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最終章 建国祭編
第99話 元勇者 最後の敵と相対する
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翌日。
本来であれば、建国祭り最終日だ。
国王をはじめとした、身分の高い人がパレードを行い、街は全国から来た人で大盛り上がりになる──。
はずだった。
にぎやかなはずの街は、シーンとしている。
そして今この街にいる国民たちは、かたずをのんで空を見ている。
無理を言って予定を明日にしてもらったのだ。
今日は、俺とエミールの決戦の日だからだ。
地上では、街の人たちが俺の勝利を願って街の空をじっと見ている。
ある修道院の服を着た人は祈りのポーズをとりながら。ある冒険者の人は一転に視線を集中させながら、誰もがかたずをのんで見守る。
そして俺はおとといのハスタルとの戦いのときのように、ルシフェルの力を借り、空の上にいる。
ここなら、彼女のほうも俺を見つけやすいからだ。
みんなが俺とエミールの戦いを見守っている。真下では、ローザとルシフェルが攻撃が飛んでこないようにシールドを張っている。
「陽君。応援してるよ。負けないで」
「絶対勝ちなさいよ。負けたら、承知しないんだから!」
「陽平さん。私たち、信じてますから」
セフィラは、剣を握っている。落ちてきた大きい物体を切り落とす役割なのだろう。
3人が、街のみんなが応援している。絶対に勝たなきゃ。
そして空に突如灰色の雲が出現し始める。雲は渦巻のようにぐるぐると回り始め、その中心が光始めると、大きな光の柱となり、その中に一人の人物のシルエットが見えてきた。
それは地上にいる人たちからも認識できるようで──。
「なんだよあれ、見たことねぇぞ!」
「あれが、エミールなんじゃねぇか?」
時折聞こえる冒険者の叫び声。それは、俺も理解できる。
その人物から発せられるオーラ。ここまで強い魔力のオーラを発せられるのは、一人しかいない。
「エミール。ずいぶんド派手な登場シーンだな」
「ありがとな。俺の術式じゃ、どうしても派手な出方になっちまうみたいでよ!」
俺も、エミールもわかっていた。特に言葉を交わす必要はない。戦って、どっちが強いか決める。
どっちが勝つかでこの世界の命運が決まる。それだけだ。
「そういえば、聞いていないぞ。お前、俺に勝ってどうするつもりなんだ?」
俺の質問に数秒の間だけ沈黙が起きる。そしてニヤリと笑ってエミールが答えた。
「──わかった。とりあえず、俺が勝ったらどうなるのかを分かりやすく教えてやる」
そしてエミールがパッと手をかざす。
するとその場所から3個ほどの物体が出てきた。
それは宙に浮いていて、エミールが指をはじくと、地上の人たちにも見えるように大きくなった。
その姿に俺は絶句する。
エミールが見せびらかしたもの、それは首から上の姿だ。
この3人、俺は見たことがある。
視線を要人たちの方向に向ける。王族、貴族たちの顔は見る見るうちに青ざめ、腰を抜かし、恐怖に支配されていく。
そう、貴族たちの首だ。
俺はエミールをにらみつけ始め問いかける。
「な、なんでこんなことをした」
「こいつらは貴族たちの中でも特に腐敗がひどく、国民たちをないがしろにしていた奴らだ。そして俺たちの故郷を焼いた張本人でもある」
確かこいつらはグリモ家。エミールの村を収めている貴族たちで、悪徳貴族だと評判だった奴だ。
「ここに首を持ってきたということは、何か理由があるんだろうな」
「ああ、最初はこいつらを殺して、放っておくつもりだったが。俺のこの世界に対する感情を表現する道具として、利用することにしたんだ」
なるほどね。確かこいつらはエミールの村を見捨てていた。だから殺した。そしてエミールはそれに対していや、俺たちの世界そのものに対しての怒りを表現しているってことだ。
「大好きだぜ──その恐怖に震え上がった顔。安心しろ。こいつを倒して、この世界に脅威がなくなったらお前たちも同じようにしてやるからよ」
「今回はこいつらだけだったが、次は、だれになるかな?」
にやりと笑いながら、エミールは周囲を見回す。
周囲の人たちは、明らかに恐怖に震えていた。当然だ。見せしめの様に人の首を見せしめにしてさらし首にしたのだから。
悪趣味なことをしている彼女に、俺は問いかける。
「なぜ見せびらかすように人の首を見せつける」
「恐怖で人を縛り付ける。これが1番なんだよ。俺たちに危害を加えるとどうなるか、この国の奴らに見せつけてやっているんだ」
エミールの行動を、全てを否定しているわけじゃない。
村を焼かれて、貴族たちに深い怒りを抱いている。それ自体は当たり前だ。彼らだって人々の住処を奪い、殺しているのだから、その報復にあたって文句を言う権利はない。
散々人々を殺してきたやつらが、そいつに逆に命を奪われそうになって、「それはおかしい」と叫ぶのは俺だって違和感があるからだ。
世の中、綺麗ごとだけじゃ回らないってのも、この世界で生きて来たからずっとわかる。
けれど、エミールは感情に任せてしまったせいか、やってはいけないことを犯してしまった。
「お前は、決してやってはならないタブーを犯してしまった」
「そうだな。だからどうした?」
平然と言い返す彼女。もはや引く気はないというのが態度からもわかる。
「1つは、魔王軍と組んだこと──。この時点で貴様は俺たちの敵になった」
本来であれば、建国祭り最終日だ。
国王をはじめとした、身分の高い人がパレードを行い、街は全国から来た人で大盛り上がりになる──。
はずだった。
にぎやかなはずの街は、シーンとしている。
そして今この街にいる国民たちは、かたずをのんで空を見ている。
無理を言って予定を明日にしてもらったのだ。
今日は、俺とエミールの決戦の日だからだ。
地上では、街の人たちが俺の勝利を願って街の空をじっと見ている。
ある修道院の服を着た人は祈りのポーズをとりながら。ある冒険者の人は一転に視線を集中させながら、誰もがかたずをのんで見守る。
そして俺はおとといのハスタルとの戦いのときのように、ルシフェルの力を借り、空の上にいる。
ここなら、彼女のほうも俺を見つけやすいからだ。
みんなが俺とエミールの戦いを見守っている。真下では、ローザとルシフェルが攻撃が飛んでこないようにシールドを張っている。
「陽君。応援してるよ。負けないで」
「絶対勝ちなさいよ。負けたら、承知しないんだから!」
「陽平さん。私たち、信じてますから」
セフィラは、剣を握っている。落ちてきた大きい物体を切り落とす役割なのだろう。
3人が、街のみんなが応援している。絶対に勝たなきゃ。
そして空に突如灰色の雲が出現し始める。雲は渦巻のようにぐるぐると回り始め、その中心が光始めると、大きな光の柱となり、その中に一人の人物のシルエットが見えてきた。
それは地上にいる人たちからも認識できるようで──。
「なんだよあれ、見たことねぇぞ!」
「あれが、エミールなんじゃねぇか?」
時折聞こえる冒険者の叫び声。それは、俺も理解できる。
その人物から発せられるオーラ。ここまで強い魔力のオーラを発せられるのは、一人しかいない。
「エミール。ずいぶんド派手な登場シーンだな」
「ありがとな。俺の術式じゃ、どうしても派手な出方になっちまうみたいでよ!」
俺も、エミールもわかっていた。特に言葉を交わす必要はない。戦って、どっちが強いか決める。
どっちが勝つかでこの世界の命運が決まる。それだけだ。
「そういえば、聞いていないぞ。お前、俺に勝ってどうするつもりなんだ?」
俺の質問に数秒の間だけ沈黙が起きる。そしてニヤリと笑ってエミールが答えた。
「──わかった。とりあえず、俺が勝ったらどうなるのかを分かりやすく教えてやる」
そしてエミールがパッと手をかざす。
するとその場所から3個ほどの物体が出てきた。
それは宙に浮いていて、エミールが指をはじくと、地上の人たちにも見えるように大きくなった。
その姿に俺は絶句する。
エミールが見せびらかしたもの、それは首から上の姿だ。
この3人、俺は見たことがある。
視線を要人たちの方向に向ける。王族、貴族たちの顔は見る見るうちに青ざめ、腰を抜かし、恐怖に支配されていく。
そう、貴族たちの首だ。
俺はエミールをにらみつけ始め問いかける。
「な、なんでこんなことをした」
「こいつらは貴族たちの中でも特に腐敗がひどく、国民たちをないがしろにしていた奴らだ。そして俺たちの故郷を焼いた張本人でもある」
確かこいつらはグリモ家。エミールの村を収めている貴族たちで、悪徳貴族だと評判だった奴だ。
「ここに首を持ってきたということは、何か理由があるんだろうな」
「ああ、最初はこいつらを殺して、放っておくつもりだったが。俺のこの世界に対する感情を表現する道具として、利用することにしたんだ」
なるほどね。確かこいつらはエミールの村を見捨てていた。だから殺した。そしてエミールはそれに対していや、俺たちの世界そのものに対しての怒りを表現しているってことだ。
「大好きだぜ──その恐怖に震え上がった顔。安心しろ。こいつを倒して、この世界に脅威がなくなったらお前たちも同じようにしてやるからよ」
「今回はこいつらだけだったが、次は、だれになるかな?」
にやりと笑いながら、エミールは周囲を見回す。
周囲の人たちは、明らかに恐怖に震えていた。当然だ。見せしめの様に人の首を見せしめにしてさらし首にしたのだから。
悪趣味なことをしている彼女に、俺は問いかける。
「なぜ見せびらかすように人の首を見せつける」
「恐怖で人を縛り付ける。これが1番なんだよ。俺たちに危害を加えるとどうなるか、この国の奴らに見せつけてやっているんだ」
エミールの行動を、全てを否定しているわけじゃない。
村を焼かれて、貴族たちに深い怒りを抱いている。それ自体は当たり前だ。彼らだって人々の住処を奪い、殺しているのだから、その報復にあたって文句を言う権利はない。
散々人々を殺してきたやつらが、そいつに逆に命を奪われそうになって、「それはおかしい」と叫ぶのは俺だって違和感があるからだ。
世の中、綺麗ごとだけじゃ回らないってのも、この世界で生きて来たからずっとわかる。
けれど、エミールは感情に任せてしまったせいか、やってはいけないことを犯してしまった。
「お前は、決してやってはならないタブーを犯してしまった」
「そうだな。だからどうした?」
平然と言い返す彼女。もはや引く気はないというのが態度からもわかる。
「1つは、魔王軍と組んだこと──。この時点で貴様は俺たちの敵になった」
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