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最終章 建国祭編
第96話 元勇者 ハスタルの望みをかなえる
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頭のよさ故、ここにいても未来がないことを理解しているからだ。
だからここにいるやつの大半はもう一つのタイプだ。
スラム街などの貧しい場所で生まれ、ろくに教育も受けていない人たち。それも感情的で、素行が悪いタイプ。
どこの世界にも一定層存在する。物分かりが悪くて、自分の感情でルールや規則というものを簡単に破ってしまう人たち。規則や刑罰、そんなことでは秩序を保てない存在というものが。
俺の以前の世界でも小学生で存在していた。
感情的でことあるごとに周囲に当たり散らしたり、暴力行為をしたりしている聞き分けの悪い子供たち。
何度言っても言うことを聞かない。聞き分けが悪く何度言っても暴れまわり悪さばかりをする。
そういうやつにあたる層が今魔王軍にいるということ。
「ここにいる連中が、そんな社会のルールや規則などを理解できると思うか? 溶け込めると思うか?」
「無理ね──」
だから集団に入ることができず、居場所を失ってしまう。
そんな奴らを俺たちの世界に解き放ったところで、溶け込めるわけがなく問題を起こすのが目に見えてる。
俺のそいつらと戦ってきて、これは感じていた。
だから他人に危害を加えさせないようにして居場所を作るのが1番だ。
「もう貴様たちの世界に危害を加えない。それを条件に部下たちの居場所を破壊するのをやめてくれ」
「つまり、貴様たちはもう俺たちの席を奪うことはしない代わりに、こっちも貴様たちの本拠地を責めたりしない。不可侵条約ということだな?」
「ご名答。そんなところだ」
「ま、納得いくわ。魔王軍の中でもまともな奴はあんたに負けた後に故郷に戻ったりしているもの」
ルシフェルもやれやれといった感じであきれ顔だ。
「まあ、俺たちは平和さえ守れれば戦うことはない。そっちが戦う気がないというなら無理に犠牲を出して攻める理由なんてないしな」
相手が攻めてこないというのなら、俺たちも居場所を奪うことまでする必要ない。世界を平和に保つのが俺たちの目的だ。
侵略行為をしないというのならばこっちも咎めない。
だが、そのために聞きたいことがある。明らかに矛盾した行為についてだ。
「じゃあ、なんで昨日俺たちの街を攻めたんだ? 言っていることとやっていることが違うじゃないか」
俺はそれが疑問に思っていた。この約束を成立させるためには「信用」だ。いくらこの約束を結んだとしても、こいつらがここを安住の地とするには、俺たちの世界を決して進行しないという保証が必要だ。
「そうよ。それじゃあ昨日あなたたちが起こした出来事の説明がつかないわ!」
ルシフェルもハスタルのことを責める。
昨日の様に俺たちの街を攻めるのは絶対にやってはいけないことだ。
あんなことをすれば、俺たちの世界の間で、魔王軍たちへの敵愾心が強くなっていき、滅ぼすべきだという声だって上がってしまう。
というかすでに上がってきている──。
「我々はとある人物と同盟を組んだ。そのものは強力な力によって我々に入り込み、高い指導力によって我らに入り込んでは次々と魔王軍の兵士たちの支持を勝ち取っていった。今魔王軍はその人物によって支配されている」
ハスタルはうつむき、うなだれながら話し始める。
「エミールか?」
「フッ、勘がいいな貴様。その通りだ」
そんな予感はしていた。兵士たちは、単純に力が強いやつを好む。そんな奴らに、エミールはうってつけというわけだ。
部下たちがみんなエミールの意見に賛成してしまえば、いくらこいつといっても無視することはできない。
もし彼らの意見をないがしろにして支持を失ってしまえば、部下たちが反乱を起こしてハスタルをリーダーだと認めなくなってしまう。
こいつ、まるで中間管理職みたいだ。
「エミールは貴様たちの世界に強い憎しみを抱いている。今回は様子見ということ そして我も部下たちを引き連れて攻め入ったということだ」
「つまり、理由があったということだな」
しかし、どんな理由があろうとこいつらが俺たちの街を攻め入ったことは事実だ。それについては強く言わないとだめだ。
「俺だって絶対的な権力があるわけではない。もし何度もこんなことをして、冒険者達や王族たちが魔王軍たちを一匹残らず殲滅するって言ったら、止められる保証なんてない。それだけは肝に銘じておけよ」
「わかっている」
当たり前だ。俺だって、他の冒険者たちが怒りに駆られたらそれを絶対止めるなんてできない。
こいつらだって、自制心を持って攻撃をやめてくれないと困る。
こいつもこいつで、いらないなんてことはない。交渉する役は少ない方がいい。こいつがいなくなったら、魔王軍は烏合の衆になり、統率が聞かなくなってしまう。このまままとめ役としていてもらおう。
どうやら話は通じたみたいだ。
そしてハスタルはフッと笑みを浮かべた。
「いい情報を教えてやろう、とある人物が貴様たちの街を責める。もちろんエミールだ」
やはり、戦わなきゃいけないのか。正直、絶対勝てるなんて保証は持てない。
だからここにいるやつの大半はもう一つのタイプだ。
スラム街などの貧しい場所で生まれ、ろくに教育も受けていない人たち。それも感情的で、素行が悪いタイプ。
どこの世界にも一定層存在する。物分かりが悪くて、自分の感情でルールや規則というものを簡単に破ってしまう人たち。規則や刑罰、そんなことでは秩序を保てない存在というものが。
俺の以前の世界でも小学生で存在していた。
感情的でことあるごとに周囲に当たり散らしたり、暴力行為をしたりしている聞き分けの悪い子供たち。
何度言っても言うことを聞かない。聞き分けが悪く何度言っても暴れまわり悪さばかりをする。
そういうやつにあたる層が今魔王軍にいるということ。
「ここにいる連中が、そんな社会のルールや規則などを理解できると思うか? 溶け込めると思うか?」
「無理ね──」
だから集団に入ることができず、居場所を失ってしまう。
そんな奴らを俺たちの世界に解き放ったところで、溶け込めるわけがなく問題を起こすのが目に見えてる。
俺のそいつらと戦ってきて、これは感じていた。
だから他人に危害を加えさせないようにして居場所を作るのが1番だ。
「もう貴様たちの世界に危害を加えない。それを条件に部下たちの居場所を破壊するのをやめてくれ」
「つまり、貴様たちはもう俺たちの席を奪うことはしない代わりに、こっちも貴様たちの本拠地を責めたりしない。不可侵条約ということだな?」
「ご名答。そんなところだ」
「ま、納得いくわ。魔王軍の中でもまともな奴はあんたに負けた後に故郷に戻ったりしているもの」
ルシフェルもやれやれといった感じであきれ顔だ。
「まあ、俺たちは平和さえ守れれば戦うことはない。そっちが戦う気がないというなら無理に犠牲を出して攻める理由なんてないしな」
相手が攻めてこないというのなら、俺たちも居場所を奪うことまでする必要ない。世界を平和に保つのが俺たちの目的だ。
侵略行為をしないというのならばこっちも咎めない。
だが、そのために聞きたいことがある。明らかに矛盾した行為についてだ。
「じゃあ、なんで昨日俺たちの街を攻めたんだ? 言っていることとやっていることが違うじゃないか」
俺はそれが疑問に思っていた。この約束を成立させるためには「信用」だ。いくらこの約束を結んだとしても、こいつらがここを安住の地とするには、俺たちの世界を決して進行しないという保証が必要だ。
「そうよ。それじゃあ昨日あなたたちが起こした出来事の説明がつかないわ!」
ルシフェルもハスタルのことを責める。
昨日の様に俺たちの街を攻めるのは絶対にやってはいけないことだ。
あんなことをすれば、俺たちの世界の間で、魔王軍たちへの敵愾心が強くなっていき、滅ぼすべきだという声だって上がってしまう。
というかすでに上がってきている──。
「我々はとある人物と同盟を組んだ。そのものは強力な力によって我々に入り込み、高い指導力によって我らに入り込んでは次々と魔王軍の兵士たちの支持を勝ち取っていった。今魔王軍はその人物によって支配されている」
ハスタルはうつむき、うなだれながら話し始める。
「エミールか?」
「フッ、勘がいいな貴様。その通りだ」
そんな予感はしていた。兵士たちは、単純に力が強いやつを好む。そんな奴らに、エミールはうってつけというわけだ。
部下たちがみんなエミールの意見に賛成してしまえば、いくらこいつといっても無視することはできない。
もし彼らの意見をないがしろにして支持を失ってしまえば、部下たちが反乱を起こしてハスタルをリーダーだと認めなくなってしまう。
こいつ、まるで中間管理職みたいだ。
「エミールは貴様たちの世界に強い憎しみを抱いている。今回は様子見ということ そして我も部下たちを引き連れて攻め入ったということだ」
「つまり、理由があったということだな」
しかし、どんな理由があろうとこいつらが俺たちの街を攻め入ったことは事実だ。それについては強く言わないとだめだ。
「俺だって絶対的な権力があるわけではない。もし何度もこんなことをして、冒険者達や王族たちが魔王軍たちを一匹残らず殲滅するって言ったら、止められる保証なんてない。それだけは肝に銘じておけよ」
「わかっている」
当たり前だ。俺だって、他の冒険者たちが怒りに駆られたらそれを絶対止めるなんてできない。
こいつらだって、自制心を持って攻撃をやめてくれないと困る。
こいつもこいつで、いらないなんてことはない。交渉する役は少ない方がいい。こいつがいなくなったら、魔王軍は烏合の衆になり、統率が聞かなくなってしまう。このまままとめ役としていてもらおう。
どうやら話は通じたみたいだ。
そしてハスタルはフッと笑みを浮かべた。
「いい情報を教えてやろう、とある人物が貴様たちの街を責める。もちろんエミールだ」
やはり、戦わなきゃいけないのか。正直、絶対勝てるなんて保証は持てない。
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