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第7話 おいしい、手作りの料理
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そして、机に料理を並べる。
「こ、こんなものしか用意できませんでした。申し訳ございません」
そう言ってウィンが深々と頭を下げる。
「ま、まって、それは俺が悪いんであって、ウィンが悪いわけじゃ無いよ!」
そうだ、食料を市場で買ったのは俺だ。
ウィンは限られた食材で精一杯の物を作ってくれた。
それだけで、感謝一杯だ。
「それに、とてもおいしそうだし。早く食べよう」
そう言いかけた時、ウィンの分の鶏肉のステーキを見て、とあることに気付く。
肉の量を見て、俺は頭を抱える。
肉の量が少ない。
大きさは、俺の3分の1くらい。
17歳が食べるにしては小さい。すぐにお腹を空かせてしまうだろう。前のパーティーではこんな扱いだったのだろうか──。それとも彼女なりに気を使っているのだろうか──。
どちらにせよ、取る行動は、決まっている。
ナイフで肉を切り、にこっと笑顔を浮かべる。
「遠慮しなくていいから。同じ量、一緒に食べよう」
そう言って、肉の量が半分になるようにウィンの皿に切った肉を置いた。
「あ、ありがとうございます」
それから、向かい合っていた椅子。俺の分の椅子をウィンの隣に移動させる。
そして背中に手を回し、抱きかかえるかのように腕をつかんだ。
「俺は向かい合うよりも、こうして隣り合わせになって食事をしたい」
ウィンはほわっと明るい表情になり、顔がほんのりと赤くなった。
明るくなったウィンの表情が、とてもかわいく感じる。
両手を膝に置き、ちょこんと縮こまりわずかに頭を下げた。
「あ、ありがとうございます」
そして食事開始。
「「いただきます」」
ウィンが調理した料理は、美味しい。俺と違って、ちょっと薄味だけど、鶏肉は素材の良さをうまく引き出していて、スープも野菜の甘さと調味料がちょうどよいバランスとなっていた。
「とてもおいしいよ、すごいよ」
「……ありがとうございます」
ウィンは、顔を赤くして照れていた。
それからも、食事をしながら俺はウィンに話しかける。
少しでもウィンのことを知るために。
「前のパーティーではどんなことをしていたの? まさか、変な事を要求──されたとか?」
そんな質問をした瞬間、ウィンは目を大きく見開いて、食事の手を止めてしまった。
「その……身体は、許してません。けれど、色々触られたり、揉まれたり、ほっぺにキスされたり──しました」
そうしゃべっているウィンの声が細々となり、体が震えだす。
よほど嫌な体験だったのだろう。これ以上の質問は酷だ。
というか、女の子で奴隷という身分なんだから大小なりともそうなってしまうよな。
それに、こんな質問食事中にするべきじゃなかった。
許してくれ、俺は異性とのコミュニケーションに疎いんだ。今度から、しっかりと気を遣うから……。
「ごめん、こんな質問して……」
「いいえ、大丈夫です。本当のことですから──」
ウィンがシュンとした表情で答える。
やはり、そんな扱いを受けていたのか……。
食事を終え、食器を二人で洗って片付ける。別々にシャワーを浴びた後、夜空を見ながらいろいろ会話をする。
料理のこととか、最初のパーティーでどんなことをしていたのかとか──。
話を聞くと、胸を揉まれたりとか、いやらしい服を着させられたりされたらしい。
「ご、ごめん……大変だったんだね」
「は、はい……」
ちょっと、トラウマとかえぐっちゃったかな……。ウィンがとても暗い表情をしていて見ているのもつらい。
まだ出会って間もないんだし、こういう話はしないでおこう。
それから、話を別の話題に変える。
ウィンの生まれた場所の文化とか、俺が国家魔術師をしていて楽しかったこととか。
「ガルドさんは、そんなパーティーで育ったんですか?」
「ああ」
話をしたのは元いたパーティーのことだ。
どんな強い敵にも、決してあきらめずに戦い。勝利を収めていった。
パーティーのリーダーはいつも言っていた。
「力のある者は、弱きものを絶対に守らなければならない。いいな」
すごい誇り高い人だったのだ。ここの政府にはもったいないくらい。
「すごいです……」
そんな人に影響された俺は、優しさを忘れずウィンのことも放っておけなかったのだ。
ウィンはその話を聞いてどこかうれしそうだった。
「すごいです……。私のいたパーティーの人たちは違いました。どこか個人主義的だったり──手柄のために他の人達や一般人をおとりにしてたり……」
──そうか。
ウィンの表情が暗くなる。確かに、ウィンの年齢を考えれば、誰も見てくれなかったり、作戦のためとはいえ犠牲者が出るというのはつらいだろうな。
ショックを受けているというのが、表情から見てもわかる。
……でも、ちょっとしんみりしすぎちゃった。それに、一方的に話すばかりでウィンは何も話せていない。
何か、話題はないかな?
俺の壊滅的だった会話センスの中で、一つ答えが浮かぶ。これなら、楽しく話せそうだ。
「あ、ウィン──話が変わるんだけどいいかな?」
「何でしょう」
「ウィンのいたタツワナ王国って、どんなものを食べていたの?」
それはウィンのいたタツワナ王国の食文化の話──。
これなら、楽しく話せそうだ。大丈夫かわからないけれど、行ってみよう。
「こ、こんなものしか用意できませんでした。申し訳ございません」
そう言ってウィンが深々と頭を下げる。
「ま、まって、それは俺が悪いんであって、ウィンが悪いわけじゃ無いよ!」
そうだ、食料を市場で買ったのは俺だ。
ウィンは限られた食材で精一杯の物を作ってくれた。
それだけで、感謝一杯だ。
「それに、とてもおいしそうだし。早く食べよう」
そう言いかけた時、ウィンの分の鶏肉のステーキを見て、とあることに気付く。
肉の量を見て、俺は頭を抱える。
肉の量が少ない。
大きさは、俺の3分の1くらい。
17歳が食べるにしては小さい。すぐにお腹を空かせてしまうだろう。前のパーティーではこんな扱いだったのだろうか──。それとも彼女なりに気を使っているのだろうか──。
どちらにせよ、取る行動は、決まっている。
ナイフで肉を切り、にこっと笑顔を浮かべる。
「遠慮しなくていいから。同じ量、一緒に食べよう」
そう言って、肉の量が半分になるようにウィンの皿に切った肉を置いた。
「あ、ありがとうございます」
それから、向かい合っていた椅子。俺の分の椅子をウィンの隣に移動させる。
そして背中に手を回し、抱きかかえるかのように腕をつかんだ。
「俺は向かい合うよりも、こうして隣り合わせになって食事をしたい」
ウィンはほわっと明るい表情になり、顔がほんのりと赤くなった。
明るくなったウィンの表情が、とてもかわいく感じる。
両手を膝に置き、ちょこんと縮こまりわずかに頭を下げた。
「あ、ありがとうございます」
そして食事開始。
「「いただきます」」
ウィンが調理した料理は、美味しい。俺と違って、ちょっと薄味だけど、鶏肉は素材の良さをうまく引き出していて、スープも野菜の甘さと調味料がちょうどよいバランスとなっていた。
「とてもおいしいよ、すごいよ」
「……ありがとうございます」
ウィンは、顔を赤くして照れていた。
それからも、食事をしながら俺はウィンに話しかける。
少しでもウィンのことを知るために。
「前のパーティーではどんなことをしていたの? まさか、変な事を要求──されたとか?」
そんな質問をした瞬間、ウィンは目を大きく見開いて、食事の手を止めてしまった。
「その……身体は、許してません。けれど、色々触られたり、揉まれたり、ほっぺにキスされたり──しました」
そうしゃべっているウィンの声が細々となり、体が震えだす。
よほど嫌な体験だったのだろう。これ以上の質問は酷だ。
というか、女の子で奴隷という身分なんだから大小なりともそうなってしまうよな。
それに、こんな質問食事中にするべきじゃなかった。
許してくれ、俺は異性とのコミュニケーションに疎いんだ。今度から、しっかりと気を遣うから……。
「ごめん、こんな質問して……」
「いいえ、大丈夫です。本当のことですから──」
ウィンがシュンとした表情で答える。
やはり、そんな扱いを受けていたのか……。
食事を終え、食器を二人で洗って片付ける。別々にシャワーを浴びた後、夜空を見ながらいろいろ会話をする。
料理のこととか、最初のパーティーでどんなことをしていたのかとか──。
話を聞くと、胸を揉まれたりとか、いやらしい服を着させられたりされたらしい。
「ご、ごめん……大変だったんだね」
「は、はい……」
ちょっと、トラウマとかえぐっちゃったかな……。ウィンがとても暗い表情をしていて見ているのもつらい。
まだ出会って間もないんだし、こういう話はしないでおこう。
それから、話を別の話題に変える。
ウィンの生まれた場所の文化とか、俺が国家魔術師をしていて楽しかったこととか。
「ガルドさんは、そんなパーティーで育ったんですか?」
「ああ」
話をしたのは元いたパーティーのことだ。
どんな強い敵にも、決してあきらめずに戦い。勝利を収めていった。
パーティーのリーダーはいつも言っていた。
「力のある者は、弱きものを絶対に守らなければならない。いいな」
すごい誇り高い人だったのだ。ここの政府にはもったいないくらい。
「すごいです……」
そんな人に影響された俺は、優しさを忘れずウィンのことも放っておけなかったのだ。
ウィンはその話を聞いてどこかうれしそうだった。
「すごいです……。私のいたパーティーの人たちは違いました。どこか個人主義的だったり──手柄のために他の人達や一般人をおとりにしてたり……」
──そうか。
ウィンの表情が暗くなる。確かに、ウィンの年齢を考えれば、誰も見てくれなかったり、作戦のためとはいえ犠牲者が出るというのはつらいだろうな。
ショックを受けているというのが、表情から見てもわかる。
……でも、ちょっとしんみりしすぎちゃった。それに、一方的に話すばかりでウィンは何も話せていない。
何か、話題はないかな?
俺の壊滅的だった会話センスの中で、一つ答えが浮かぶ。これなら、楽しく話せそうだ。
「あ、ウィン──話が変わるんだけどいいかな?」
「何でしょう」
「ウィンのいたタツワナ王国って、どんなものを食べていたの?」
それはウィンのいたタツワナ王国の食文化の話──。
これなら、楽しく話せそうだ。大丈夫かわからないけれど、行ってみよう。
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