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最終章 建国祭編
第92話 元勇者 賭けに出る
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「兵士さん。避難のほうは大丈夫ですか?」
「避難のほうは順調です。うまく誘導できています。そちらのほうは?」
「魔獣たちは、順調に倒しています。このあたりの敵はいなくなったので別の場所に応援に行くつもりです」
「わかりました」
「セフィラちゃん。うまく、いきそうだね」
「そうですね、ローザ様」
順調な戦いの推移に一安心していると、ローザが何かに気付く。
「セフィラちゃん。後ろ何か、黒く光ってるけど、何?」
「えっ?」
ローザの疑問にセフィラが後ろを振り向く。すると──。
グォォ──、グァァァァァァァァァァッッ──
その姿にローザとセフィラは驚いて目を見開く。
「魔獣が、復活した?」
ローザの言葉通り、さっき倒したはずの魔獣が出現したのだ。
「と、とにかく戦わないと──」
そして再び冒険者たちが魔獣と戦い始める。しかし彼らもさっきまで魔獣たちと戦っていて消耗している。
「ま、また戦うのかよ……」
中には弱気になる冒険者も現れる。それでも……。
「大丈夫。陽君だって、みんなだって戦っているんだもん。私も、頑張る」
「──そうですね、私たちも、頑張りましょう」
ローザが、この程度であきらめる子のなどなかった。彼女はどんな時も前を向いて戦うことを選んでいる。それにつられて、セフィラも前向きな気持ちになる。
周囲の冒険者も。
2人の、冒険者たちの死闘が始まった。
そして空中にいる俺とハスタル。
倒したはずの魔獣たちがよみがえる姿を見た後、ハスタルを強くにらみつけた。
「これは、どういうことだ!」
「さあな、たまには自分で考えてみろ」
ハスタルは答えを言わない。まあ、自ら手の内をさらすほどこいつは馬鹿じゃない。
「陽君。多分こいつが魔獣たちを操っているのよ。だからあなたがこいつを倒さないと、永遠に魔獣が復活してしまうわ」
その声は地上から聞こえた。ルシフェルだ。
ルシフェルの言葉に俺は驚愕する。じゃあ、俺がこいつを倒さないと魔獣たちは消えないってことか。
そういうことか。そして俺は視線をハスタルに向ける。
「馬鹿め。きさまに敗れてから3年間。私が何もしていないと思ったか。私は強くなった、二度と人間たちには負けないと。死に物狂いで修業を重ね、苦しみの末にこの魔剣を手に入れた。元勇者よ、今度こそ貴様をこの世から抹殺してやる」
その言葉に俺は思わず苦笑いをする。
「努力の方向音痴というやつか。その努力を人々のために使えば俺と死闘を繰り広げることも、人類から敵として扱われることもないだろうに」
そして再び俺とハスタルの戦闘が始まる。
展開は、さっきまでと同じだ。俺は常に押されっぱなし。当然だ、攻略法や弱点を見つけたわけではないのだから。
認めよう。今の俺では、こいつに完全に勝つことはできない。だが、だからと言って絶対に負けると言われればそうじゃない。
俺は以前この世界にいたとき、様々な敵と出会った。中には圧倒的な魔力を持っていて、その時での実力では到底勝てないような奴だっていた。
それでも俺は、勝利を求めれれた。そしてそんな絶望的な状況に追い込まれた状況で理解し、修得した技がある。
確かにこいつの力は圧倒的だ。真正面から戦ったとしても、俺やほかの冒険者ではこいつに勝てる可能性は限りなく低いだろう。
それでもこいつにスキがないわけじゃない。
どんな強者にだって、好きというものはある。
俺はハスタルの攻撃を受けきれず、体がのけぞってしまう。
そしてハスタルは勝負を決めようと一気に間合いを詰めてくる。
そう、獲物を捕らえる瞬間だ。
誰だって対象の敵を倒す瞬間、勝ったという感情が先走り、気が緩む。
その習性を逆利用した、最後の手段がこれだ。
ハスタルは俺の肉体を思いっきり一刀両断。
魔力により、肉体は傷つきはしないものの、並みの冒険者なら一撃で勝負がついているであろう攻撃を俺は受ける、
その瞬間、ハスタルは叫ぶ。
「グホッ──、貴様ぁぁぁぁぁ!」
心臓部分に渾身の突きを食らいながら。
突き刺した感覚から、彼の体を貫通しているのがわかる。まあ、人間ではないから、死にはしないだろう。
俺もその瞬間、魔力によって無理やり斬撃の速度を高めてハスタルの体を突き刺したのだ。
いくら経験があるといっても、勝利を疑わなかったこいつはほぼ無警戒だったため防ぐことができなかった。
俺の長所は、ただ攻撃が高いだけじゃない。耐久の高さを生かして、通常では瞬殺されるような状況だって生き残ることができる。
普通の冒険者ならば無謀といわれるような、曲芸じみた芸当をして、無理対面を突破する。
口で言うほど、簡単じゃない。これはどうにもならなかったときに最後にとる手段。
当然こっちも致命傷を受ける。正直、こっちも戦える気がしない。
それは、ハスタルも同じなのだが。
「元勇者め、こんな奥の手を用意していたとは……」
街に視線を移すと、魔獣たちが消滅していっているのがわかる。
これで街はとりあえず大丈夫だろう。
「当たり前だ。黙ってやられる俺じゃない。あきらめの悪さなら、誰にだって負けない自信がある」
とはいえ俺も相当ダメージを受けている。仮に仕留めても、それ以上のことができなくなってしまうのがこの作戦の欠点だ。
「──貴様の強さは認める。ここは引くとしよう。だが、貴様もこれ以上戦えないようだな」
そしてハスタルはホールの中へと消えていった。俺は、追うようなことはしない。当然だ、もう戦えないのだから。
俺は地上に降りた。
するとその場所にルシフェルが早足でやってくる。
「陽君。よく勝ったじゃない」
「ごめん、捕えられなかった。ってルシフェル、大丈夫か?」
よほど魔力を消費したのだろう。少しふらついているのがわかる。
よろよろになっている彼女の体をぎゅっと抱きしめて支えると、ルシフェルがかすれた声で言葉を漏らす。
「だ、大丈夫よ。ただ、あなたの足を引っ張りたくないって思って、無理をしすぎたみたい」
「あ、ありがとう。俺のために、ここまで体を張ってくれて」
「いいえ。私の責任でもあるわ。彼をここまで増長させたのは私の責任でもあるもの」
とはいえ今の状況は一時的に敵を追い払っただけ。
本体を消さないと、また現れるだろう。そしてそれはあのホールの先にあるとも割れるのだが──。
「ルシフェル、あのホールの先、わかるか?」
ルシフェルは腕を組んで少しの間考え込む。そしてどこか思いつめたような表情で言葉を返してきた」
「あの力があるのは、魔王軍の本拠地シャールノスだと思うわ」
その表情から、俺にはルシフェルが何を考えているかすぐに理解した。
「私が直接彼のところに行って、力づくで説得する!」
腐れ縁というものだろうか、予想していた答えと全く同じものが返ってきた。だから、返す言葉は決まっている。
「俺も行く。どうせ、どれだけ説得したって聞かないんだろ。力になるよ」
こいつの性格は理解している。一度心から決めたことは何があっても止めることはない。たとえそれで命を失うことになっても。
「明日のデートは返上。悪いけど、休日出勤確定よ」
「そうだな。明日、あいつのところに行って。あいつをぶっ飛ばしていこう」
こうして明日の、ルシフェルとのデートは、ハスタルとの決戦へと変わっていった。
残念だったけど、この街のためなら仕方がない。
この後俺は、ローザたちと合流。起こったことなどを聞いた後、破壊された町の復旧作業などの手伝いをした。
そして夜、ローザたちに明日ハスタルがいる魔王軍の本拠地へ行くことを説明。
そして予想通りの答えが返ってきた。
「陽君。私も行きたい。力になりたい」
「そうです陽平さん。私たちも、行かせてくれませんか?」
当然こうなる。2人だってこの街を守りたいのは一緒だ。でも──。
「ごめん。これは俺とルシフェルだけで行かせてほしい」
それは、受け入れることができなかった。
2人を、100パーセント守れる自信がない。最悪、人質になってしまう恐れだってある。
そう丁寧に説明した。
「──わかった。それなら、いいよ」
「すいません。私では力が足りなくて……」
残念そうな表情で、理解してくれる2人。2人の善意を断るのは罪悪感があるけれど、彼女たちを失うわけにはいかない。
そして俺たちはベッドへ。明日、ハスタルとの戦い。強敵だけど、絶対勝つ。
「避難のほうは順調です。うまく誘導できています。そちらのほうは?」
「魔獣たちは、順調に倒しています。このあたりの敵はいなくなったので別の場所に応援に行くつもりです」
「わかりました」
「セフィラちゃん。うまく、いきそうだね」
「そうですね、ローザ様」
順調な戦いの推移に一安心していると、ローザが何かに気付く。
「セフィラちゃん。後ろ何か、黒く光ってるけど、何?」
「えっ?」
ローザの疑問にセフィラが後ろを振り向く。すると──。
グォォ──、グァァァァァァァァァァッッ──
その姿にローザとセフィラは驚いて目を見開く。
「魔獣が、復活した?」
ローザの言葉通り、さっき倒したはずの魔獣が出現したのだ。
「と、とにかく戦わないと──」
そして再び冒険者たちが魔獣と戦い始める。しかし彼らもさっきまで魔獣たちと戦っていて消耗している。
「ま、また戦うのかよ……」
中には弱気になる冒険者も現れる。それでも……。
「大丈夫。陽君だって、みんなだって戦っているんだもん。私も、頑張る」
「──そうですね、私たちも、頑張りましょう」
ローザが、この程度であきらめる子のなどなかった。彼女はどんな時も前を向いて戦うことを選んでいる。それにつられて、セフィラも前向きな気持ちになる。
周囲の冒険者も。
2人の、冒険者たちの死闘が始まった。
そして空中にいる俺とハスタル。
倒したはずの魔獣たちがよみがえる姿を見た後、ハスタルを強くにらみつけた。
「これは、どういうことだ!」
「さあな、たまには自分で考えてみろ」
ハスタルは答えを言わない。まあ、自ら手の内をさらすほどこいつは馬鹿じゃない。
「陽君。多分こいつが魔獣たちを操っているのよ。だからあなたがこいつを倒さないと、永遠に魔獣が復活してしまうわ」
その声は地上から聞こえた。ルシフェルだ。
ルシフェルの言葉に俺は驚愕する。じゃあ、俺がこいつを倒さないと魔獣たちは消えないってことか。
そういうことか。そして俺は視線をハスタルに向ける。
「馬鹿め。きさまに敗れてから3年間。私が何もしていないと思ったか。私は強くなった、二度と人間たちには負けないと。死に物狂いで修業を重ね、苦しみの末にこの魔剣を手に入れた。元勇者よ、今度こそ貴様をこの世から抹殺してやる」
その言葉に俺は思わず苦笑いをする。
「努力の方向音痴というやつか。その努力を人々のために使えば俺と死闘を繰り広げることも、人類から敵として扱われることもないだろうに」
そして再び俺とハスタルの戦闘が始まる。
展開は、さっきまでと同じだ。俺は常に押されっぱなし。当然だ、攻略法や弱点を見つけたわけではないのだから。
認めよう。今の俺では、こいつに完全に勝つことはできない。だが、だからと言って絶対に負けると言われればそうじゃない。
俺は以前この世界にいたとき、様々な敵と出会った。中には圧倒的な魔力を持っていて、その時での実力では到底勝てないような奴だっていた。
それでも俺は、勝利を求めれれた。そしてそんな絶望的な状況に追い込まれた状況で理解し、修得した技がある。
確かにこいつの力は圧倒的だ。真正面から戦ったとしても、俺やほかの冒険者ではこいつに勝てる可能性は限りなく低いだろう。
それでもこいつにスキがないわけじゃない。
どんな強者にだって、好きというものはある。
俺はハスタルの攻撃を受けきれず、体がのけぞってしまう。
そしてハスタルは勝負を決めようと一気に間合いを詰めてくる。
そう、獲物を捕らえる瞬間だ。
誰だって対象の敵を倒す瞬間、勝ったという感情が先走り、気が緩む。
その習性を逆利用した、最後の手段がこれだ。
ハスタルは俺の肉体を思いっきり一刀両断。
魔力により、肉体は傷つきはしないものの、並みの冒険者なら一撃で勝負がついているであろう攻撃を俺は受ける、
その瞬間、ハスタルは叫ぶ。
「グホッ──、貴様ぁぁぁぁぁ!」
心臓部分に渾身の突きを食らいながら。
突き刺した感覚から、彼の体を貫通しているのがわかる。まあ、人間ではないから、死にはしないだろう。
俺もその瞬間、魔力によって無理やり斬撃の速度を高めてハスタルの体を突き刺したのだ。
いくら経験があるといっても、勝利を疑わなかったこいつはほぼ無警戒だったため防ぐことができなかった。
俺の長所は、ただ攻撃が高いだけじゃない。耐久の高さを生かして、通常では瞬殺されるような状況だって生き残ることができる。
普通の冒険者ならば無謀といわれるような、曲芸じみた芸当をして、無理対面を突破する。
口で言うほど、簡単じゃない。これはどうにもならなかったときに最後にとる手段。
当然こっちも致命傷を受ける。正直、こっちも戦える気がしない。
それは、ハスタルも同じなのだが。
「元勇者め、こんな奥の手を用意していたとは……」
街に視線を移すと、魔獣たちが消滅していっているのがわかる。
これで街はとりあえず大丈夫だろう。
「当たり前だ。黙ってやられる俺じゃない。あきらめの悪さなら、誰にだって負けない自信がある」
とはいえ俺も相当ダメージを受けている。仮に仕留めても、それ以上のことができなくなってしまうのがこの作戦の欠点だ。
「──貴様の強さは認める。ここは引くとしよう。だが、貴様もこれ以上戦えないようだな」
そしてハスタルはホールの中へと消えていった。俺は、追うようなことはしない。当然だ、もう戦えないのだから。
俺は地上に降りた。
するとその場所にルシフェルが早足でやってくる。
「陽君。よく勝ったじゃない」
「ごめん、捕えられなかった。ってルシフェル、大丈夫か?」
よほど魔力を消費したのだろう。少しふらついているのがわかる。
よろよろになっている彼女の体をぎゅっと抱きしめて支えると、ルシフェルがかすれた声で言葉を漏らす。
「だ、大丈夫よ。ただ、あなたの足を引っ張りたくないって思って、無理をしすぎたみたい」
「あ、ありがとう。俺のために、ここまで体を張ってくれて」
「いいえ。私の責任でもあるわ。彼をここまで増長させたのは私の責任でもあるもの」
とはいえ今の状況は一時的に敵を追い払っただけ。
本体を消さないと、また現れるだろう。そしてそれはあのホールの先にあるとも割れるのだが──。
「ルシフェル、あのホールの先、わかるか?」
ルシフェルは腕を組んで少しの間考え込む。そしてどこか思いつめたような表情で言葉を返してきた」
「あの力があるのは、魔王軍の本拠地シャールノスだと思うわ」
その表情から、俺にはルシフェルが何を考えているかすぐに理解した。
「私が直接彼のところに行って、力づくで説得する!」
腐れ縁というものだろうか、予想していた答えと全く同じものが返ってきた。だから、返す言葉は決まっている。
「俺も行く。どうせ、どれだけ説得したって聞かないんだろ。力になるよ」
こいつの性格は理解している。一度心から決めたことは何があっても止めることはない。たとえそれで命を失うことになっても。
「明日のデートは返上。悪いけど、休日出勤確定よ」
「そうだな。明日、あいつのところに行って。あいつをぶっ飛ばしていこう」
こうして明日の、ルシフェルとのデートは、ハスタルとの決戦へと変わっていった。
残念だったけど、この街のためなら仕方がない。
この後俺は、ローザたちと合流。起こったことなどを聞いた後、破壊された町の復旧作業などの手伝いをした。
そして夜、ローザたちに明日ハスタルがいる魔王軍の本拠地へ行くことを説明。
そして予想通りの答えが返ってきた。
「陽君。私も行きたい。力になりたい」
「そうです陽平さん。私たちも、行かせてくれませんか?」
当然こうなる。2人だってこの街を守りたいのは一緒だ。でも──。
「ごめん。これは俺とルシフェルだけで行かせてほしい」
それは、受け入れることができなかった。
2人を、100パーセント守れる自信がない。最悪、人質になってしまう恐れだってある。
そう丁寧に説明した。
「──わかった。それなら、いいよ」
「すいません。私では力が足りなくて……」
残念そうな表情で、理解してくれる2人。2人の善意を断るのは罪悪感があるけれど、彼女たちを失うわけにはいかない。
そして俺たちはベッドへ。明日、ハスタルとの戦い。強敵だけど、絶対勝つ。
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