【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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パトラ編

第75話 元勇者 元仲間と死闘を繰り広げる

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 「ああ、無駄だとわかっているからな。戦ってお前をねじ伏せる以外、解決するしかない。さあ、行くぞ!」


 やることは1つだけ。全力で戦って、こいつに勝つ。

 そして再び剣を構える。幸いなことにカイテル戦ではそこまで魔力を消費していない。

 両者にらみ合い──。

 俺はダッシュでエミールに詰め寄っていく。

 遠距離戦では圧倒的に俺は不利。俺の魔法攻撃は70、エミールは110。勝ちたかったら俺は前に出るしかない。

 そしてエミールの槍は俺の剣の、1.3倍ほどある。
 いかにエミールの槍の合間をかいくぐり、剣の間合いに持ち込むかが勝利のカギになる。

 一般的に、槍の強さは、そのリーチにある。俺の剣よりずっと長い。距離を取ろうとすればするだけ俺は不利になってしまう。だったら前だ。たとえリスクを背負ってでも、相手に懐に飛び込めば、長いリーチは足かせになってしまい小回りの利く俺の方が有利をとれる。

 当然エミールもそれを理解していて、高い素早さを生かして俺が間合いを詰めるのを何としてでも阻止しようとする。

「さすがに、すんなり間合いには入らせてくれないか」

 目にもとまらぬ速さと、力任せのパワー。
 一撃一撃が、粗暴に見えながらも恐ろしく速い。

 俺は何とか前に出て、間合いを詰める。

「ッ!?」

 が、その行動をすぐにやめ、すぐに後ろへ逃げる。
 直後、俺がいた場所に、エミールの攻撃がたたきつけられ、衝撃波が襲い掛かる。綺麗によけようとしてたら、今の攻撃で致命傷を食らっていただろう。

「惜しかったぜ。でも次は逃がさない!」

 エミールは、それでも俺に向かって強く踏み込んで攻め続ける。
 その攻撃の速さと強さ。周囲にいる冒険者その攻撃に思わず声を上げる。

「なんだよあれ。見たことない速さだ」

「速さだけじゃねぇ。強さもだ。あいつが槍をふるうだけでこっちに風が伝ってきやがる」

「元勇者、勝てるのかよ……、あんなバケモンに──」

 烈火のごとく、苛烈に俺に猛攻を加える。

 俺は隙なく飛来するエミールの攻撃を防ぐだけで手いっぱい。後ろへ後ろへと、後退。

 ──に見える。

「やっぱり、押されてるよ」

「負けるのも、時間の問題だよな──」

 だが俺は感じている。



 エミールが、心の中に焦りを抱えていることを。それが、攻撃するたびに大きくなっていることを。

(こんなに押してるのに、どうして押し潰せない──)

 そんなふうに考えているんだろうな。額に汗が浮かんでいる。表情にも少しずつ出てきているぜ──。

 エミールは、目の前の敵に一方的に攻め立てる。
 俺はその攻撃を、受けきらずに、受けた衝撃を後ろへ進む力として後退。

 周囲から見れば、エミールの攻撃に俺が押し込めまれているように見える。
 しかし、現実は違う、エミールのパワーと速さを生かした攻撃が、俺の受けの前に封殺されているのだ。

 圧倒的なパワーを受け流す防御。口で言うのはたやすいが、実行は困難。少しでもタイミングがずれれば、攻撃を受けきれず、致命傷を浴びそのまま押し切られてしまうだろう。

 そんな綱渡りのような俺の戦術。その中で得たものはある。


 まず、テンポがつかめてきた。3拍子で攻撃してくる。

 それも最初の2発はジャブに近い そして3発目が本命で強い威力。
 さらに、以前からそうだが突きの攻撃を中心に攻めてきている。

 突きの攻撃は、払いや打ち下ろしと比べて威力が桁違いに強い。特にエミールの場合はなおさらだ。

 特に本命の3撃目の突きは、直撃すれば即致命傷だ。それも、軌道が見えないくらいの速さ。

 だが、完ぺきというわけではない。攻撃範囲が狭いという欠点がある。

 つまり、かわしやすい。そしてかわしたところで一気に踏み込めばエミールは無防備となり、俺の攻撃が通る。

 そしてエミールが再び接近。その長槍を一気に俺を向けてくる。


 1発目、2発目、目に見えない速さ。俺はその攻撃をなんとかかわす。

 よし、反撃のチャンスだ。俺は一気にエミール接近するために踏み込む。

 その瞬間。

 俺の脇腹に、強烈な痛みが走る。反撃をやめ、体制を崩しながら後方に下がる。

 こいつ攻撃の瞬間、俺が反撃に出ることを読んで突きの軌道を無理やり変えたのか。

「惜しかったぜ。今度は仕留められると思ったんだがな」

「俺が、今反撃に出ることを読んでいたのか?」

「ああ、表情を見て、確信してたぜ。お前なら、絶対このタイミングで仕掛けると思っていた」

「なぜ、それがわかる」

「お前の目つきが、そう叫んでいたからな」

 マジかよ。動きが読まれていたとは。
 本当に、今まで戦ってきたどんな敵よりも手ごわい。

 これだけパワーも魔力もあるなら、もっとシンプルに行ったっていいはずなのに。
 とんだ罠を張っていたとはな。
 勝つためには手段を択ばない。用意周到な奴だ。

 そして、俺は再びエミールに目を合わせる。

「何かが、変わった」

 目を見ればわかる。スイッチが入ったような、覚悟を決めたような、そんな目つき。

 そして、その表情のままフッと笑みを浮かべる。

「陽平。やっぱりお前強いな。俺が戦った中で1番だぜ」

「お前もな。ここまでギリギリの戦いなんて魔王との戦い以来だぜ」

「そうだな。だから──。俺の最高の攻撃で、お前をぶっ倒してやるぜ!」
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