【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
上 下
76 / 103
パトラ編

第76話 元勇者 エミールとの死闘を制する

しおりを挟む
「そうだなだから──。俺の最高の攻撃で、お前をぶっ倒してやるぜ!」


 今までの駆け引き込みとは違う、力任せ、パワーがこもった一撃。俺は正面からその攻撃を受ける。
 今までの様にうまく受け流せるような代物ではないからだ。
 ガードしたものの、その衝撃で数メートル下がってしまう。

 そしてそのスキをついて、エミールも数メートル後方に下がる。まずい──。

 エミールは魔法攻撃も110とかなり高い。遠距離戦は厳しい。エミールはすぐに、自身の槍を天に向かって上げる。

 圧倒的な力。赤き雷撃となり、はばかる壁を粉砕せよ!
 レッドサンダー・ボルテックス・コート

 そして天から雷がエミールに向かって落ちる。雷は彼女の槍に落下し、その雷が彼女を包み込む。

 俺はあの技を知っている。彼女の最強の技。あの1撃で、魔王軍の幹部を何十人も葬ってきた強力な技だ。

 それをさせないために俺はエミールに高速で接近、一気に切りかかるが。


 時すでに遅し。目にも留まらぬ速さで、槍をぶん回す。そこから、今まで見たこともないくらいの強さの衝撃波が、周囲に襲い掛かる。

 当然俺にも。

 仕方なく魔力を使い障壁を張る。障壁は一瞬で砕け散ったものの、その分威力を弱めることができた。受身をとり、着地。何とか軽症で抑える。

 その攻撃は周囲にも波及。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「逃げろ! 巻き込まれるぞ!」

 明らかに人一人を倒す技ではない。魔王軍の大群を殲滅させるときとか、幹部クラスに何人も囲まれた時に逆転するための技だ。

 周囲の冒険者たちは、悲鳴を上げてこの場から逃げだしていく。



 強い正義感、前向きな性格。
 自信にあふれたその態度、無謀ともいえる攻撃特化のパワー重視、ノーガード戦術。何も変わっちゃいない。

 けど、負けられないのは俺だって同じだ。一瞬目をつぶり、神経を集中させる。そして──。

「お前の全力。俺は越えて見せる!」

 俺は剣の切っ先を持ち上げ、エミールに向ける。その瞬間、俺の全身が白く光りだす。
 青い炎のような、淡い輝き。

 体の隅々から、すべての魔力をかき集めた。いわば全力ダッシュのような存在。ゆえに数分もすれば俺の魔力はエネルギー切れを起こしてしまう。

 そんな諸刃の剣だから、あまり使いたくなかったが。こうでもしないと、エミールについていくことすらできないだろう。

 つまり、俺は魔力を強く放出この数分間で決着をつけなければいけないということだ。

 だから、リスクを負ってでも殴りに行く。無謀ともいえるこの選択。下手したらこのせいで敗北することだってあり得る。

 攻め込む! 前へ!

 俺は一気に前に踏み込む。
 そして、俺は剣の間合いまでわずかになる位置まで攻め込む。


 確かにお前に負けられないことがあるのははかった。
 けれど、俺のも同じだけの想いがある。負けられないのは、俺だって同じなんだ。


 それに、あの時とは違い理解したことだってある。

 感情的になり、ただ戦っていくこと。それだけが強さじゃないってことだ。

 時には引くことがあっても、屈辱だと思うことがあっても、耐えなければいけない時があるということだ。

 そしてエミールは再び俺に飛び込み、上から切りかかる。さっきとは比べ物にならないくらいの威力、速さ。
 彼女の想いが、これもかというくらい詰まっているのが理解できる。

 それを俺は、真正面から攻撃を受ける。俺も同じくらい剣に魔力を込める。
 俺だって、ただここにきているわけじゃない。負けられないのは、俺だって同じなんだ。 そんなメッセージを込めて。

 そして俺はその攻撃を受けきる。
 受けた攻撃、それはもう重いの1言に尽きる。この状態じゃなかったら、他の冒険者だったら、この重みに耐えきれず、後ろに吹き飛ばされて勝負が決まっていただろう。
 手がしびれて感覚がない。

 エミールも、俺が正面から攻撃を受けきったのは予想外という感じだった。不意を打たれたというような表情をしているな。
 確実に動揺しているのがわかる。

 そして俺をにらみつける。その眼つきから俺は感じ取る。


 やはり、深い事情があるようだな。

 何か思い詰めている表情。そこまでして彼女に戦わなければいけない理由があるのか。



 けど、負けられないのは俺だって一緒だ。戦わなきゃいけないことに変わりはないんだ。
 彼女の戦う理由は、戦いが終わったらゆっくりと聞くことにしよう。

 エミールは、俺が攻撃をこらえている間に数メートルほどジャンプして後退。そして一気に加速をつけて再び上から切りかかってくる。

 気迫の表情。この一撃で勝負つけるという覚悟をしているのがよくわかる。
 俺だって、そろそろ勝負をつけないと魔力がガス欠しそうだ。

 ということで俺も距離を詰める。
 再び俺とエミールが接近。彼女が、思いっきり槍を振り上げ、俺に向かって打ち下ろしてくる。

 当然策もなしに突進したというわけではない。

 そして、これが俺の策だ。



 スッ──。


 俺のその行動に、エミールは驚く。


 俺は、ほとんどかがんだような姿勢になった。予想もしなかったようで、エミールは言葉を失い、ただ驚愕していた。

 そして、切っ先をエミールが振り下ろした槍の切っ先に当てる。力みすぎず、ほど良くリラックスし、円を描くようにして回避しながらエミールに接近。

 薄氷を履むが如しの技だ。少しでもタイミングがずれれば、強力な攻撃をいなしきれず、俺の体に直撃。そこで勝負はついてしまうだろう。

 エミールはその行動に驚愕し、言葉を失っている。
 そりゃそうだ、敵が全力で向かってくる攻撃に、身体の力をうまい具合に抜いて攻撃を受け流す。

 口で言うのは簡単だが、実際に失敗したら負けという状況でやるのは生半可なことではない。

 少しでも力の入れ具合を間違えれば、攻撃が直撃というプレッシャーの中で、行うのだ。相当プレッシャーに強くなければできない。

 何度も視線を繰り広げ、死闘を繰り返した俺だからこそのなせる技だ。

 そして力を受け流し、俺はエミールの目の前まで急接近。前のめりになっている彼女、槍は俺の後ろ。
 俺の攻撃を防ぐ手立てはない。

 全力で彼女の肉体を切り裂いていく。

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァ!!


 エミールの体が吹き飛び、後方にある壁にたたきつけられる。そしてそのまま力なく彼女の肉体が地面に落下。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...