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パトラ編
第53話 元勇者 見知らぬ子どもと対決へ
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「な、何かな?」
そして子供はぐっと俺に顔を近づけ──。
「僕と一戦交えてほしいんだ!!」
えっ、マジかよ。予想もしなかった。こんな子供と戦うのか?
「一戦?」
「うん」
まさかのお願いに俺は困惑、でも子供と戦うなんて──。
まあ、ダメとは言わないけれど今はデート中だし、とりあえず……。
「ごめん、今はちょっと用事があるんだ、後でいいかな?」
「え~~っ」
「理由はある。こういった人が多いところであまり戦いたくない。目立つし、周りに被害が出るなんてイヤだし。せめて人が少ない郊外の森なんかで戦いたい。だからちょっと待ってほしいんだ」
「うぅ~~、嫌だ。僕は今戦いんだーー」
そんなことお構いなしに子供は顔を膨らませ駄々をこねる、仕方ない。
「ルシフェル。た、助けてくれ。この子に一言言ってくれ」
俺はルシフェルに助け船を求める、彼女からも何かいってほしいと。
するとルシフェルはからかうような目つきで俺をじ~~っと見つめる。
「もう、しょうがないわね。受けてあげなさい」
だめだ、どうしよう……。
「ねえねえ、元勇者さ~~ん、僕と1回やろうよやろうよやろうよ~~」
子供はまとわりつくようにぎゅっと俺に抱きつく。そしてゆらゆらと俺の体を揺らしながらべたべたと俺に体をさわる。
ルシフェルもどうしようもないという感じで苦笑いでやれやれと言った感じ。仕方ない──。
「わかったよ、1回だけだぞ、ここで1戦、周りに危害を加えない。それだけやったら、俺が勝ったらベタベタしたり、まとわりついたりするのは無し。わかった?」
俺がそう言い放つと子供の表情にほわぁ~~っと笑みがこぼれ始める。
「じゃあ僕が勝ったらベタベタしたり、四六時中つきまとったり していいんだね、やった~~、今すぐやろう!! うっれし~~」
えっ? ちょっと待ってくれ、そんなつもりで言ったわけじゃ──。ルシフェルもなんかいってくれ!!
しかし……。
「プッ──、頑張ってね、「元」勇者さん」
ニヤリとからかうような笑み──。
全く庇う気なし、まあ仕方ない……。勝てばいいんだ、それだけのことだ。
公園の広場その周りを住民たちが取り囲んでいる中で俺と例の子供が対峙する。
俺の姿を見ながら周りの人達がひそひそ会話をし始めた。
「元勇者さんが戦うんだってよ」
「戦うって、あの小さな子とかい?」
「そうだニャ」
まあ、こういうのは慣れてる。勇者だった時から決闘を申しこまれることはたまにあった。
気にせず自分の力を出して戦う。それだけだ。
そして俺は子供に相対し話しかける
「そう言えば名前は?」
「僕? そう言えば名前行ってないね。クレア、よろしくね」
そして約束の確認、指を差してさっきの言葉の確認をする。俺が勝ったらもう付きまとわない事。
「大丈夫大丈夫。約束は守るよ~~」
そんな事をしている間に周囲が一気ににぎやかになる。
「あれ、元勇者じゃん。何やってるんだよ!!」
「それにあの小さな子供。何! 誘拐?」
「子供は、見たことないな。何か不思議な力でも持ってんのかよ──」
周囲を取り巻く人はいつの間にか増え、それなりの人数になる。そしてその人たちが俺とクレアの周囲を取り囲む。
「じゃあ、確認するぞ。この戦い、負けたら退散するんだぞ。いいな」
「いいよ~~。勝ったらおとなしく「勇者」さんから離れてあげる。でも楽しみだなあー、まさか本当に戦えるだなんて」
クレアのその様子に、特におかしい様子はない。新しいおもちゃを買ってもらったかのごとく好奇心にあふれ、無邪気に楽しそうにしている。
その姿に演技が入っているという様子もない。ステータスはわからないが、あったとしても体は子供、基礎的な体力がまだ未熟。強そうなオーラもないし普通に戦ったら勝てる相手だ。
「わくわくするなあ~~勇者さんと戦えるなんて。勝ったら僕、ヒーローだろうなあー」
けどそんな甘い考えで挑むつもりはない。
まあ、俺の名を知って勝負を挑んでくる奴だ。何か隠し玉でもあるんだろう。
どんな能力を秘めているんだ?
「じゃあ、いくよ……」
「うん、かかってきてよ。試合開始だ!!」
とりあえず突っ込む俺、手加減はしない。一気に勝負をつける。
タッ──。
するとクレアは彼の身長くらいある大きな斧を召喚。
そして大きく1振りすると竜巻のような風が現れる。
俺は向かって来た竜巻に一太刀の攻撃を与える。一瞬で竜巻は消滅。その瞬間、クレアはそれを見て再び後ろに後退。
(やはり、こいつ俺の戦いを知り尽くしているな──)
俺は攻撃数値140になっている通り、近距離での戦いが得意だ。だから俺の事を知っている冒険者が意図的に距離を取り続け、遠距離戦を挑んでくるというのは珍しい話ではない。
(でもな、そんなのこっちだって対策済みだ)
遠距離からの戦いだって、それなりにこなしてきた。当然、どうすればいいかということだって考えてある。
(真の強者は、どれだけ対策されても勝ち続ける。行くぞ!!)
膝を落とし、体を前傾させる。そして──。
タッ──!
両足に魔力を込め一気にトップスピードになる。そして一気にクレアとの距離を詰める。
するとクレアはニヤリと笑みを浮かべた後。
(よし、これを待っていたよ)
そして子供はぐっと俺に顔を近づけ──。
「僕と一戦交えてほしいんだ!!」
えっ、マジかよ。予想もしなかった。こんな子供と戦うのか?
「一戦?」
「うん」
まさかのお願いに俺は困惑、でも子供と戦うなんて──。
まあ、ダメとは言わないけれど今はデート中だし、とりあえず……。
「ごめん、今はちょっと用事があるんだ、後でいいかな?」
「え~~っ」
「理由はある。こういった人が多いところであまり戦いたくない。目立つし、周りに被害が出るなんてイヤだし。せめて人が少ない郊外の森なんかで戦いたい。だからちょっと待ってほしいんだ」
「うぅ~~、嫌だ。僕は今戦いんだーー」
そんなことお構いなしに子供は顔を膨らませ駄々をこねる、仕方ない。
「ルシフェル。た、助けてくれ。この子に一言言ってくれ」
俺はルシフェルに助け船を求める、彼女からも何かいってほしいと。
するとルシフェルはからかうような目つきで俺をじ~~っと見つめる。
「もう、しょうがないわね。受けてあげなさい」
だめだ、どうしよう……。
「ねえねえ、元勇者さ~~ん、僕と1回やろうよやろうよやろうよ~~」
子供はまとわりつくようにぎゅっと俺に抱きつく。そしてゆらゆらと俺の体を揺らしながらべたべたと俺に体をさわる。
ルシフェルもどうしようもないという感じで苦笑いでやれやれと言った感じ。仕方ない──。
「わかったよ、1回だけだぞ、ここで1戦、周りに危害を加えない。それだけやったら、俺が勝ったらベタベタしたり、まとわりついたりするのは無し。わかった?」
俺がそう言い放つと子供の表情にほわぁ~~っと笑みがこぼれ始める。
「じゃあ僕が勝ったらベタベタしたり、四六時中つきまとったり していいんだね、やった~~、今すぐやろう!! うっれし~~」
えっ? ちょっと待ってくれ、そんなつもりで言ったわけじゃ──。ルシフェルもなんかいってくれ!!
しかし……。
「プッ──、頑張ってね、「元」勇者さん」
ニヤリとからかうような笑み──。
全く庇う気なし、まあ仕方ない……。勝てばいいんだ、それだけのことだ。
公園の広場その周りを住民たちが取り囲んでいる中で俺と例の子供が対峙する。
俺の姿を見ながら周りの人達がひそひそ会話をし始めた。
「元勇者さんが戦うんだってよ」
「戦うって、あの小さな子とかい?」
「そうだニャ」
まあ、こういうのは慣れてる。勇者だった時から決闘を申しこまれることはたまにあった。
気にせず自分の力を出して戦う。それだけだ。
そして俺は子供に相対し話しかける
「そう言えば名前は?」
「僕? そう言えば名前行ってないね。クレア、よろしくね」
そして約束の確認、指を差してさっきの言葉の確認をする。俺が勝ったらもう付きまとわない事。
「大丈夫大丈夫。約束は守るよ~~」
そんな事をしている間に周囲が一気ににぎやかになる。
「あれ、元勇者じゃん。何やってるんだよ!!」
「それにあの小さな子供。何! 誘拐?」
「子供は、見たことないな。何か不思議な力でも持ってんのかよ──」
周囲を取り巻く人はいつの間にか増え、それなりの人数になる。そしてその人たちが俺とクレアの周囲を取り囲む。
「じゃあ、確認するぞ。この戦い、負けたら退散するんだぞ。いいな」
「いいよ~~。勝ったらおとなしく「勇者」さんから離れてあげる。でも楽しみだなあー、まさか本当に戦えるだなんて」
クレアのその様子に、特におかしい様子はない。新しいおもちゃを買ってもらったかのごとく好奇心にあふれ、無邪気に楽しそうにしている。
その姿に演技が入っているという様子もない。ステータスはわからないが、あったとしても体は子供、基礎的な体力がまだ未熟。強そうなオーラもないし普通に戦ったら勝てる相手だ。
「わくわくするなあ~~勇者さんと戦えるなんて。勝ったら僕、ヒーローだろうなあー」
けどそんな甘い考えで挑むつもりはない。
まあ、俺の名を知って勝負を挑んでくる奴だ。何か隠し玉でもあるんだろう。
どんな能力を秘めているんだ?
「じゃあ、いくよ……」
「うん、かかってきてよ。試合開始だ!!」
とりあえず突っ込む俺、手加減はしない。一気に勝負をつける。
タッ──。
するとクレアは彼の身長くらいある大きな斧を召喚。
そして大きく1振りすると竜巻のような風が現れる。
俺は向かって来た竜巻に一太刀の攻撃を与える。一瞬で竜巻は消滅。その瞬間、クレアはそれを見て再び後ろに後退。
(やはり、こいつ俺の戦いを知り尽くしているな──)
俺は攻撃数値140になっている通り、近距離での戦いが得意だ。だから俺の事を知っている冒険者が意図的に距離を取り続け、遠距離戦を挑んでくるというのは珍しい話ではない。
(でもな、そんなのこっちだって対策済みだ)
遠距離からの戦いだって、それなりにこなしてきた。当然、どうすればいいかということだって考えてある。
(真の強者は、どれだけ対策されても勝ち続ける。行くぞ!!)
膝を落とし、体を前傾させる。そして──。
タッ──!
両足に魔力を込め一気にトップスピードになる。そして一気にクレアとの距離を詰める。
するとクレアはニヤリと笑みを浮かべた後。
(よし、これを待っていたよ)
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