91 / 103
最終章 建国祭編
第91話 元勇者 死闘を繰り広げる
しおりを挟む
最初に距離を詰めてきたのはハスタルだ。
魔力を込めた右足で宙をけり砕き、一気に急接近。
目にもとまらぬ速さの一撃。
雑で粗だらけ、スキだらけの素人のような技術。
切るというよりは感情のままにたたきつけるという表現の方が正しいくらいだ。
そんな乱暴な剣術だが、圧倒的なパワーによる速さとパワー。
攻撃を受ける俺の剣が軋んでいく。握っている俺の両手はその衝撃を受け、それが全身にへのダメージとなっていく。
獣のような、荒々しい圧倒的なパワー。
戦術も理論もない、ただ自らのパワーで圧倒していくだけの力。
たしかに強敵だ。でも、これなら対処法はある。
いくら強くてもしょせん人間のような構造。こういう力任せに殴ってくるやつは魔王軍によくいた。
俺は数回ハスタルの攻撃を受けてから、スッと体を後ろに動かし、こいつの一撃をかわす。
その差、わずか数ミリ、強烈な風圧を全身に感じる。
しかし、全身を使って大ぶりをしたがゆえに、ハスタルの胸元が大きく開く。
チャンスだ。このスキのカウンターを入れるため、攻撃から引く距離を最低限にしていたんだ。
俺はやっとできたチャンスを生かすため、一気に胸元に飛び込む。
──が、せっかくつかんだ俺のチャンスはいかせることはなかった。
「な、何……」
「フッ、残念だったな──」
俺の腕の帰ってきた鉄の手ごたえ。
蛇のような魔剣が俺が最高の形で放った攻撃に真正面から受け止めていたのだ。
最高のタイミング。あの瞬間で泳いでいる剣をあの位置に戻すのはどうやっても不可能だ。
こちらの攻撃をすべて読んでいるのか?
だが、深く考える余裕はない。
ハスタルは受けた俺の攻撃を力任せに押しのける。
圧倒的な力の前に俺は思わず後ろに一歩後退。
そしてその距離をハスタルはすぐに詰めてくる。しなる鞭のような剣を俺は受けながら少しずつ後退。
「元勇者よ。そんなへっぴり腰で、私に勝つことなどできんぞ」
人間ではありえない動きをして、なんだかわからない力を使うやつに突っ込んでも、勝つことど出来ないけどな。
だが、このまま守ってばかりなわけじゃない。そんな大人しいやつじゃないんでね。
そして俺はハスタルの振り上げた攻撃をかわし、重心を低くする。一気に懐まで接近。
これでこいつに致命傷を与えられる。いくら力が強くても、小学生のような力の使い方では、簡単にいなされる。
こいつの攻撃を読み切ってのカウンターは、誰にお止めることができない最速の一撃。攻撃をかわされたハスタルにかわすすべがない。
俺のこいつを読み切った攻撃が、ハスタルの心臓を刺し貫く──。
はずだったその瞬間。標的であるハスタルの肉体が消失したのだ。
おかしい、完ぺきにこいつの動きは読み切ったはず。それだけじゃない。そもそもなぜこのタイミングで標的を見失うのか。
それだけではない。俺の本能が語り掛けてくる。
危険──死ぬ……。
心の底からの叫び声が、俺の肉体を突き動かす。
後ろだ!
俺は振り向きながら斜め上に飛び上がる。
振り向いた先には俺から完全に見えない後ろ下にいるハスタルが。俺がいた場所に龍見を振り上げているのがわかった。
「その剣の力だろう。さっきと比べて、体の動かし方そのものが速くなっている。反応速度そのものを、上げているんだろ?」
ハスタルはニヤリと笑みを浮かべるとその魔剣を俺に向けながら答えた。
「賢いな。元勇者よ、もう見抜かれてしまったか」
やはりそうだったか。しかしこれは厄介だぞ。何しろ、反応速度が速いということは視覚から弱点を突いたり、魔力でこっちの速度を上げたとしても十分に防がれてしまう。
何しろ通常では防げないような攻撃でさえ防いでしまうという代物だ。
そして考えている俺にハスタルが話しかけてくる。
「貴様らの運命は決まっている。われらの進行を抑えることができず、この町を守ることができず、われらの前に消滅していくのだ」
「バカか、地上を見てみろ。貴様が用意している下っ端たちは順調に消滅しているぞ」
そう言うとハスタルは、黙って地上を見下す。そこでは、ローザや、他の冒険者たちが、次々と魔王軍たちを殲滅していっている。
そして兵士たちは逃げ惑う市民たちを次々と地下へと避難させていた。
王都の危機だけあって、彼らはうまく役割を分担し、力を合わせて自分のできることを行っている。
「時期に貴様以外の魔王軍たちは消滅する。そうすれば貴様の目論見は失敗に終わるはずだ」
それはこいつだって感じているはずだ。こいつだって魔王軍の幹部。それが理解できないほど馬鹿ではない。
それでもこいつは、薄ら笑いを浮かべたまま動かない。
「何か、狙いがあるということだな?」
そしてハスタルがにやりと笑いながら、口を開け始めた。
そのころ。ローザとセフィラ。
「これで、この辺りは安全になりましたね」
「うん」
ローザとセフィラの奮闘により、このエリアの敵はいなくなっていた。
さらに兵士たちの正確な指示によって国民たちは避難を終え、落ち着きと安全と取り戻している。
避難の方は、何とか終わりそうだ。あとは、他のエリアの援軍に行くだけ。そう考えているローザたちのところに、別の兵士たちが国民たちを連れてやってくる。
その兵士たちにセフィラが話しかける。
「兵士さん。避難のほうは大丈夫ですか?」
「非難のほうは順調です。うまく誘導できています。そちらのほうは?」
魔力を込めた右足で宙をけり砕き、一気に急接近。
目にもとまらぬ速さの一撃。
雑で粗だらけ、スキだらけの素人のような技術。
切るというよりは感情のままにたたきつけるという表現の方が正しいくらいだ。
そんな乱暴な剣術だが、圧倒的なパワーによる速さとパワー。
攻撃を受ける俺の剣が軋んでいく。握っている俺の両手はその衝撃を受け、それが全身にへのダメージとなっていく。
獣のような、荒々しい圧倒的なパワー。
戦術も理論もない、ただ自らのパワーで圧倒していくだけの力。
たしかに強敵だ。でも、これなら対処法はある。
いくら強くてもしょせん人間のような構造。こういう力任せに殴ってくるやつは魔王軍によくいた。
俺は数回ハスタルの攻撃を受けてから、スッと体を後ろに動かし、こいつの一撃をかわす。
その差、わずか数ミリ、強烈な風圧を全身に感じる。
しかし、全身を使って大ぶりをしたがゆえに、ハスタルの胸元が大きく開く。
チャンスだ。このスキのカウンターを入れるため、攻撃から引く距離を最低限にしていたんだ。
俺はやっとできたチャンスを生かすため、一気に胸元に飛び込む。
──が、せっかくつかんだ俺のチャンスはいかせることはなかった。
「な、何……」
「フッ、残念だったな──」
俺の腕の帰ってきた鉄の手ごたえ。
蛇のような魔剣が俺が最高の形で放った攻撃に真正面から受け止めていたのだ。
最高のタイミング。あの瞬間で泳いでいる剣をあの位置に戻すのはどうやっても不可能だ。
こちらの攻撃をすべて読んでいるのか?
だが、深く考える余裕はない。
ハスタルは受けた俺の攻撃を力任せに押しのける。
圧倒的な力の前に俺は思わず後ろに一歩後退。
そしてその距離をハスタルはすぐに詰めてくる。しなる鞭のような剣を俺は受けながら少しずつ後退。
「元勇者よ。そんなへっぴり腰で、私に勝つことなどできんぞ」
人間ではありえない動きをして、なんだかわからない力を使うやつに突っ込んでも、勝つことど出来ないけどな。
だが、このまま守ってばかりなわけじゃない。そんな大人しいやつじゃないんでね。
そして俺はハスタルの振り上げた攻撃をかわし、重心を低くする。一気に懐まで接近。
これでこいつに致命傷を与えられる。いくら力が強くても、小学生のような力の使い方では、簡単にいなされる。
こいつの攻撃を読み切ってのカウンターは、誰にお止めることができない最速の一撃。攻撃をかわされたハスタルにかわすすべがない。
俺のこいつを読み切った攻撃が、ハスタルの心臓を刺し貫く──。
はずだったその瞬間。標的であるハスタルの肉体が消失したのだ。
おかしい、完ぺきにこいつの動きは読み切ったはず。それだけじゃない。そもそもなぜこのタイミングで標的を見失うのか。
それだけではない。俺の本能が語り掛けてくる。
危険──死ぬ……。
心の底からの叫び声が、俺の肉体を突き動かす。
後ろだ!
俺は振り向きながら斜め上に飛び上がる。
振り向いた先には俺から完全に見えない後ろ下にいるハスタルが。俺がいた場所に龍見を振り上げているのがわかった。
「その剣の力だろう。さっきと比べて、体の動かし方そのものが速くなっている。反応速度そのものを、上げているんだろ?」
ハスタルはニヤリと笑みを浮かべるとその魔剣を俺に向けながら答えた。
「賢いな。元勇者よ、もう見抜かれてしまったか」
やはりそうだったか。しかしこれは厄介だぞ。何しろ、反応速度が速いということは視覚から弱点を突いたり、魔力でこっちの速度を上げたとしても十分に防がれてしまう。
何しろ通常では防げないような攻撃でさえ防いでしまうという代物だ。
そして考えている俺にハスタルが話しかけてくる。
「貴様らの運命は決まっている。われらの進行を抑えることができず、この町を守ることができず、われらの前に消滅していくのだ」
「バカか、地上を見てみろ。貴様が用意している下っ端たちは順調に消滅しているぞ」
そう言うとハスタルは、黙って地上を見下す。そこでは、ローザや、他の冒険者たちが、次々と魔王軍たちを殲滅していっている。
そして兵士たちは逃げ惑う市民たちを次々と地下へと避難させていた。
王都の危機だけあって、彼らはうまく役割を分担し、力を合わせて自分のできることを行っている。
「時期に貴様以外の魔王軍たちは消滅する。そうすれば貴様の目論見は失敗に終わるはずだ」
それはこいつだって感じているはずだ。こいつだって魔王軍の幹部。それが理解できないほど馬鹿ではない。
それでもこいつは、薄ら笑いを浮かべたまま動かない。
「何か、狙いがあるということだな?」
そしてハスタルがにやりと笑いながら、口を開け始めた。
そのころ。ローザとセフィラ。
「これで、この辺りは安全になりましたね」
「うん」
ローザとセフィラの奮闘により、このエリアの敵はいなくなっていた。
さらに兵士たちの正確な指示によって国民たちは避難を終え、落ち着きと安全と取り戻している。
避難の方は、何とか終わりそうだ。あとは、他のエリアの援軍に行くだけ。そう考えているローザたちのところに、別の兵士たちが国民たちを連れてやってくる。
その兵士たちにセフィラが話しかける。
「兵士さん。避難のほうは大丈夫ですか?」
「非難のほうは順調です。うまく誘導できています。そちらのほうは?」
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる