【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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最終章 建国祭編

第94話 元勇者 ハスタルの術式を打ち破る

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「何故だ? なぜ我の攻撃が当たらない」

 驚愕するハスタル。こいつの仕掛けた攻撃を、俺は全てかわしていったのだ。

 それもよけた動作もほとんどなく。
 これが俺が編み出した戦術だ。現状、こいつの攻撃を肉眼だけでかわすことはできない。けれど、あくまで反射速度が速くなっただけ。

 攻撃力が上がったわけでも、時間が増えたわけでもない。
 目で追えなくなるだけ。それなら、目だけで追うのをやめればいい。

 だから魔力で精神を統一させ、全身で周囲の動きを感じ取り、必要最低限の動きだけでハスタルの攻撃をかわしていった。

 昨日、付け焼刃でその術式を練習していたんだ。とりあえず、今のところはうまくいっている。

 ハスタルの奴、どうして攻撃が当たらないか明らかに理解していない。
 明らかに焦りだしているのがよくわかる。

 一気に接近してきてはその反射速度に任せてごり押しで攻めて来る。
 しかし、戦術もなく、ただしゃむに突っ込んでくるだけの攻撃など、怖くもなんともない。
 俺は今まで通り、最低限の動きでハスタルの攻撃を受け流し、よけていく。


 ハスタルの攻撃は俺のスレスレを通り、当たることはない。そして俺はハスタルに急接近し──。


 ズバァァァァァァァァ──!


 初めての一撃を与える。ハスタルに防ぐ手立てはなく、直撃した右肩を抑えて一歩後退。
 俺に剣を向けながら、問いかけてくる。

「貴様、どうして私の攻撃をそんな動きでかわすことができる──」

 動揺しているのが手に取るようにわかる。まあ、そりゃそうだろうな。以前の戦いでは集団でやっと倒した強敵。

 それが今では俺1人にすべて動きを読まれて攻撃を食らったんだもんな。でも、そんな情報、教えるわけないだろう。

「さあな、自分で考えるんだな!」

 俺が余裕を見せて言い放つ。すると、ハスタルは急に落ち着きを取り戻し始めた。


「なるほどな。わずか1日で我の術式を攻略するとは、素晴らしい。褒めてつかわす」

「誉め言葉をありがとう」

 別に嬉しくねーよ。当然だ。俺は、以前の世界常に危険と隣り合わせだった。真剣勝負で、負けても命が無事だというのは幸運だ。下手をしたら死ぬことだってあり得る。そんな中で、勝ち続けるためには、常に進化し続けなければいけなかった。

 次、弱いところを見せたら死ぬことだってあり得た極限の世界で俺は常に成長し、強くなっていったんだ。

 強さにかまけてお城でふんぞり返っていた貴様とはわけが違うのだ。



「だが、これはどうかな? これが、私の──最後の力だ!」

 ハスタルの魔剣が強く光りだした。また、何かをやってくるぞ。

「さあ元勇者よ。この攻撃、果たして攻略できるかな?」

 そしてハスタルが距離を詰めてくる。間違いない、何か仕掛けてくる。
 少なくとも今までの俺の戦術には対応できているのだろう。慎重に対応した方がいい。

 俺は相手の様子を見つつ、攻撃に対応としようとするが──。


「なんだ、これは──」

 防げない──。

 さっきまでと明らかに違う。ってまずい!



 スパッッッッッッッ──!

 こめかみのところに剣を貫かれた痛みが走る。
 無理やり首をひねって回避していなければ、魔剣が俺の脳を貫通していたところだ。

「さあどうした元勇者。逃げてばかりいては、勝つことはでいないぞ!」

 その叫び声に俺は剣を持ち替え、攻勢に出る。守るだけではだめだ、たとえ攻撃が通らなくても、相手の谷攻撃をやめさせれば、その攻撃には意味がある。

 そして互いに打ち合いながら全神経を集中させる。

 もっと集中しろ、軌道を読んで、それをか──。

 相手の攻撃に目を凝らし、ハスタルの攻撃を注視。しかしその瞬間、自らの頭部に鋭利な剣の感触。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

「陽君!」

 再びこめかみに触れる感触にとっさに首をひねる俺。間一髪で致命傷は避けるが、引き裂かれたこめかみの皮膚から、焼けるような痛み意を簡易始める。

 激痛の中で、俺は理解した。
 敵を見失ったわけでも、見えないくらい早いわけでもない。

 そう、見えていないのだ。

 そして攻撃してくる角度。これは毎回同じ。
 間違いない。盲点から攻撃を仕掛けているんだ。ひとには盲点となる場所がある。目の特性上、光を感知することができない場所。


 その場所を利用しているんだ。

 確かにさっきまでは、本気で俺を討ち取ろうという気がしなかった。

 何度か試行錯誤をしていたのだろう。そしてたどり着いていったのだ。俺の盲点の位置を。
 口で言うほどたやすいことではない。針の穴を通すような真似。正確な魔力制御、剣裁きを見せながら俺の動きを細かに理解する観察眼。それらがなければこんな策は机上の空論となってしまう。

 さすが魔王軍幹部といった感じだ。
 そして俺の素振りから盲点の場所を探り当てたのだろう。

 反応速度が高いという圧倒的優位な状況にあるにも関わらず、それに溺れることなく打ち破られても次の対策を用意している。

 そんじょそこらにいる雑魚敵とは違う。本当の意味での強敵といえる。

 さて、この戦術。
 どう打ち破るべきか──。そう考えながらハスタルの攻撃に対応する。
 通常よりずっと神経を研ぎ澄まし対応するが、攻撃を完全に受けきれるわけではない。間一髪で致命傷からそらすものの、じわじわとダメージを受けてしまう。

「どうだ元勇者よ。さっきから防戦一方ではないか、さっさと諦めたらどうか?」

「ふざけるな。貴様などに、あの国を、街を、国民たちを渡すわけにはいかない」

「だがどうする。いくら我の攻撃を見定めようとしても、肉眼でとらえることはできない。今貴様がやっていることもただの悪あがきでしかないのだ」

 こいつめ、完全に勝った気でいるな。だが正論ではある。現状、俺はこいつの攻撃に対応しきれていない。

 いくら俺が集中してこいつの攻撃を捕らえようとしても──。

 捕える? そうか、わかったぞ。攻略法が──。
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