらなきゃいけないことがある。

 朝食を済ませ、家事を終えた後──。

「ガルド様──」

「何? ウィン」

「私の服、似合ってる……でしょうか」

 そう言ってウィンは体を回転させる。風でひらりとスカートが動き、もう一度俺の方を向いた。

 ウィンの服。水色を基調としたワンピースに、ひらひらがついている白いスカート。
 そして、同じく白いハイヒール。
 淡い服の色と、ウィンの肌が似合っている印象。

 ウィンが持っているかわいらしさと清楚さが、前面に押し出されていてとてもかわいらしい。
 思わず、ドキッとしてしまう。

 オホンと咳をして平常心を取り戻す。

「うん。とってもかわいいよ、すごい似合ってる」

 ウィンは、顔をほんのりと赤くして、言葉を返した。

「ガルド様、ありがとうございます」

 とても、嬉しそうだ。
 今日はウィンと一日中外出する日。世間でいう、デートの日だ。

「ガルド様──」

「何?」

「本当に、こんな日があっていいのですか?」

「いいよ。今日は一日中、精一杯楽しもう」

 そう。俺はウィンに約束した。
 一日中、ウィンをもてなすと──。

 ウィンと一緒に過ごすことになってから、しばらくたった。
 時間は短いけれど、とても濃く感じられる日々。

 もちろん、楽しいことばかりじゃなかった。トラウマをえぐられることだってあった。

 その時に傷ついたウィンの表情は、今も記憶に残っている。
 とっても、悲しい表情。

 少しでも、そのことを忘れてほしくて、俺が計画した。ウィンは「本当に、いいんですか?」と大喜びだった。

 それに、怪我が治ったら俺は国のことやクエストの方にも力を入れなければいけないので、おのずとウィンと一緒にいれる日だって少なくなる。

 だから、今のうちにいろいろ思い出を作っておきたい。

 色々辛いことがあったから、今日はそれを忘れるために楽しむ日。
 今日は、ウィンがいい思い出を作れるように精一杯もてなす。


「じゃあ、行こうか──」

「はい」

 そして俺達は、街の中へと繰り出していった。

 まずは、街の中でもにぎやかな繁華街へ。


 そんな街並みを、ぎゅっと手をつなぎながら俺達は歩いていく。
 とはいっても、いつもウィンが買い物をしている道。

 それでも、こうして二人で歩いていると、新鮮な気分になれる。

「おうウィンちゃん、今日は彼氏さんと一緒かい? 幸せだねぇ」

「あ、ありがとうございます……」

 ウィンは、しっかりと顔を覚えられているようで、声をかけられてしまう。
 そして、視線を下に向け、どこか恥ずかしそうだった。

 それから、大通りの道を曲がり、細い道へ。
 出店が並んでいるという点ではさっきと一緒だが、この辺りはひっそりとしていて、売っているものも日用品というよりは地方や遠い国の珍しい雑貨や食品などが中心になっている。

 歩いている人も、ただ日用品や食料を買うだけでなく、物珍しいものを見たり食べたりして楽しむ人が大半。

「すごいです。見たこと無いものばかり……、初めてきました」


 初めて見るであろう光景に、色々と目移りしてしているのがわかる。

「とりあえず、何か食べよう」

「はい……」

 そう言って、俺は周囲を見回す。
 今日は折角の二人っきりの日だ。ありきたりな物よりは今まで食べたことがない、非日常感があるような食べ物がいい。

 すると、ウィンが俺の肩をたたいてとあるものを指さす。

「あれ、肉が……回ってます」

 ウィンが指さした先にある物、それは肉の塊だ。

 店の外に見世物だと言わんばかりにある大きな肉の塊。
 長い木の棒を支柱に、空中をくるくると回っている。

「あれは、ゲバブだな。南方の名物料理だよ。食べてみる?」

 とはいえ俺もちょっと移民の冒険者が食べているのを見ただけで、食べたことはない。
 どんな味をしているのかな……。すごく気になる。

「食べて、みたいです」

 ウィンが目をキラキラと輝かせて言葉を返す。
 まあ、折角の日だ。今日はいろいろと楽しもう。

 そして、店の前まで歩を進める。

「おじさん、2つ下さい」

「あいよ」

 おじさんは元気よく返事をすると白くて薄い生地を広げて、レタスとトマトを置いた。

 それからナイフを手に取り、肉の塊をくるくると風車のように回しながら仰ぎ落す。
 物珍しい光景に俺もウィンもその光景をまじまじと見つめている。

 そして、野菜の上に削ぎ落した肉を入れた後、くるくると生地を回転させ手にもてるようなサイズにして、肌色の見たことのないソースをかけて、完成。

「ほい、召し上がれ」

 俺もウィンも、ゲバブを手に取る。
 白くて薄い小麦粉の生地の中にレタスと鶏肉が入っていて、その上に肌色のソースがかかっている。

 匂いは──悪くない。
 そして、ゆっくりと一口食べてみる。
 慎重に、一番上の肉と野菜の部分を口に入れる。

 感想。初めて見る食べ物で味が気になっていたけど、悪くない。

「へぇ──いい味してるじゃん」

 素直においしい。肌色のソースが、肉や野菜の味を引き出していた。
 感心してしまった。ウィンも最初は慎重だったが、それからは美味しそうに食べている。

「おいしい、です」

「そうだね」

 美味しかったせいかすぐに食べ終えてしまった。
 充分、お腹一杯になった。後は、甘いものなんかいいかな。デザートに丁度いいもの。
 そんな感じでちょうどいいものがないか出店を探っていると──。

「あれ、食べませんか?」
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