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最終章 建国祭編
第80話 元勇者 いざ、建国祭へ
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そしてあの契約から1週間後。とうとう建国祭の日となった。
「人がたくさん。すごーい」
街の様子を見て、ローザが思わず感激する。
人々がごった返しで歩いている。
強い活気からくる街の熱気が、快晴の日差しと相まって、さらに強くなる。
露店の商人たちが、大きな声で声を張って客引きをしている。どの店も、楽しそうに見物していたり、物を買ったりしている人たちで溢れかえっていた。
今日からこの王都カルケミシュは、この王国の建国を記念したお祭り、建国祭が始まるのだ。
6日間のうち、俺たちは1日おきに3日間を警備することになり、残り3日間は自由時間となる。
当然建国祭を満喫するのだが、ルシフェルの一言でこんなやり方に変わったのだ。
「どうせなら、陽君と2人っきりの時間を作ってみない? 代わりばんこで」
そう、初日の午前中は全員と過ごす計画なのだが、それ以外は1日ずつ午後を2人っきりの時間として過ごすことになったのだ。
当然、俺は抵抗した。
「何でそんなまどろっこしいことしなきゃいけないんだよ。みんなと一緒にいた方が楽しいじゃないか」
「楽しいだけじゃダメなのよ! 聞いたわよ、パトラさんから。異性として物足りない、もっとエスコートできるようになりなさいって」
「そ、それは……確かに言われたけど……」
「またどっかのお姫様とデートしたり、一緒に生活することがあるかもしれないわ。その時に経験がないと怪しまれたり、文句入れられる可能性だってあるわけでしょ。それでいいの?」
ルシフェルの強気な物言いに俺は何も言えなくなってしまい、ローザとセフィラに助けを求めるが──。
ローザはそっぽを抜いてニヤニヤ。
セフィラも、目をきょろきょろとさせ、思い当たることがあるような表情をしている。
「とりあえず、女の子と2人っきりになってキョドキョドしたり、口数を減らすのは経験がないからよ。少しは場数を踏んでその癖を直しなさい」
「──わかったよ」
強気なルシフェルの言葉に俺は言い返せず、承諾。午前中はみんなと行動、1日目はセフィラ。2日目はローザ、3日目はルシフェルということになった。
そして今に至る。
「うん。すごく賑わっているね」
ローザが、街並みを見て一言。俺は周囲を見回しながら歩く。
「うん、いつもとは全然違うね」
いつもの倍以上はいるように思える。
「しかし、これだけ人が多いと、警備とか大変そうだな」
何せ、溢れかえるほどの人だかりだ。これじゃあ怪しいそぶりをしている人を見かけても気づけるかわからない。
「そうね。その時は、気を付けましょ!」
ずいぶん軽い言い回しのルシフェル。本当に楽しそうだな。
「ま、今は楽しみましょ!」
ノリノリ気分のルシフェルはそういいながらローザと一緒にガイドブックをまじまじと見ている。
「私、ここ行ってみたいんだけどいい?」
「ここですか? 面白そうです!」
そして視線を地図から俺へと移す。
「行先は決まったわ。行きましょ」
「どこに行きたいんだ?」
「演劇がもう少しでやるみたいなんでそれを見てみたいです」
ルシフェルが俺のローブの右裾を、ローザが左裾をぎゅっとつかみながら引っ張っていく。俺は2人の強い押しにあらがえず引っ張られるようについていく。
セフィラもそれについてくる。
「演劇ってどんな事をやるんだ?」
「それは行ってからのお楽しみです~~」
「秘密よ。でも陽君もきっと喜ぶと思うわ」
そして俺たちはその会場へ。
「ついたわ」
繁華街でもひときわ大きい建物、そこが会場だ。
演劇館だっけ。
建国祭の演劇だけあって人気が高いらしく入口は劇場を見たいという人々でいっぱいだった。俺達がその場所にたどり着くと誰かが存在に気付いて「元勇者さんだ」と叫ぶ。
一斉に視線が集まり周りがそわそわしだす。
「本当だ、元勇者さんだ」
「やっぱり元勇者さんもこの劇見たいんだろうねェ」
何だ? そんなにこの劇が俺と関係があるのか?
俺は気になり建物の張り紙を見て今から行う演劇の内容を確かめる。
そしてそのタイトルに視線を移すと──。
「ロード・オブ・ザ・勇者」
まじかよ、俺が主人公?? まさかの事態に戸惑っていると隣のルシフェルがクスリと笑って視線をこっちに向ける。
「どう? 面白そうでしょ。私はすごく楽しみだわ」
「──そうだな」
まあ、特に見たいものがあるわけじゃないし、いいか。
そして俺たちはその列に並ぶ。
ほどなくして係員の合図で観客たちは演劇館に入っていく。
人が多くて満員になるか心配だったが、何とか入ることができた。
満員の会場。上の階の隅あたりに4人席が空いているのでそこに座る。
そして係員の合図で演劇は始まる。
そして舞台に180cmくらいの長身で俺を一回りイケメンにしたような顔つきの人物
が出て来た。おそらくあれが勇者役なのだろう。
「このようなおめでたい日に、わが劇場をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。『最強勇者とローデシアの王女様』ぜひご覧ください」
するとルシフェルがひそひそと話しかけてきた。
「ローデシア? どんな内容なの」
確かあったな……。以前勇者だった時南にあった大国ローデシア王国に遠征をした時だ。
あの時は俺も未熟で味方だった兵士の一部が実は魔王軍の裏切り者で王女様がさらわれてしまったんだっけ。
そしてその事に大慌てになって何とか冒険者達で力を合わせて王女様を救いだしたんだったな。
そんな冷や汗をかいたエピソード、おそらくそれを脚色した物なのだろう。
俺がそんなことをルシフェルに告げる。
「じゃあ楽しみにしてるわよ。勇者さん!」
「人がたくさん。すごーい」
街の様子を見て、ローザが思わず感激する。
人々がごった返しで歩いている。
強い活気からくる街の熱気が、快晴の日差しと相まって、さらに強くなる。
露店の商人たちが、大きな声で声を張って客引きをしている。どの店も、楽しそうに見物していたり、物を買ったりしている人たちで溢れかえっていた。
今日からこの王都カルケミシュは、この王国の建国を記念したお祭り、建国祭が始まるのだ。
6日間のうち、俺たちは1日おきに3日間を警備することになり、残り3日間は自由時間となる。
当然建国祭を満喫するのだが、ルシフェルの一言でこんなやり方に変わったのだ。
「どうせなら、陽君と2人っきりの時間を作ってみない? 代わりばんこで」
そう、初日の午前中は全員と過ごす計画なのだが、それ以外は1日ずつ午後を2人っきりの時間として過ごすことになったのだ。
当然、俺は抵抗した。
「何でそんなまどろっこしいことしなきゃいけないんだよ。みんなと一緒にいた方が楽しいじゃないか」
「楽しいだけじゃダメなのよ! 聞いたわよ、パトラさんから。異性として物足りない、もっとエスコートできるようになりなさいって」
「そ、それは……確かに言われたけど……」
「またどっかのお姫様とデートしたり、一緒に生活することがあるかもしれないわ。その時に経験がないと怪しまれたり、文句入れられる可能性だってあるわけでしょ。それでいいの?」
ルシフェルの強気な物言いに俺は何も言えなくなってしまい、ローザとセフィラに助けを求めるが──。
ローザはそっぽを抜いてニヤニヤ。
セフィラも、目をきょろきょろとさせ、思い当たることがあるような表情をしている。
「とりあえず、女の子と2人っきりになってキョドキョドしたり、口数を減らすのは経験がないからよ。少しは場数を踏んでその癖を直しなさい」
「──わかったよ」
強気なルシフェルの言葉に俺は言い返せず、承諾。午前中はみんなと行動、1日目はセフィラ。2日目はローザ、3日目はルシフェルということになった。
そして今に至る。
「うん。すごく賑わっているね」
ローザが、街並みを見て一言。俺は周囲を見回しながら歩く。
「うん、いつもとは全然違うね」
いつもの倍以上はいるように思える。
「しかし、これだけ人が多いと、警備とか大変そうだな」
何せ、溢れかえるほどの人だかりだ。これじゃあ怪しいそぶりをしている人を見かけても気づけるかわからない。
「そうね。その時は、気を付けましょ!」
ずいぶん軽い言い回しのルシフェル。本当に楽しそうだな。
「ま、今は楽しみましょ!」
ノリノリ気分のルシフェルはそういいながらローザと一緒にガイドブックをまじまじと見ている。
「私、ここ行ってみたいんだけどいい?」
「ここですか? 面白そうです!」
そして視線を地図から俺へと移す。
「行先は決まったわ。行きましょ」
「どこに行きたいんだ?」
「演劇がもう少しでやるみたいなんでそれを見てみたいです」
ルシフェルが俺のローブの右裾を、ローザが左裾をぎゅっとつかみながら引っ張っていく。俺は2人の強い押しにあらがえず引っ張られるようについていく。
セフィラもそれについてくる。
「演劇ってどんな事をやるんだ?」
「それは行ってからのお楽しみです~~」
「秘密よ。でも陽君もきっと喜ぶと思うわ」
そして俺たちはその会場へ。
「ついたわ」
繁華街でもひときわ大きい建物、そこが会場だ。
演劇館だっけ。
建国祭の演劇だけあって人気が高いらしく入口は劇場を見たいという人々でいっぱいだった。俺達がその場所にたどり着くと誰かが存在に気付いて「元勇者さんだ」と叫ぶ。
一斉に視線が集まり周りがそわそわしだす。
「本当だ、元勇者さんだ」
「やっぱり元勇者さんもこの劇見たいんだろうねェ」
何だ? そんなにこの劇が俺と関係があるのか?
俺は気になり建物の張り紙を見て今から行う演劇の内容を確かめる。
そしてそのタイトルに視線を移すと──。
「ロード・オブ・ザ・勇者」
まじかよ、俺が主人公?? まさかの事態に戸惑っていると隣のルシフェルがクスリと笑って視線をこっちに向ける。
「どう? 面白そうでしょ。私はすごく楽しみだわ」
「──そうだな」
まあ、特に見たいものがあるわけじゃないし、いいか。
そして俺たちはその列に並ぶ。
ほどなくして係員の合図で観客たちは演劇館に入っていく。
人が多くて満員になるか心配だったが、何とか入ることができた。
満員の会場。上の階の隅あたりに4人席が空いているのでそこに座る。
そして係員の合図で演劇は始まる。
そして舞台に180cmくらいの長身で俺を一回りイケメンにしたような顔つきの人物
が出て来た。おそらくあれが勇者役なのだろう。
「このようなおめでたい日に、わが劇場をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。『最強勇者とローデシアの王女様』ぜひご覧ください」
するとルシフェルがひそひそと話しかけてきた。
「ローデシア? どんな内容なの」
確かあったな……。以前勇者だった時南にあった大国ローデシア王国に遠征をした時だ。
あの時は俺も未熟で味方だった兵士の一部が実は魔王軍の裏切り者で王女様がさらわれてしまったんだっけ。
そしてその事に大慌てになって何とか冒険者達で力を合わせて王女様を救いだしたんだったな。
そんな冷や汗をかいたエピソード、おそらくそれを脚色した物なのだろう。
俺がそんなことをルシフェルに告げる。
「じゃあ楽しみにしてるわよ。勇者さん!」
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