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パトラ編
第58話 元勇者 カイテルの行動が鼻につく
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「褒めていただいて光栄です」
パトラさんが軽く頭を下げ、作り笑いで言葉を返す。
「そう言えばエマ。このお方は誰ですか?」
パトラさんが素っ気ない口調で話しかけると──。
「ああ、そうでしたねすいません。では名乗らせてもらう。俺の名はラト=ランド・カイテル。パトラ様の将来の嫁とする予定の貴族の長男だ」
「……!?」
その人物が自己紹介をした瞬間、俺とパトラさんに衝撃が走る。
「彼が、この地方の覇者──」
その言葉を聞いていたのか周囲の客達も急に視線をこっちに向け始め、ざわつき始める。
「マジかよ、ラト=ランド家ってこの国一番の権力者だろ?」
「何でこんなところにいるんだよ!!」
この地方では一番の権力者の名前。
そして王国の中の3大貴族の一つ。
伝統、権力基盤、私有財産においてはこの国でも群を抜いている存在だ。
エマの言葉からして彼がパトラさんのお見合い相手なのだろう。
「しかしまさか元勇者さんが交際相手とは。流石はパトラ様。美人な女性にはお似合いかもしれませんなあ」
「私の嫁、まだ確定したわけではありません。早計です、失礼ですよ」
パトラさんが、作り笑いを見せて彼を咎めるがカイテルは、にっこりとした笑みを見せ言葉を返す。
「ははは、確かにそうかもしれません。しかしいずれはそうなるんですから、ちょっとタイミングが早いだけですよ」
「私を結婚相手として強く希望している事。それ自体は光栄です。しかし私には今こうして交際している男性がいます。申し訳ありませんがあなたの希望をかなえてあげることは出来ません。そうですよね、陽平さん?」
「え、えっ? は、はいそうです!」
いきなり話を振られて少し慌てる俺。
「ふっ。元勇者。後藤陽平。初めて見る顔だな──」
そしてカイテルが俺に向かって歩みよる。品定めをするような目つきでしばしの間俺を見つめると──。
「……ふむ、あの魔王を倒した勇者にしては、少し軟弱な顔つきだな──。まあ、だからこそ追放されてしまったのだろう、さすが「元勇者」と呼ばれるだけの事はあるな」
明らかに小馬鹿にされているのが伝わってくる。
だが熱くなったら負けだ、平常心平常心──。
「エマ、この程度の男のために私が不愉快な思いをするなど、あっていいと思うか?」
「それは……」
にやついた笑みを浮かべながら俺を見下すカイテル。
「確かにこいつは一度は世界を救った。だが今はどうだ? 追放処分を出され完全にこの地方では終わった人、ついたあだ名は「元勇者」。すでに終わった人物だと俺は思っているが? 貴様はどうだ?」
「確かに彼は、地位や名誉という視点で考えれば終わった人物かもしれません。しかし終わったらもう一度成り上がればいいんです。それだけの素質が、彼にはあると考えます。目先のことしか頭にないあなたとは考えが違うという事です」
パトラさんも冷静ながらも棘のある言葉で返す。けどそれはちょっと買いかぶり過ぎなんじゃないかな……。
「まあ、かつての勇者だけあって貴族や冒険者にも顔は効く。中にはこいつを慕って奴だっているだろう。だが今は一人の冒険者で政界には何の影響力もない。あなたのような名門ミルブレット家の血筋にふさわしくないと私は考えているが?」
「それは今は分からなくても、後になれば、分かるでしょう」
う~~ん、空気が悪いなあ。パトラさん、正論をストレートに言いすぎて雰囲気を悪くしてしまうことがあるから仕方ないんだけれど──。
とりあえず空気をよくしよう。とりあえず俺はカイテルさんに一つの質問をした。
「そう言えばカイテル様はなにをなさっているのですか。差し支えない範囲で教えていただければ幸いです」
「かつては立法や財務など様々な政務に関わっていた。現在は軍隊に所属している」
軍隊か、やはり配下たちを指揮する立場なのか?
「まあ、軍隊にいるんですか? どういった役職をされているんですか?」
貴族らしく冷静で落ち着いた態度を崩さず彼は質問に答える。
「いろいろ行ったが現在は軍では参謀をしている。うちは隣国との戦いが多い。よってこちらを有利する戦術の組み立てや作戦の立案などを行うことが多いな」
まあ、俺の世界でもヨーロッパなどは軍の上層部は貴族出身者だったりしていて珍しい事ではない。
下手に体制側で無い奴を軍のトップにすると、そいつが言う事を聞かなくなり勝手に侵攻作戦を取ったりしかねない。どこかの国のように──。
「そうですか、それは身分に見合った仕事がと思います」
「そうだろう、どこかの「元勇者」のようにいつまでも冒険者の一人でいるのとは身分が違うのだよ身分が!」
「そ、そうなんですか、すばらしい仕事ですね」
参謀ね──、しかしさっきから言い方がハナにつくやつだな……。そういうところが貴族の跡取り息子って感じだな。
「なるほど、冒険者としてではなく、人の上に立つ立場の者として1流という事ですね?」
「おいおい、バカなことをいってもらっては困る。俺は冒険者としても腕前は確かなものだぞ。なあエマ」
カイテルがエマに話しを振るとエマは慌てて言葉を返す。
「そうっチュ。カイテルさんはこの地方で1番の力を持つ冒険者としても有名っチュ」
「まあ、いつかお手合わせ願いたいものですな」
するとカイテルはスッと席を立ち俺を指差す。
「これでわかっただろう、こいつと俺の身分の差ってものを──。まあ、近いうちにわからせてやるさ」
そしてカイテルは手を振ってこの場を去っていく。
パトラさんが軽く頭を下げ、作り笑いで言葉を返す。
「そう言えばエマ。このお方は誰ですか?」
パトラさんが素っ気ない口調で話しかけると──。
「ああ、そうでしたねすいません。では名乗らせてもらう。俺の名はラト=ランド・カイテル。パトラ様の将来の嫁とする予定の貴族の長男だ」
「……!?」
その人物が自己紹介をした瞬間、俺とパトラさんに衝撃が走る。
「彼が、この地方の覇者──」
その言葉を聞いていたのか周囲の客達も急に視線をこっちに向け始め、ざわつき始める。
「マジかよ、ラト=ランド家ってこの国一番の権力者だろ?」
「何でこんなところにいるんだよ!!」
この地方では一番の権力者の名前。
そして王国の中の3大貴族の一つ。
伝統、権力基盤、私有財産においてはこの国でも群を抜いている存在だ。
エマの言葉からして彼がパトラさんのお見合い相手なのだろう。
「しかしまさか元勇者さんが交際相手とは。流石はパトラ様。美人な女性にはお似合いかもしれませんなあ」
「私の嫁、まだ確定したわけではありません。早計です、失礼ですよ」
パトラさんが、作り笑いを見せて彼を咎めるがカイテルは、にっこりとした笑みを見せ言葉を返す。
「ははは、確かにそうかもしれません。しかしいずれはそうなるんですから、ちょっとタイミングが早いだけですよ」
「私を結婚相手として強く希望している事。それ自体は光栄です。しかし私には今こうして交際している男性がいます。申し訳ありませんがあなたの希望をかなえてあげることは出来ません。そうですよね、陽平さん?」
「え、えっ? は、はいそうです!」
いきなり話を振られて少し慌てる俺。
「ふっ。元勇者。後藤陽平。初めて見る顔だな──」
そしてカイテルが俺に向かって歩みよる。品定めをするような目つきでしばしの間俺を見つめると──。
「……ふむ、あの魔王を倒した勇者にしては、少し軟弱な顔つきだな──。まあ、だからこそ追放されてしまったのだろう、さすが「元勇者」と呼ばれるだけの事はあるな」
明らかに小馬鹿にされているのが伝わってくる。
だが熱くなったら負けだ、平常心平常心──。
「エマ、この程度の男のために私が不愉快な思いをするなど、あっていいと思うか?」
「それは……」
にやついた笑みを浮かべながら俺を見下すカイテル。
「確かにこいつは一度は世界を救った。だが今はどうだ? 追放処分を出され完全にこの地方では終わった人、ついたあだ名は「元勇者」。すでに終わった人物だと俺は思っているが? 貴様はどうだ?」
「確かに彼は、地位や名誉という視点で考えれば終わった人物かもしれません。しかし終わったらもう一度成り上がればいいんです。それだけの素質が、彼にはあると考えます。目先のことしか頭にないあなたとは考えが違うという事です」
パトラさんも冷静ながらも棘のある言葉で返す。けどそれはちょっと買いかぶり過ぎなんじゃないかな……。
「まあ、かつての勇者だけあって貴族や冒険者にも顔は効く。中にはこいつを慕って奴だっているだろう。だが今は一人の冒険者で政界には何の影響力もない。あなたのような名門ミルブレット家の血筋にふさわしくないと私は考えているが?」
「それは今は分からなくても、後になれば、分かるでしょう」
う~~ん、空気が悪いなあ。パトラさん、正論をストレートに言いすぎて雰囲気を悪くしてしまうことがあるから仕方ないんだけれど──。
とりあえず空気をよくしよう。とりあえず俺はカイテルさんに一つの質問をした。
「そう言えばカイテル様はなにをなさっているのですか。差し支えない範囲で教えていただければ幸いです」
「かつては立法や財務など様々な政務に関わっていた。現在は軍隊に所属している」
軍隊か、やはり配下たちを指揮する立場なのか?
「まあ、軍隊にいるんですか? どういった役職をされているんですか?」
貴族らしく冷静で落ち着いた態度を崩さず彼は質問に答える。
「いろいろ行ったが現在は軍では参謀をしている。うちは隣国との戦いが多い。よってこちらを有利する戦術の組み立てや作戦の立案などを行うことが多いな」
まあ、俺の世界でもヨーロッパなどは軍の上層部は貴族出身者だったりしていて珍しい事ではない。
下手に体制側で無い奴を軍のトップにすると、そいつが言う事を聞かなくなり勝手に侵攻作戦を取ったりしかねない。どこかの国のように──。
「そうですか、それは身分に見合った仕事がと思います」
「そうだろう、どこかの「元勇者」のようにいつまでも冒険者の一人でいるのとは身分が違うのだよ身分が!」
「そ、そうなんですか、すばらしい仕事ですね」
参謀ね──、しかしさっきから言い方がハナにつくやつだな……。そういうところが貴族の跡取り息子って感じだな。
「なるほど、冒険者としてではなく、人の上に立つ立場の者として1流という事ですね?」
「おいおい、バカなことをいってもらっては困る。俺は冒険者としても腕前は確かなものだぞ。なあエマ」
カイテルがエマに話しを振るとエマは慌てて言葉を返す。
「そうっチュ。カイテルさんはこの地方で1番の力を持つ冒険者としても有名っチュ」
「まあ、いつかお手合わせ願いたいものですな」
するとカイテルはスッと席を立ち俺を指差す。
「これでわかっただろう、こいつと俺の身分の差ってものを──。まあ、近いうちにわからせてやるさ」
そしてカイテルは手を振ってこの場を去っていく。
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