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第18話 クエスト。そして食事へ

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 あの後、俺は日帰りのクエストをこなしながらウィンと二人で暮らしていた。

 ウィンは、やはり家にいるだけだと退屈らしい。
 しかし、魔法は使いたくないとのことだ。使おうとするだけで以前パーティーから言われた「使えないゴミ」だの「役立たず」だの言われたトラウマがフラッシュバックするだとか。

 それを話していた時のウィンの体は、プルプルと震えていた。これ以上トラウマをほじくるのは、かわいそうなのでやめた。

 何とかウィンをどうすればいいか考えてあげないと。



 数日後。再びクエストの依頼を受ける。

 日帰りで、郊外のオークたちとの戦い。遠い場所に行かないのは、ウィンを長時間孤独にしないためだ。


 街からしばらく歩いて、視界が悪い広葉樹の森。
 集団戦で何グループかに別れている。その中で俺とエリア、そしてニナが1グループとなって戦っていた。

「みんな、行くわよ」

「はい!」

 エリアの言葉にニナが明るく言葉を返す。ニナ、明るくてまっすぐで、いつもやる気に満ちているんだが……。

 俺の心配をよそにニナはオークの方へと飛び込んでいく。

「待て、お前は前に行きすぎるな!」

 ニナをたしなめて俺もオークの方に突っ込んでいく。
 ニナは、近距離戦闘が苦手にもかかわらず勢いに任せて前のめりになる傾向があるのだ。
 それで、何度か危なっかしい場面に出くわしていた。

 それでも、ニナが奮戦。俺達も少しずつオークを倒していったおかげで最初こそ有利に進んでいたのだが……。

「これで終わりです。勝ちです!」

「バカ! 前に出過ぎだ、引いて」

「大丈夫ですよ──」

 何とニナが勝手に前に出てしまう。敵は残り数匹。息が上がっている──といってもここはこいつらが住んでいる森。

 どんな罠が待ち構えているかわからない。
 そんな中、ニナが残りのオークに突っ込んでいく。

 オークはそれを見た瞬間ニヤリと笑みを浮かべた。慌ててニナを止めようとするが……。

「待てニナ。罠だ!」

「大丈夫です。行けます!」

 ニナが自信満々に言葉を返した瞬間──。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン──!

 目の前が大きく爆発。慌てて障壁を張る。
 ニナも、突然の爆発に後方に吹き飛ばされて尻もちをついてしまった。

 そして体勢を立て直そうとしたニナの周りに……。

「え……なんでこんなに?」

 オークたちが取り囲んでいた。
 そうだ。こいつらは、時折罠を仕掛けてくる。有利に戦っていると思わせておいて罠を仕掛ける。それだけでなく周囲に仲間を配置して一気に四方を取り囲んで袋叩きにすることがあるのだ。

「す……すいません」

 それは後でいい。早く、ニナを助け出すのが先だ。

 オークたちがニナに突っ込んでいくのと同時に、俺もエリアも目の前のオークに突っ込んでいく。

 オークの背中を一撃で切り裂くと、そのオークを蹴り飛ばしてニナの元へ。
 しかし、オークたちはすでにニナに突っ込んでいっている。まともに戦おうとすれば間に合いそうもない──。


 仕方がない──後輩のためだ。

 俺はオークではなくニナの方に向かっていき、身を投げた。

 そのままニナを突き飛ばす。間一髪でニナは攻撃の直撃を免れる。

 代わりにオークのこん棒が俺の体にあたり吹き飛ばされた。

 幸い大きなダメージではなかったため、受身を取ってすぐに立ち上がる。

 そして再びオークへと向かっていく。向かってきたオークの攻撃をかわし、カウンターで返り討ち。

 ニナも立ち向かおうとするものの、接近戦が苦手なため攻撃が止められてしまい、逆襲に合う。上空に吹き飛ばされてしまった。

 ニナは、まだまだ未熟だ。特に近距離戦闘。

 すぐに俺は周りのオークを片付ける。幸い、そこまで強いわけではなかったので、すぐに倒すことができた。
 オークたちは傷を負いながら、森の中へと逃げていった。


 そして──。

 バッ!

 吹き飛んだニナの体を両手でキャッチする。いわゆる、お姫様抱っこというやつだ。

 キャッチして、一度体を持ち上げた瞬間、ニナと目が合ってしまう。

「あっ……ありがとうございます」

 瞬間に、ニナの顔がほんのりと赤くなった。やっぱり、恥ずかしいのかな……。
 すぐにニナを下ろすと、ニナはどこか残念そうな表情になり立ち上がった。

 シュンとしているニナ。
 そこに、リーダーの人がずかずかとやって来た。

「おいニナ!」

「は、はい」

 その言葉にニナは背筋がピンとなり、気を付けのポーズになる。

「バカ野郎。あれほど一人で突っ込むなっていったのに!」

「す、すいません……」


 がっくりとした表情でぺこりと頭を下げる。これは、可哀そうだけど仕方がない。
 何とかオークを退治できたけど、ちょっと危ない場面もあった。


 まだまだ、経験不足なのだ。
 しばらくすると、叱責は終わり俺達の元に戻ってくる。

 しょぼん──としたようすで戻ってきた。とりあえず、励まそう。

「お疲れ様」

「お疲れ様……です」

「まあ、慣れないうちはこういうこともあるから。経験を積んで強くなっていこう」

「……ありがとうございます」

 明らかに落ち込んでいる。このままだとこれからのクエストにも影響しそうだ。
 俺はニナのそばによって、肩を軽くたたく。

「ちょっといいかな?」

「な、なんでしょうか……」

 がっくりと肩を落とし、しょぼんとした声色で言葉を返して来る。

「この後、一緒にご飯食べない?」
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