93 / 103
最終章 建国祭編
第93話 元勇者、魔王軍の本拠地へ
しおりを挟む
次の日、俺とルシフェルは彼女の術式を使って目的の場所へ。
灰色の空。荒涼とした大地。その中心に例の場所はあった。
魔王軍の本拠地シャールノス城。黒檀の宮殿のような形状をしていて、圧倒的な存在感を放っていた。
「懐かしいわ。私はあの城でずっと暮らしていたわ。そしてずっと部下たちと暮らしていたもの」
確かに、ルシフェルにとってはかつて暮らしていた場所だ。故郷のような感じなのだろう。
俺にとっても懐かしさはある。俺が、以前この世界にいた時。ここでルシフェルたちと死闘を繰り広げたのは記憶に新しい。
そして俺たちは入り口の城門に立つ。
「何だ貴様たち。ここに立ち入ることは許されぬぞ」
門番の兵士たちがやってきて、話しかけてきた。当然止められる、しかし──。
「元勇者よ、戦うならばそこの荒野でよかろう」
「決戦? どういうことですか、ハスタル様」
決して忘れないどす黒い声。ハスタルだ。
「ありがとな、話が早くて助かる」
「我と貴様はどうせ戦う運命にある。であればさっさと決着をつけた方が良いだろう? だが貴様と我がこんなところで暴れまわれば城はがれきの山へとなる。それだけは避けさせてもらう」
「賛成よ。下手にここを壊して、残党たちが暴れまわるのは嫌だもの」
ルシフェルもこの案には賛成。ということで俺たちは人気がいないところまで移動開始。
歩きながら、ハスタルはルシフェルに話しかける。
「ルシフェルよ。貴様がいなくなった後、私が魔王軍を束ねてわかったことがある。貴様、よくあんなはねっ返りの奴らを束ねていたな」
「当たり前じゃない。まともな価値観を持って育てられた奴はそもそも魔王軍なんかならないわ。苦労したのよ、あいつらをまとめげるのは」
「その言葉、この立場になった今だからこそ理解できる。とりあえず聞いてみよう。もう一度こいつらをまとめ上げる気はないか?」
ルシフェルはやれやれとあきれ顔を見せて一言。
「冗談? だったらこうして人間になんかなってないわ」
「考えて見ればそうだな」
同じ魔王軍のトップを経験した者同士の話。やはり苦労があるのだろう。どこか腹を割って話す様に会話をしている。
「この辺りでよかろう」
歩いて30分ほど。俺たちは戦いにふさわしい場所へと足を運んだ。
周囲一面荒涼とした大地が広がっている。周囲に人の気配はない。まさに決戦にふさわしい舞台だ。
「──そうだな」
俺たちは特に会話を交わさない。そんなものごときで物事が解決するとは考えていない。
互いに死力を尽くし、勝った方が望みをかなえられる。
それを理解していたからだ。
俺とハスタルの戦いが再び始まる。
「敗北という結果を知っていて我に挑むとは、勇者というのも大変なものだ」
なんとでも言え。吠えずらを書くのはどっちか、わからせてやる。
「変な前置きなんていらない。さっさと決着をつけよう」
「そうだな。ここに来たということは、それ早々の覚悟を持っているということだろう。行くぞ」
話が速くて助かる。さあ、対決だ。
何もない荒野で、武器を召喚し、向き合う俺とハスタル。そしてそれを見つめるルシフェル。
「じゃあ、行かせてもらうぞ」
「来い、元勇者」
変な説得なんてしない。そんなことをしても無駄で戦うことになっているのは目に見えている。だから、戦う、立ち向かう。それだけだ。
そして俺は一気にハスタルへと突っ込んでいく。
ハスタルの動きは通常に人間ではありえない反応ができる。
俺はその動きに警戒しながら時折反撃をする。
そしてハスタルに無理気味に突っ込んだ時、それは起こった。
昨日戦った時より魔剣が引き気味になっている。
俺の思考に気付いたのか、ハスタルは自慢げに話してきた。
「元勇者よ、同じ手が通用すると思うなよ」
「言われなくたって、そんなことしないよ」
それは理解している。こいつは相当頭の切れるやつだ。同じ手は2度は食わない。昨日俺がこいつにやった刺し違えて勝つという方法は、間違いなく通用しないだろう。
そう、常人離れしたこいつを真っ向からねじ伏せる必要があるのだ。
でも、それができるから俺はここに来たんだ。
俺はハスタルから一歩引いて間合いを作る。そして一瞬だけ目をつぶった後、魔力を体内に強く込めた。
深呼吸をしてリラックスをする。
そして──。
一気にハスタルの方向へと突っ込んでいく。
「馬鹿め。無策で突っ込むとは、勝負あったな元勇者」
ハスタルは自信満々に叫んで、俺に向かって突っ込んでくる。彼の思い通りに曲がる剣。そして人間ではありえないほどの反応速度。
普通の冒険者ならば、まともに反応できず勝負は決まってしまうであろう一撃。
それに対して俺は……。
「無策だと? なめているのか貴様! ならば細切れになるがよい」
特に変な動作をすることもなく突っ込む。その姿にハスタルは高笑い。
勝負は決まったと俺に攻撃を仕掛ける。
よけようがない、目に見えない速さとよけようがない曲線を描いた一撃。
しかし──。
「何故だ? なぜ我の攻撃が当たらない」
驚愕するハスタル。こいつの仕掛けた攻撃を、俺は全てかわしていったのだ。
灰色の空。荒涼とした大地。その中心に例の場所はあった。
魔王軍の本拠地シャールノス城。黒檀の宮殿のような形状をしていて、圧倒的な存在感を放っていた。
「懐かしいわ。私はあの城でずっと暮らしていたわ。そしてずっと部下たちと暮らしていたもの」
確かに、ルシフェルにとってはかつて暮らしていた場所だ。故郷のような感じなのだろう。
俺にとっても懐かしさはある。俺が、以前この世界にいた時。ここでルシフェルたちと死闘を繰り広げたのは記憶に新しい。
そして俺たちは入り口の城門に立つ。
「何だ貴様たち。ここに立ち入ることは許されぬぞ」
門番の兵士たちがやってきて、話しかけてきた。当然止められる、しかし──。
「元勇者よ、戦うならばそこの荒野でよかろう」
「決戦? どういうことですか、ハスタル様」
決して忘れないどす黒い声。ハスタルだ。
「ありがとな、話が早くて助かる」
「我と貴様はどうせ戦う運命にある。であればさっさと決着をつけた方が良いだろう? だが貴様と我がこんなところで暴れまわれば城はがれきの山へとなる。それだけは避けさせてもらう」
「賛成よ。下手にここを壊して、残党たちが暴れまわるのは嫌だもの」
ルシフェルもこの案には賛成。ということで俺たちは人気がいないところまで移動開始。
歩きながら、ハスタルはルシフェルに話しかける。
「ルシフェルよ。貴様がいなくなった後、私が魔王軍を束ねてわかったことがある。貴様、よくあんなはねっ返りの奴らを束ねていたな」
「当たり前じゃない。まともな価値観を持って育てられた奴はそもそも魔王軍なんかならないわ。苦労したのよ、あいつらをまとめげるのは」
「その言葉、この立場になった今だからこそ理解できる。とりあえず聞いてみよう。もう一度こいつらをまとめ上げる気はないか?」
ルシフェルはやれやれとあきれ顔を見せて一言。
「冗談? だったらこうして人間になんかなってないわ」
「考えて見ればそうだな」
同じ魔王軍のトップを経験した者同士の話。やはり苦労があるのだろう。どこか腹を割って話す様に会話をしている。
「この辺りでよかろう」
歩いて30分ほど。俺たちは戦いにふさわしい場所へと足を運んだ。
周囲一面荒涼とした大地が広がっている。周囲に人の気配はない。まさに決戦にふさわしい舞台だ。
「──そうだな」
俺たちは特に会話を交わさない。そんなものごときで物事が解決するとは考えていない。
互いに死力を尽くし、勝った方が望みをかなえられる。
それを理解していたからだ。
俺とハスタルの戦いが再び始まる。
「敗北という結果を知っていて我に挑むとは、勇者というのも大変なものだ」
なんとでも言え。吠えずらを書くのはどっちか、わからせてやる。
「変な前置きなんていらない。さっさと決着をつけよう」
「そうだな。ここに来たということは、それ早々の覚悟を持っているということだろう。行くぞ」
話が速くて助かる。さあ、対決だ。
何もない荒野で、武器を召喚し、向き合う俺とハスタル。そしてそれを見つめるルシフェル。
「じゃあ、行かせてもらうぞ」
「来い、元勇者」
変な説得なんてしない。そんなことをしても無駄で戦うことになっているのは目に見えている。だから、戦う、立ち向かう。それだけだ。
そして俺は一気にハスタルへと突っ込んでいく。
ハスタルの動きは通常に人間ではありえない反応ができる。
俺はその動きに警戒しながら時折反撃をする。
そしてハスタルに無理気味に突っ込んだ時、それは起こった。
昨日戦った時より魔剣が引き気味になっている。
俺の思考に気付いたのか、ハスタルは自慢げに話してきた。
「元勇者よ、同じ手が通用すると思うなよ」
「言われなくたって、そんなことしないよ」
それは理解している。こいつは相当頭の切れるやつだ。同じ手は2度は食わない。昨日俺がこいつにやった刺し違えて勝つという方法は、間違いなく通用しないだろう。
そう、常人離れしたこいつを真っ向からねじ伏せる必要があるのだ。
でも、それができるから俺はここに来たんだ。
俺はハスタルから一歩引いて間合いを作る。そして一瞬だけ目をつぶった後、魔力を体内に強く込めた。
深呼吸をしてリラックスをする。
そして──。
一気にハスタルの方向へと突っ込んでいく。
「馬鹿め。無策で突っ込むとは、勝負あったな元勇者」
ハスタルは自信満々に叫んで、俺に向かって突っ込んでくる。彼の思い通りに曲がる剣。そして人間ではありえないほどの反応速度。
普通の冒険者ならば、まともに反応できず勝負は決まってしまうであろう一撃。
それに対して俺は……。
「無策だと? なめているのか貴様! ならば細切れになるがよい」
特に変な動作をすることもなく突っ込む。その姿にハスタルは高笑い。
勝負は決まったと俺に攻撃を仕掛ける。
よけようがない、目に見えない速さとよけようがない曲線を描いた一撃。
しかし──。
「何故だ? なぜ我の攻撃が当たらない」
驚愕するハスタル。こいつの仕掛けた攻撃を、俺は全てかわしていったのだ。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる