【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
上 下
67 / 103
パトラ編

第67話 元勇者、エマの元へ

しおりを挟む
俺はそばで資料をあさっていたルシフェルの肩をたたいて聞いてみる。

「ルシフェル、この意味わかるか」

 ルシフェルはその地図から目をそらし質問に答え始める。

「私たち魔王軍は侵略した土地をね、ケーキみたいに分けるんだけど、時折魔王軍に寝返らせる約束として約束したらその地域の住民と土地をこうやって与えるの。一時的にね」

「つまりこれは魔王軍が侵略してきた後の領土の地図ってことか」

「ええ、このサインは彼らが書いたものに間違いないわ。魔王軍とグルになっていたのね」

 これで有罪確定だ。調べればもっと埃が出そう。

 そう考え俺はさらに詮索を続けた



 約1時間後。

「大体調べ終わったわ。いい情報が見つかったわ」

「ああ、俺のいい情報が見つかった」

 こいつらの資料を調べていて、本当に驚いたよ。まず旧魔王側についた人間の数。

 多すぎる。この街の冒険者の数割の数が旧魔王軍から力を受け取っている。いくらこの国は魔王軍と戦火を交えていなかったとしてもこれは驚いた。

「これは予想外でした。それで、どうなさるつもりですか?」

 セフィラの不安そうな表情。しかし俺は特にうろたえることもなく言葉を返す。

「特に考えは変わらない。カイテルに勝つ、それだけだよ」

「で、それまでにどうするつもり?」

 ルシフェルの質問、俺はその答えをこたえるために3人を近くに集める。そして──。

「ちょっと耳を貸してほしい」

 俺は3人い耳打ちをする形で今後の作戦を伝えた。

「わかったわ。じゃあ、そのために行動開始ね」

 意気揚々とする俺たち。うまく成功するといいなあ。
 そんな思いを胸に、俺たちはこの場所を去っていった。






 翌日。戦果を挙げた次の日に、俺たちは動き出す。

 宮殿の中。
 ルシフェルやローザたちが住む部屋に俺やルシフェルたちはいる。

 俺、ルシフェル、ローザ、セフィラ、パトラ。

 そして──。

「いきなり呼ばれたッチュ。なにがあったッチュ」

 ネズミの亜人の少女。エマがそこにいた。
 ローザが全員にアイスティーを入れる。

「どうぞ、飲んでください」

 俺はその出されたアイスティーを半分ほど飲むと、物静かな態度でエマに話しかける。

「ちょっと話があるんだけどいいかな?」

「な、なにっチュ!そんな見つめて、話なら早くしてっチュ」

 どこか動揺している様子の彼女。明らかに知られたくないことがあるという態度だ。まあ、心の底ではこれから起こることを理解しているのだろう。

 そしてルシフェルが1枚の紙を差し出す。

「このリスト。宮殿の地下、魔王軍に寝返った人物が持っていた紙よ。ここにあなたの名前が載っているの」

 ルシフェルが見せつけた紙、それは昨日コーザのいた地下の部屋にあったリストだった。
 一番上の目立つところに魔王軍のサイン、それに書いてるとコーザの名前のサインがあった。
 俺たちはそれを見ておそらく魔王軍に寝返った人物だと予想。おそらく利益を配分したり、魔王軍の情報を渡すときなどに使うのだろう

 そしてその一つにエマの名前が載っていたのだ。

「う、う、疑っているっチュか? 」

「疑っていますよ。リストに載っているんですもの」

 強気なパトらの言葉に明らかに動揺しだすエマ。

「そ、そんなことはないっチュ。わ、私はカイテルにも魔王軍にも味方なんかしてないっチュ」

 目はうつろ、言葉は震えていて視線が泳いでいる。口では言ってなくても顔が嘘をついていますと言っているようなものだ。

「嘘をつくならもう少しうまくつくんだな。お前は嘘をつけない人間だ」


「そうよ。顔に出てるもの。動揺しているのがすぐにわかるわ」

 俺とルシフェルの言葉にとうとう観念したのか、エマはぽろぽろと涙を流しながら水荒の罪を語り始めた。

「パトラ、ごめんっチュ」

 話を聞く。そして──。

「これはひどい」

 エマがこの街で受けた仕打ち、それは分断工作というやつだ。

 いくら書いてるが強いといっても、もし冒険者が団結をしてしまえばカイテル達支配層は下手をすればひとたまりもなく立場を失ってしまう。

 だから冒険者たちが団結することが無いように冒険者達の仲を徹底的に引き裂いたのだ。


 カイテルはまずこの国の住民たちを忠誠度別に分けた。自分達に利益を与えるとそれだけ強い力を渡すと。
 もちろんその力というのは、強力な魔王軍の力だ。

 カイテルは冒険者としてもかなり名声がある。
 だからほとんどの冒険者は、命を懸けてカイテルたち支配層と戦うよりも、頭を下げ、彼らに取り入ることで利益や、強力な魔王軍の力を手に入れてしまうことを望んで、戦うことを放棄してしまったのだ。

「それだけじゃない、カイテルたちは「密告」を奨励したっチュ」

「密告?」

 ローザの言葉通り、カイテルたちは密告をし、周囲の冒険者が怪しい動きをしたら憲兵たちに密告をしてほしい。そうすれば利益を与えると言い出した。

「そして冒険者たちは互いに足を引っ張りあい、密告しあい誰も信用できないようになってしまったっチュ」

「ひどい、どこの恐怖国家よ」

 ルシフェルはため息をついてあきれ果てる。

「それでエマ。あなたはどうなったんですか?」

 パトラさんのその言葉に、エマは目に涙を浮かべながら答え始める。
 パトラが去るまでは、それなりの地位にいたエマ。しかし、カイテルたちの悪口を言ったといういわれもない密告により、周囲から孤立してしまったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...