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最終章 建国祭編
第101話 元勇者 最後の一撃を叩き込む
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そうか、そういう事か、これならいけるかもしれない。
エミールが振り払ってきた攻撃、それを強く振り払って数メートルほど距離を取る。エミールは有利に戦いを進めているだけあって、余裕そうな表情で言葉を投げてくる。
「どうした、怖じ気図いたのか?」
「そうじゃない」
今余裕ぶって距離を詰めなかったこと。それを後悔してやる。
俺はスッと目をつぶる。宙に浮いたまま身体を弛緩させリラックスさせる。そしてポツリと一言呟いた。
「識──」
そして再び一気にエミール相手に突っ込んでいく。
エミールのやることは変わらない。自分より遅い相手に、早く対処するだけ──なのだが、1つの現象に気付く。
そしてエミールが。
「これで終わりだ!」
俺の攻撃をギリギリでかわした後、俺の足元にエミールが攻撃を仕掛ける。
さっきまでならかわしきれず、攻撃を受けていただろう。
それは俺を最低限のステップでかわす。エミールはさらに俺に向かって切り上げてくるが、それをわずかに身体を退き鼻先で見切る。
振り下ろされたような攻撃をギリギリで受け流し、そこから不意打ちで出たけりをギリギリで裁く。
その様子に驚いて目を見開いたエミール。表情を固まらせながら話しかけてきた。
「お前、なんで今の攻撃を防げた?」
「確かにさっきまでの俺なら防げなかったな。けれど、今の俺は違う」
今俺が使用しているのは<識術式・ハートビジョン>。
簡単に言うと、自身の魔力で相手の魔力の動きを察知できる術式だ。
もともと、魔法が使える冒険者であれば相手に魔力があるかどうかを理解することができるが、この術式を使うと、それがさらに細かく見えるようになるのだ。
魔力を使用した相手の動きの完全検知。これはエミールも知らない技だ。
しかし、これでは俺はエミールの動きについていくことができるようになっただけで、完全に有利になったというわけではない。
互いに互角そして有効打がない状況。
ぶつかり合うのは互いの強い気持ち。
なんとなくだけど、わかる。この戦い、絶対に勝つという、最後まで強い気持ちを持っていた方が勝つと。
拮抗した互い。俺たちは、永久に戦わなければいけないのか──。
それは、ありえない。
俺とお前には決定的な違いがある。
目の前の障害を目の当たりにして、すべてを壊そうとしたのか、助けてくれる人がいて、傷ついても前に進むと決めたのか。
それだけは、俺がエミールに勝っているものだった。
俺はかつて、この世界を追放され、途方に暮れていた。
その後、ルシフェルと出会い、もう一度この世界で戦うと決めた。
確かに、この世界はいいことばかりではない。嫌なこともあった。時には怒りに震えたこともあった。
それでも、逃げずに、前に進むと決めた。うまくいかないことがあっても、決して投げ出さず。みんなと向き合っていくと決めた。
俺もエミールも命を懸けて戦っているけど、命を懸けて戦っている理由は、決して自分だけのためじゃない。
俺がここで死んだら、住処を失い、流浪の民となる人たちの分まで、一緒に背負って戦っている。
だから──、俺はお前よりも剣が重い。
だから──、俺はお前に負けるわけにはいかないんだ
そして俺は全力で戦う。
いつの間にか、互いに駆け引きなどなく、全力で力をぶつけあうようになった。
互いに方向を上げ、同時に踏み込む。
2人とも、何度も切りあっていくうちに、双方にダメージが蓄積し、一太刀ごとにそれが増えていっているのがわかる。
互いに相手の攻撃を読みつつ、ギリギリまで間合いを削っているためだ。少しでも、相手に一撃を与えようとするために。
エミールのかわいい顔に似つかわしくない歪な、それでいて必死になっているのがわかる笑みを俺に向けている。
荒々しい剣裁きと共に二人の服がちぎれ飛ぶ。
俺が放った攻撃を横にはじいたエミールが、一気に俺の懐に入り、足をかけるようにして俺を引き倒そうとする。
俺はすぐにさらに間合いを詰め、下段から蹴り上げる。
エミールは上体を反らしてその攻撃をかわす。しかし、よけきれず彼女の胸元をかすめるように切り裂く。
しかし直後に彼女の放った振り上げた攻撃が俺の肩をかすめていた。
流石はエミールだ。凶暴で荒々しいながらも、その根底には圧倒的な技術が支えていて、荒々しく見えても全くスキがない。
互いに引かず、戦いを繰り広げる。
互いの武器が火花を散らすくらいに激しく衝突。間合いを詰めればそれに加えて拳と肘が追加し始める。
一撃ごとに、一太刀ごとに傷が増えていく。それでも自分の勝利のため、一歩もひるまず、譲ることはない。
正直、どちらが勝ってもおかしくはない。
互いに息を切らし、俺は決意する。
そろそろ、決着をつけよう。
エミール、俺には、帰る場所がある、待っている人がいる。
だから、負けるわけにはいかないんだ!
そして俺は一歩下がる。互いに、全力で、すべてを出し切る最後の一撃を繰り出す。
光属性<レインボー・オネスティー・スターダスト>
エミールも、それは同じだった。その槍が今までにないくらい黒く光る。
闇属性<ダークネス・エアレイド・アベージ>
いずれも斬撃の技。互いの全力を、目の前にある相手にぶつけあった。
そして──。
エミールが出現させた雲が晴れ、青空が見え始める。
光が射した空に、俺だけが存在している。
「はぁ……、はぁ……」
下に視線を向けると、エミールが地面に倒れこんでいる。
すでに虫の息。勝負は、決した。
エミールが振り払ってきた攻撃、それを強く振り払って数メートルほど距離を取る。エミールは有利に戦いを進めているだけあって、余裕そうな表情で言葉を投げてくる。
「どうした、怖じ気図いたのか?」
「そうじゃない」
今余裕ぶって距離を詰めなかったこと。それを後悔してやる。
俺はスッと目をつぶる。宙に浮いたまま身体を弛緩させリラックスさせる。そしてポツリと一言呟いた。
「識──」
そして再び一気にエミール相手に突っ込んでいく。
エミールのやることは変わらない。自分より遅い相手に、早く対処するだけ──なのだが、1つの現象に気付く。
そしてエミールが。
「これで終わりだ!」
俺の攻撃をギリギリでかわした後、俺の足元にエミールが攻撃を仕掛ける。
さっきまでならかわしきれず、攻撃を受けていただろう。
それは俺を最低限のステップでかわす。エミールはさらに俺に向かって切り上げてくるが、それをわずかに身体を退き鼻先で見切る。
振り下ろされたような攻撃をギリギリで受け流し、そこから不意打ちで出たけりをギリギリで裁く。
その様子に驚いて目を見開いたエミール。表情を固まらせながら話しかけてきた。
「お前、なんで今の攻撃を防げた?」
「確かにさっきまでの俺なら防げなかったな。けれど、今の俺は違う」
今俺が使用しているのは<識術式・ハートビジョン>。
簡単に言うと、自身の魔力で相手の魔力の動きを察知できる術式だ。
もともと、魔法が使える冒険者であれば相手に魔力があるかどうかを理解することができるが、この術式を使うと、それがさらに細かく見えるようになるのだ。
魔力を使用した相手の動きの完全検知。これはエミールも知らない技だ。
しかし、これでは俺はエミールの動きについていくことができるようになっただけで、完全に有利になったというわけではない。
互いに互角そして有効打がない状況。
ぶつかり合うのは互いの強い気持ち。
なんとなくだけど、わかる。この戦い、絶対に勝つという、最後まで強い気持ちを持っていた方が勝つと。
拮抗した互い。俺たちは、永久に戦わなければいけないのか──。
それは、ありえない。
俺とお前には決定的な違いがある。
目の前の障害を目の当たりにして、すべてを壊そうとしたのか、助けてくれる人がいて、傷ついても前に進むと決めたのか。
それだけは、俺がエミールに勝っているものだった。
俺はかつて、この世界を追放され、途方に暮れていた。
その後、ルシフェルと出会い、もう一度この世界で戦うと決めた。
確かに、この世界はいいことばかりではない。嫌なこともあった。時には怒りに震えたこともあった。
それでも、逃げずに、前に進むと決めた。うまくいかないことがあっても、決して投げ出さず。みんなと向き合っていくと決めた。
俺もエミールも命を懸けて戦っているけど、命を懸けて戦っている理由は、決して自分だけのためじゃない。
俺がここで死んだら、住処を失い、流浪の民となる人たちの分まで、一緒に背負って戦っている。
だから──、俺はお前よりも剣が重い。
だから──、俺はお前に負けるわけにはいかないんだ
そして俺は全力で戦う。
いつの間にか、互いに駆け引きなどなく、全力で力をぶつけあうようになった。
互いに方向を上げ、同時に踏み込む。
2人とも、何度も切りあっていくうちに、双方にダメージが蓄積し、一太刀ごとにそれが増えていっているのがわかる。
互いに相手の攻撃を読みつつ、ギリギリまで間合いを削っているためだ。少しでも、相手に一撃を与えようとするために。
エミールのかわいい顔に似つかわしくない歪な、それでいて必死になっているのがわかる笑みを俺に向けている。
荒々しい剣裁きと共に二人の服がちぎれ飛ぶ。
俺が放った攻撃を横にはじいたエミールが、一気に俺の懐に入り、足をかけるようにして俺を引き倒そうとする。
俺はすぐにさらに間合いを詰め、下段から蹴り上げる。
エミールは上体を反らしてその攻撃をかわす。しかし、よけきれず彼女の胸元をかすめるように切り裂く。
しかし直後に彼女の放った振り上げた攻撃が俺の肩をかすめていた。
流石はエミールだ。凶暴で荒々しいながらも、その根底には圧倒的な技術が支えていて、荒々しく見えても全くスキがない。
互いに引かず、戦いを繰り広げる。
互いの武器が火花を散らすくらいに激しく衝突。間合いを詰めればそれに加えて拳と肘が追加し始める。
一撃ごとに、一太刀ごとに傷が増えていく。それでも自分の勝利のため、一歩もひるまず、譲ることはない。
正直、どちらが勝ってもおかしくはない。
互いに息を切らし、俺は決意する。
そろそろ、決着をつけよう。
エミール、俺には、帰る場所がある、待っている人がいる。
だから、負けるわけにはいかないんだ!
そして俺は一歩下がる。互いに、全力で、すべてを出し切る最後の一撃を繰り出す。
光属性<レインボー・オネスティー・スターダスト>
エミールも、それは同じだった。その槍が今までにないくらい黒く光る。
闇属性<ダークネス・エアレイド・アベージ>
いずれも斬撃の技。互いの全力を、目の前にある相手にぶつけあった。
そして──。
エミールが出現させた雲が晴れ、青空が見え始める。
光が射した空に、俺だけが存在している。
「はぁ……、はぁ……」
下に視線を向けると、エミールが地面に倒れこんでいる。
すでに虫の息。勝負は、決した。
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