【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
上 下
68 / 103
パトラ編

第68話 元勇者 あとは、カイテルを倒すだけだ!

しおりを挟む
 パトラが去るまではそれなりの地位にいたエマもまたカイテルたちの悪口を言ったといういわれもない密告により、周囲から孤立してしまったのだった。
 そしてギルドで偶然カイテルを見かけたときのこと。

「お願いっチュ。なんでもするっチュ。だからこんな扱いは嫌っチュ」

 カイテルに自分のすべてを話したエマ。そして──。

「あのパトラの知り合いか。それに魔力適性も高い。中々使えそうな人材だ」

 カイテルハエマのことを使えるコマだと判断。
 そしてエマはカイテルの思い通りに動く人形と化してしまったのである。

「エマさんそんなことが──」

 その事実にローザはショックで目を伏せてしまう。

「殺すなら、殺すっチュ。こうなることは、わかっていたっチュ」

 エマもポロポロと涙を流す。まあ、逃げたところで密告社会のせいで頼れる仲間なんていない。下手をしたら浮浪者になったり、山賊なったりそんな末路だってあり得る。

 パトラさんは平然としながら残ったアイスティーをに見干すそして1つの質問をする。

「それで、あなたはどれだけの密告をして、どれだけの人を追い落としたんですか?」

 エマの目から涙が止まらない。パトラさん、ちょっとひどい質問だったんじゃないか?

「そんなこと、できないっチュ。だから、追い落とされたっチュ」

 泣きながら言葉。気持ちはわかる、いくら追い落とさないと生き残れないといたって、普通の人間はそれだけ悪いことをすれば罪悪感がわく。

「まあ、わかっていたわ。あなた、いい人過ぎて人の足を引っ張るのに向いてないもの」

 ルシフェルもため息をつきながら一言。俺もそう思っていた。


 まあ、彼女は元魔王としていろいろな人を見て、向きあってきた。だからちょっと話しただけでエマのことを理解したのだろう。

「んで、策はあるの? 彼女をどう罰するの?」

 彼女を罰するということは、彼女のようにカイテルに取り入った人物全員を罰しなきゃいけないということだ。

 そんなことをしたらこの国は囚人の国に似合ってしまう。

「ちょうどいい、今度俺とカイテルは一騎打ちをするんだ。そこで考えがある」

 そして俺はその考えをルシフェルたちに話す。

 ひそひそ──。

「なるほどね。それはいいかもしれないわ」

 フッと微笑を浮かべるルシフェル。まあ、彼女もいいと考えたんだろう。
 エマは相変わらずさっきからプルプルと体を震わせながら縮こまっている。

「えっ、私に処罰はしないッチュか?」

「とりあえずはな」

 まあ処罰したところで何の意味もないからな。
 大体、この国みたいに互いの信頼関係も崩れ、密告ばかりしているような国では一般人はどうしてもそうなってしまうのが自然だろう。


 むやみやたらに立ち向かうよりも、あいつら側にとりいっておこぼれをもらう方を選ぶ。そうなってしまう方が多数派だ。

 彼らは俺やカイテルのように種族値に恵まれたわけではない。下手に逆らえば自分だけでなく家族や友人までひどい目にあうかもしれない。

「けど、代わりにお願いがあるんだ」

「代わり? どういうことッチュ?」

「俺は必ずカイテルに勝つ。だからこれからは団結してほしいんだ。こういう仲間割れを起こそうとするやつらに、自分たちは勝つって」

 けど、立ち上がらなきゃいけない。俺だって、ルシフェルだってずっとここにいるってことは出来ない。
 本来なら彼らの安全が約束されるまでここにいてあげたい。けど他にやらなきゃいけないことも、行かなきゃいけないこともある。

 勇者になって一つ思ったことがある、俺たちが直接世界を変えることはできない。
 けれど、彼らの願いを載せて戦い続けることはできる。

 だから、この街で誰一人、平和を、悪と戦う心をなくしてしまったら、俺の出番はないに等しい。

 俺が去った瞬間に、また第2のカイテルがやってくればそれになびいてしまうだけだからだ。

「……わかったッチュ」

「──ありがとう」

 彼女は勇気を出して首を縦に振る。ぎこちない動き、戸惑いながらという感じだ。おそらく周囲がカイテルになびけば彼女はあらがえないだろう。

 それでも俺は待っていた。彼女が立ち向かうという決意をしたことに。
 後は俺がカイテルに勝つだけ、そして不正を暴いた後に叫ぶ。

 こういう悪に手を染めるやつらと、戦ってほしい。俺も一緒について戦う。この世界のために、この街のためにね。

「とりあえず、最低限の目的は達成したわね。それで、カイテルの勝つ確証はあるの? 負けたら彼女の勇気は無駄になっちゃうわ」

 ルシフェルのたしなめるような言葉に俺は自信を持って行った。

「じゃあルシフェルは、以前俺と最終決戦をしたとき、俺に負けたらどうしようとか考えたか?」

 その言葉にルシフェルはキョロキョロと目をそらす。そしてほんのりと顔を膨らませながら一言。

「──考えるわけないでしょ。なんで打ち倒さなきゃいけない敵が目の前にいるのに、そんな発想しなきゃいけないのよ」

「俺だって同じだよ。いつもそうだ」

「まあ、無粋な質問だったわね。絶対に勝ちなさいよ」

 フッと微笑を浮かべるルシフェル。当たり前だ、一大決戦だって時のそんなこと考えるわけないだろう。
 命を懸けて戦った仲だったこそ、わかってくれたはずだ。

「今までと同じだ。俺は絶対に勝つ!」

 俺はルシフェルたちに向かって叫ぶ。エマは表情は少しだけ表情が明るくなる。

「お願いッチュ! 応援しているッチュ!」


 エマの願い。俺は強く受け取った。後は俺がこの子たちの願いをかなえるために勝利する
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...